第913話「間違った解釈……見直すべきは試験内容?」
こんばんわー!\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/ふおぉ!
更新遅くなりました……
食事し終えて横になったら寝てた件_φ( ̄皿 ̄ )もぐもぐ……牛になるー
今回のお話は薬師の試験話の続きー!
シャボンは小ちゃな目を見開き、驚いている……
「え!?………嘘…………もう傷薬が出来たんですか?」
「はい?え……っと……取り敢えずは10本出来ましたけど?少し勢い良く混ぜ過ぎたので+3傷薬ですけど……もっと丁寧に攪拌すれば+4はできたかな?」
「じ………10本?………同時製薬10本?って……それも修正値付きを?」
そう言った彼女は、横にあった薬草棚に目をやって更に驚く。
「……あ……あれ?薬草が……全部もう無い!?さっき置かれた薬草を一人でもう?」
「ギルマスにも薬液を期限内に沢山作ってと言われたので……って……あれ?どうやら瓶も見合った数がそもそも無いみたいですね。さっきの係員さんにまた伝えないと……」
僕はシャボンと話しつつ、同時進行で自分の役目を果たした。
置かれた薬草を取り敢えず全部粉砕し、テスト内容で言われた様に薬液を同時製薬で作ったのだ。
どうやら薬用小瓶も薬草と同じ様で、手違いから必要数が置かれていない様だった。
僕は監督中の試験官に、またもや在庫を増やす依頼を出す。
「はいはい……何でしょう?……あら……また貴方!?今度は何かしら?」
「薬液が出来たんですが……実は入れる瓶が足らなくて。今作った薬液は全部で390本分で、最低その分は瓶が必要なんですよ……」
「ちょっと二人とも……試験中よ?何時迄も何を話しているの?って……貴方……何よそれ!?ヒロさん……貴方の後ろに浮いている液体は一体何!?」
「え!?……僕は乳鉢が使えないと説明しましたし……銀級目指すなら同時製薬で薬液を作るんですよね?金級のステップ説明が無いので……取り敢えず銀級メインで作ったんですけど?」
「はぁ?あ……貴方……同時製薬の意味が違うわよ!!2倍量っていう意味であって、言い直せば2本分よ!!」
「ええ!?た……たった2本?……同時製薬って言うから、同時に2セット作業か……別の薬剤を精製する技能かと思いました」
「別の薬剤を同時製造?それは金級ランクで必要な技術よ!!って今はそれどころじゃ無いわね……サルタン早くギルマスに伝えて!私は瓶の在庫を見てくるわ……」
「トピー嘘でしょう……この人……勘違いで同時に390本分も薬液精製したの?……ど……どうしましょう?そんな瓶の数を試験場に用意してないわ!!……ちょ……ちょっと貴方ここで待っててね!トピー!ちょっと待って下の倉庫よ!トピー!!……」
僕はシャボンと話したあと、試験官に空き瓶を用意して貰う様にお願いした……
しかし在庫補充の係員は2名だった様で、もう一人が途中から会話に混ざってきて二人して大騒ぎになった……
何故かというと、そんな数の瓶が試験用に用意されていないからだった。
しかし運の良い事に、それを相談する相手は同室に居る……問題はない筈だ。
そう思った僕は、係員のサルタンが向かう先を目で追う……当然その先はギルマスのアマナだ。
「アマナ!ギルドマスターアマナ……大変です!大量の薬液が……約400本の空き瓶なんて……試験用の用意がありません!今すぐ瓶が必要なのですが……店売り在庫を持ってきても平気でしょうか?大凡……在庫全部になります……」
「え?傷薬約400本分の薬液?貴女……変な薬を調合した?何を言って……って……サルタン……あれは何!?」
「だから!!アレが問題なんです!!あのヒロって少年が大量精製をしたんですってば!それはもう大量で……」
アマナは僕をみて口をぱくぱくさせる。
多分薬液のことを指し示しているのだろうが、そもそも時間内に出来る限り沢山作れと言ったのは彼女だ。
「あ……貴方何をしているの?ヒロさん……それは何?何故……浮いてって!ちょっと待って……それは……どう見ても修正値+3の薬液よね?……そっちの大容量は……+1修正?そもそもなんで宙に浮いているの?」
「って言うか……私が棚に薬草を置いたのはついさっきです!そもそもあんな量を、彼はどうやって作ってるんでしょう?」
僕は薬液の出来栄え確認をして貰う為に、監督者のそばに魔力容器を寄せる。
だが彼女達は誰一人見ようとせずに、全員が怖がって逃げていく。
しかしアルカンナは、それを見て笑いが堪えられないのか、逆に試験中にも関わらずアマナの側へズカズカ近寄って来る。
「ウヒャヒャヒャヒャ!!これは愉快じゃ!まさかここまでとは……同時製薬390本じゃと?おい!アマナや……同時製薬390本は薬師でいうと何級じゃ?」
「お母さん……この事を知ってたのね!?いったい彼は何者なの?」
「彼か?彼は冒険者のヒロじゃって、自分でも言っておったじゃろう?何を言っておる……」
「……っていうか……それどころじゃ無いわ……職員数名で今すぐ商工ギルドの傷薬用の小瓶を残さず買って来て!!いい?あれを1滴たりとも無駄にしないで!」
そう言ったアマナは『あれだけあれば傷薬だけは暫く枯渇せずに済むわ!何が何でも瓶を揃えなきゃ……』と目の色を変えている。
もはやその様からして、アマナはギルマスでも試験官でも無い……商売人だ……
ひとまず部屋にある小瓶に+3傷薬10本を詰めてアマナに渡し、30本の+1傷薬を必死に入れる。
すぐに薬草全部を粉砕するんじゃなかった……と反省するも既に遅い……
瓶が無い僕はやることが無くなってしまい、仕方なくシャボンの隣に座り粉砕方法を事細かく説明する。
余計な熱を与えない為に、細かく粉砕しておく重要性を伝え、すり潰す過程でも同様に摩擦を抑えるべきだと教える。
タバサ仕込みの薬液製薬術なので、製法に間違いはない。
「あ!ゆっくりゴリゴリしていたら……少しずつ液体に……不思議……とても変な抽出方法です……」
「そこへ更に水を少量加えるんだけど、水へ魔力添加できるならそれを使うのが一番良いです。成分を均等に混ぜるのに、魔力水が一番馴染みやすいんです……」
僕はウォーターの魔法で水を出すと、そこに魔力を含ませてみせる。
するとその水は、少し煌めく様に光を放つ……
「え?そんな事……普通は出来ませんよね?魔力添加してる薬師さんを見た事ないですよ?それに……そんな凄い事が既に出来るなら、そもそも薬師登録だけあればいい様な気がするんですけど?今更上位等級がどうして必要なんですか?」
「はい?ああ……実は薬師スキルは既にありますけど、その……薬師登録がまだなんです。最低でも素材が買えないと困るんですよね?それと魔力容器なら、様々な方法のスキル取得で得られるらしいですよ?前に知り合いが取得してたんで……」
「ああ!成程!!素材ですか……成程……あれ?でも……それなら何故またそんな量の生産を?薬液2本作れば薬師10級ですよね?」
「え?そもそもこのテストが、定刻である3刻経つまで作る試験内容ですよね?」
「およ?あ……あれ?って事は……ヒロさんは薬液をもっと作るべきなの?……あれ?違うって顔を皆がしてますけど……うにゃー!?私の混乱は思った以上に酷いです……」
「いやいや……そうなるのも無理無いです!昨日まで僕も勘違いしてたんです。何か薬が作れれば薬師だと勘違いしてたんです。そもそも薬師免許がなければ、街で素材も買えないとか……今の今まで思いませんでしたし!」
「はい!?いやそうじゃ無くて……多分ですけど……根本的に私の混乱とは意味が違いますよね?」
何やら最後は話が食い違っているとは思ったが、どうやら此処にいる全員は薬師のスキルを満足に使えてない様子だ。
薬草の無駄遣いに気がついてない。
すり潰して得た薬液を薄める事で作れる傷薬は、薬師のスキル効果を受けるともっと沢山作れる様になる。
満足に修行をしていた場合、3刻ともなれば意味がわからない薬液の量を作る羽目になるのだ。
しかし今技術を教えているシャボンは、かなりのポテンシャルを秘めている様で飲み込みは早い。
既に要領を得たのか、一度の作業で3本分の生産が出来る様だ。
問題は修正値付きを作れる技量へ到達するかどうかだ……




