第804話「魔改造とズレていく常識」
こんにちわー(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
お昼更新には間に合いませんでした_(:3 」∠)_ごめんなさい……
ディーナは割れた木戸の隙間から周囲を見回す……そして挙動不審な行動をとりながら戻ってきた。
「ヒロさんは、ぶ……不用心すぎます!あの食材はあれ一匹で最低金貨30枚はします!!それも……1匹は大きい個体なので店売りでも50枚は硬いですよ?………だから明日私が店で売ってきます!そして夜が明けるまで、アレは私が見張ります。いいですね!?」
ディーナは寝ずの番をすると言い始めるので、僕は慌てて食べる為だと言う。
「あ………いや………食べて見たくて狩って来たんで……売らないで貰えると助かるんですけど?………」
「た…………た……………食べる!?あの希少食材を?自分で?……………一匹で金貨30枚枚から50枚ですよ?…………正気ですか?アレ見て下さい……二匹ですよ?それだけの金貨があれば、野菜がどれだけ買えるか……娘のメルルが成人するまで食べられる分の野菜が買えてしまいますよ!!」
どれだけディーナは娘に野菜を食べさせる気なのか……
この世界での成人は15歳だが、それまで野菜のみのメルルが少し不憫になる。
「いや……流石に今は宿泊の身なので、メルルちゃんとディーナさん含めて皆で食べますよ?それに、お金なら今日手に入れましたから……ほら……」
僕は小さい方の金貨袋を出す……宝箱から出た250枚の金貨だ。
「ぶ…………金貨………金貨袋!?………久しく見てません。その袋!!………」
そう言って今度は、ケンケンと片脚で飛び跳ねながら戻ってくる。
「お兄ちゃん……お母さんが怖いよぉ〜………あんな動き……今まで一度も見たことないよぉ…………」
メルルが泣き出したことで、ディーナは我に返る………
「ああ!?…………メルル!メルル……ごめんね!お母さんは余りにもビックリしたから……ちょっとおかしくなっちゃったわ!……」
そう言ってメルルを抱き寄せるも、母ディーナの目線は金貨袋を見つめている……
「ディーナさん……と言うわけなので……アレは食べるために血抜き中です。ディーナさんが売るならまた狩って来ますから……」
「ま………また?………アレを………また?…………狩る!?」
「今はそれより先に食事を終わらせましょう………メルルちゃんビックリし過ぎてお肉が半分しか減ってませんし、ディーナさんはお肉をまだ3口しか食べてませんよ?」
そう言われてディーナは自分のお皿を見て、物凄く反省をする………
「すいません………お客様の持て成しなのに……食べずにバタバタしてしまい………」
僕達はそれから、一度落ち着いて食事をする事にした……。
◆◇
ちなみにこの家では面白い決まり事があった。
食事を終えた後、食器を洗うのも全て外で行い乾燥も外でさせるのだ。
なんでも水を使うと、部屋に湿気が篭るからだというのだ。
よく見ると……土間の作りが悪く水捌けが良くない様だ。
外壁含めて一度梃入れをしないと暮らしにくい家だが、スラムである以上は仕方がないだろう。
天井と壁があるだけマシだと、思うしかないのかも知れない。
僕は食器を外に並べるのを手伝いながら、ノーミーを呼ぶ。
ノーミーは準精霊だが、既に他のノームやノーミーと違って肉体が精霊化し始めている。
だから何処へでも呼べる、僕と契約した優秀な土っ子だ。
「ねぇ……ノーミー。土魔法か石系の魔法で、この家の外壁を上手く包めないかな?もしくは表面を厚くする的なこと?実はさ……隙間風が寒いんだよね……。壊れた壁の外側に厚さ5センチもあれば……今とはかなり違うと思うけど……」
『それなら『ウォール』の魔法で厚さを増せばいいんじゃないかしら?かなり簡単な魔法だし、今のヒロでも使えるわよ?既に石壁だから、厚さを増すだけならかなり作業は楽よ?それに壊れた箇所も元通りにできるし』
「成程……じゃあ大地と精霊に感謝して、イメージは数センチ厚くなるイメージで『ウォール』っていえばいいのかな?」
やっちまった……
既に口で言いながら心で念じた結果、食器を壁際に並べていたメルルがビックリして声を上げる……
「お………おかぁぁぁさぁぁぁん…………」
「ど………どうしたの!?メルル…………!?」
松葉杖を必死に使い、家から飛び出てくるディーナ……
「お家が変なの!お家がお家じゃなくなっちゃったの………お兄ちゃんが『ウォール』とか言ったら、壊れていたわたしのお家がなくなっちゃったの……別のお家になった!おかぁさん……私たちのお家はどこ?」
べそべそ泣きながら自分の家を探すメルルだったが、ディーナはその場にへたり込んでいる。
「何をしたら……家の壁が元通りになるんですか…………。ああ………ウォールは本来そんな魔法じゃないです…………。フルーツラビットと言い私にはもう意味が………意味がわからない………。あなた……。あなた……本当に早くダンジョンから帰って来て………」
僕は一先ずディーナを放置して、自分の家を探し歩くメルルを呼んで魔法のことを話す。
「これはね?土魔法のウォールって言って、壁を作る魔法なの……メルルの家は所々が壊れてたでしょう?穴が空いて寒いから直そうと思って、精霊さんにお願いしたら直してくれたんだよ?」
僕がそう言うとメルルは状況を理解して喜び、ディーナは泡を吹いてぶっ倒れた……
ディーナはどうやら、僕の肩に乗る半透明なノーミーを見た様だ……
修行中の身だけに、どうやら気を抜くと姿が出てしまう様だ。
「困った人間ね?私を見て倒れるとか……せっかく家を直すの手伝ったのに……」
倒れたディーナを見ながら不貞腐れ、そう文句を言うノーミーだった。
僕はディーナをお姫様抱っこで抱えて、土間を通り部屋の方へ歩く……
「アレ?ねぇ……お兄ちゃん……此処こんなじゃなかったよね?……」
そう言われて僕はメルルの方を見ると、壊れた竈門は新しく新調され、流し場も真新しくなっていた。
そして水瓶と衣類の洗い場が増設されていて、全く元の土間の面影は無くなっていた……。
それもその作りは、小学生の頃に学校の歴史の授業で向かった『国立博物館』の時代別住居の寄せ集めの様だった。
『なかなかいいでしょう?前に精霊力を移動した時、ヒロの記憶が流れ込んできたの!だからその記憶を基に再現して見たわ!国立博物館?って言うんでしょう?これ……』
それは国が作った建物の名前だ……と言いたかったが、今はそれどころではない。
せっかく気がついたディーナは、新しい釜戸の上に座っているノーミーを見て、また気を失ったからだ。
ノーミーと話していたら、真後ろで『ゴチン』と音がして、ディーナが前のめりで額を部屋に床に頑張って押し当てていた……
どんな冒険者でも頭突きでは大地を壊せない……と教えた方がいいかもしれない……
ちなみにメルルは、倒れた母親をそっちのけにして、大きくなった竈門の中を覗き込むのに必死だった。
◆◇
『チュン………チュンチュン………』
「はぁぁ………よく寝た……メルルおはよう!ふああぁぁぁ!はぁ………メルル聞いて!お母さん変な夢を見たわ。家がおかしくなってねぇ、ぼこぼこ穴の壁が直っちゃってるの!それでね、土間がね…………ああ!?あああ!!!…………土間ガァァァァ!!」
「お母さんおはよう!朝から大きな声を出すと、周りの人が怒るよ?前にお母さんが私に言ってたでしょう?朝ご飯は、お母さんが起きないからお兄ちゃんが作ってくれたよ?」
そう言ってメルルは卓に向き直って、僕と朝ごはんを食べる。
因みに朝ご飯は、エルフのお米を炊いたご飯と、エルフ味噌を使った白菜の様な野菜の味噌汁。
オカズは王国で買った卵を使った目玉焼きと、薄くスライスしたオーク肉にコボルドジンジャーを使った安定の生姜焼きだ。
ディーナは顔を洗い、いそいそと朝食に混ざる。
「すいません!!なんか……私……昨日の夜の記憶が途中からなくて……ビックリしてからの記憶が………それであの……なぜ土間が?って言うか……ここは何処ですか?まさか……本当に私達の家?」
「ひとまず詳しくはご飯食べてからで……僕もギルドに行く前に、ご飯を食べたいので……」
僕はそう言ってから、ディーナの分のご飯と味噌汁そしておかずを机に並べた……




