第760話「念願の精霊契約」
こんばんわー_(:3 」∠)_更新です!
今回のお話は
『エルフ族念願の精霊契約』のお話
「エルフレア!ちょっとコチラへいらして頂けないかしら?……」
「はい!エルフレア只今参ります!!」
イフリーテスはホムンクルスの身体を使い話すのが相当楽しいのか、わざわざエルフレアを呼びつける。
エルフレアとすれば既に終わっているイフリーテスとの契約だが、ホムンクルスの身体で再契約をしているのかと思ったが……どうやら違う様だ。
「来たれ!境界の扉。炎の眷属の契約に伴いその扉をひらけ!」
イフリーテスは両手で巨大な炎を操り、焔のゲートを作り出すと沢山の炎の下級精霊が勢い良く飛び出して来た。
火の下級精霊達はエルフレアの周りを飛び回り始めると、そのうちの1人がエルフレアに懐き出す。
どうやらエルフレアは、スゥより一足先に契約を終えた様だ。
エルフレアの部下達も機嫌の良いイフリーテスと話して、ちゃっかりと火の精霊と契約をしていた。
それを見たスゥは会議をそっちのけにしてエルフレアの側に走ってくる。
ユイだけ精霊契約がないのかと思っていたら、会議中に森精霊が頭の上に乗っているのが見えた。
2人に気兼ねして、精霊契約終了を伝えていなかったのかもしれない……
しかしスゥはイフリーテスを、モアはフロスティを伴い何故か僕のところに来る……
スゥもモアも何故かニコニコしているので嫌な予感しかしない……
「あのね……ヒロさん……。実はその……」
「ちゃっちゃと言えよ!どうせこの男は精霊力が有り余ってパンク状態だから、半分位貰っても困りゃしねぇよ!寧ろ助かるだろうしな!」
多分スゥも同じ事を言おうとしていたのだろう、非常に言い辛そうにしていた。
しかしフロスティは、説明も中途半端にちょいちょいっと手を振って何か魔法を唱え、僕から精霊力をごっそり抜き取る。
その瞬間、身体中から酷い脱力感を感じる……ミミの時とは大違いだった。
「おっと契約者……悪いな!コイツら精霊契約甘く見ててよ……全く精霊力ねぇのに契約してぇって言うんだよ。仕方ないからちょっとばかりくれてやってくれ!」
「ああ!なんかすいません………」
「ちょっと!フロスティ!!言い方ってものが………」
スゥは只々謝り、モアは自分にその準備が出来ていなかったことに責任を感じたのか……フロスティに話を振る。
「大丈夫だって!そもそも精霊力使ったら困るのは契約者の方だからな?……だよな?精霊核の暴走が嫌なんだろう?」
「「せ……精霊核の暴走!?」」
精霊核の暴走と聞いた途端僕から数歩離れた2人は、ウッカリ時自分が取った行動に更に凹み始める。
どうやらフロスティも精霊種だけあって、水っ子達の様にお見通しの様だ。
「精霊力の事は良いですよ!それより会議に行かないとエクシアさんが怒ってますよ?あの顔見てください……」
ガッツリ睨まれている事に気がつかないエルフの四人は、いつも適当なエクシアからしっかり説教を受ける……
「おい!ヒロ……終わったんならアンタも強制参加だよ!どうせ戦闘中は言うこと聞かないだろうけど!!ってか全身水浸しなんだから早く乾燥で乾かすとかしろよ……。その無頓着さは、だんだんゼフィランサスに似て来たぞ?お前……」
酷いとばっちりを受け、僕は自分の衣服に乾燥かけてから会議に参加した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
マモンは攻略会議の最中にとある魔法を唱えた。
その魔法はダンジョン構成を立体にして表示する魔法の様で、空間魔法で扱える一つだと言う。
非常に高性能であるその魔法は、最下層まで階層や部屋まで全てが分かる便利な物だった。
「見ての通りこのダンジョンは、5階層の若いダンジョンで上下に行けなかった分作りは横になげぇ。まぁ珍しいもんじゃねぇが無駄に時間を費やせばお前達が干涸びちまう……」
「確かにマモンの言う通りだね……既に水筒の水は空だから安全部屋見つけて補充しないと最下層に行くまでに動けなくなっちまう……それにしても……アンタ!!こんな便利な物あんのに上のダンジョンでなんで使わなかったんだい?」
「はぁ?お前は俺の契約者じゃねぇだろう?……それに俺の契約者が持つ魔法の地図を使ってたじゃねぇか……確か『便利!便利!』って大はしゃぎだったよな?誰かさんは?」
エクシアは『ぐぅ!』と悔しそうな顔をするが、マモンの一言で文句を言うのを諦める……
「ここから先は俺とアスマが先頭に立つ。誰も異存はねぇよな?」
「マモンさんが前に立つのは、僕に急ぎたい理由があるからだと理解できますけど……アスマさんが前衛で一緒なのには理由が?」
僕が不思議に思って聞くとアスマとマモンは顔をみあわせる。
「勝手に決めて申し訳ありません。エクシアがこの討伐隊のリーダーなのは十分承知していますが……マモンは『仙術』を何故か使えるんです。それも私より遥かにランクに高い仙術を……」
「ああ、何故か知らねぇけど使えるんだよ。さっき通路で話を聞いてやってみたら使えたんでな……教える契約をした。代わりに俺が困った時は情報をもらう約束をした……理由はそんな所だ。だが……俺が誰かと先頭に立つのにわざわざ説明が必要か?」
マモンは若干不愉快になりつつも、僕達にはそれを聞く理由に繋がる前例がある。
だからこそ更にエクシアがマモンに噛み付いたが、先頭を歩くのがマモンであれば怪我人が減ることは間違いがない。
それに、意外にもアスマの探し求めていたものをマモンが使えると言う。
マモンには悪魔だからか、それとも元からかはわからないと言う。
しかしアスマにしてみれば出所が何処であれ、自分の力を増す為の良い切っ掛けなのだ。
だから周りがその邪魔をするはずも無く、話は進んでいった。
しかしヘカテイアは……と言えば自分の記憶を基にある結論を出した。
「多分それは、生前のスキルが基になってるわね……。そもそも悪魔種が仙術を使えた試しは無いわ。属性が相反するもの……面白いことよね?マモンは昔悪魔と戦う術を持っていた……でも今は悪魔だなんて……何があったのかしら?記憶がないって言うには本当なの?」
「ああ?記憶があれば少しはこの世界でも楽しめるんだがな?お前と同じ思い出って奴で懐かしむことだって出来んだろう?だがヘカテイアお前は俺にちっとは感謝しろよ?お前の捜し物の手伝いをコイツに頼んでやったんだからな!だから用事が済んだら結界を直すのを手伝えよ……絶対だからな!」
ヘカテイアはその言葉にびっくりする。
まさか取引材料が、自分の事だとは思ってもいなかったからだ。
「じゃあ、マモンさんが先頭で、アスマさんが同行すると言う事でいいですかね?後はトラボルタさんとホプキンスさんが立候補したのでそれで……皆さんの水筒には今から僕が水魔法で補充しますよ。そうすれば安全部屋まではなんとかなると思いますし……」
僕は生活魔法のウォーターで水を出して空中に浮かべる。
「アンタって………たまに仕切り屋になるけど……やる事が斜め上なんだよね……。まぁいいや……アンタのおかげで当面の水も手に入ったし。おい暑さでバテてる貴族ども念願の水だよ。さっさと水筒に入れて置くんだね!」
貴族は我先に皮袋の水筒を、浮かんでいる巨大な水球に突っ込み水を入れる。
『グビッグビッ……』
「くはぁぁ………水がこんなに美味いとは……『ングング……』……」
皮袋に入れた直後から、中身を飲み干しそうな勢いで飲んでいく。
「まぁ水なら生活魔法で出せるのでMPがある内は何とかなりますよ」
貴族達は僕が出した水が生活魔法の『ウォーター』だと思っていなかったらしく、その水球を見ては僕の顔を見る。
「おい!アタイ達は先を急ぐんだから、貴族のアンタ達はちゃんと水確保しとけよ?後でまた出してくれ言われても暇が無ければ拒否するからな?」
エクシアは貴族達へ注意を促すが、マモンとアスマは何やら入念に打ち合わせをしている。
仙術について話しているのかも知れないが、マモンにしてみれば珍しい程の力の入れ様だった。
「……アスマ、じゃあここからは俺とお前が前衛だ……いいな?力を練り拳に溜めろ。それを相手の内部で爆発させるのが、俺たちの戦い方だ。内部から壊さなければ『意味がない』意味がわかるな?」
「………お前と前衛か……今となっては仕方ない……。だが流石に今すぐお前みたいに戦えないからな……武器は使うぞ?」
「武器だろうが何だろうが今は使うがいい……。そのうちそれさえ邪魔になる日が来る……要は慣れだ!一日も早く慣れるんだな」
エクシアはマモンとアスマの横に立って『随分入念だな?まぁ金級が欲しがる『技』って事はそれなりに大変だろうからね……もういい準備は良いかい?こっちは終わったよ!』と言うと、アスマが立ち上がりマモンの前に立つ……
「エクシア、準備は出来ました。いきましょう……既に下層階段は目の前です。ヒロ殿、エルオリアスに貸したマジックアイテムの懐中電灯を借りれますか?この下はどうやら『ダークフロア』の様です」
僕はアスマに言われて横から下層階を覗くと、階段の途中から真っ暗な世界が広がっていた……




