第716話「ルームの気遣いとぶち壊すミミ」
更新ですぞー_(:3 」∠)_
15時更新本日2話目です!
今回のお話は金鉱石で一波乱……_(:3 」∠)_
エクシアが驚くのも無理はない……儂と言っていたマックスヴェルが大激怒しているのだから当然だろう……
ペリマー男爵に至っては『ま……まだ7階です……』と震えながら言っている。
しかし怒りがおさまらないマックスヴェルは、怒声をさらに放つ。
「それと……金鉱石?箱の中身を見て金より価値があると何故気がつかない!?魔剣だぞ!?ステータス補正エンチャントされた魔剣を譲られたのに、今更金鉱石だと?金塊でこれが買えるとでも!?王家にもない武器だぞ!それもこれより良いものが下層階では手に入る可能性が高い!その邪魔をする馬鹿がいるか!!」
周りの貴族は、マックスヴェルの底なしの欲望に脱帽するしかなかった。
今まで目の前の魔剣に酔いしれていたのに、もうすでにその目は新しい魔剣を求めていたからだ。
武器に興味が無いマックスヴェルには、売った後の金貨にしか見えてないのだろう……
ちなみに彼らが言っている『魔剣』とは単なるエンチャント・ウエポンでダンジョン下層では割と手に入る。
マックスヴェルの持っていた武器を鑑定すると……『+3フレイム・ブリンガー』と出た。
炎のショートソードで延焼効果が付いている。
ステータス補正は全能力値+3となっているので、武器の前に付いている+3の事だろう。
どう比べても僕の持っている武器の類とは大きく違うので、魔剣と言われると見劣りする。
そして頭に被っているのは、宝石クラウンと言う装備補正なしの宝石があしらわれた単なる王冠だ。
王様に似た物をあげた気がする。
「じゃ……じゃあ降りるけど……いいかい?」
「エクシアにソーラー迷惑をかけたな!ちゃんと箱の配分は均等にするから気にするで無いぞ?ちゃんとルールは守る!だからもっと儲けさせてくれ!!ガハハハ!!」
「アンタ……二重人格かい?あたしゃアンタが魔物より怖いよ………ひとまず先に進むよ?」
エクシアがそう言ったので、金塊を回収する事は無くなった様だ。
折角なので僕は空間魔法と魔力容器の応用で丸ごとそこを抉り取った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
下層への階段付近で一度、拠点作りを行う事になった。
マックスヴェルの連れてきた貴族達が先程の詫びとして、上層階のウィンディア伯爵を探すと言い転送陣に乗って戻っていった。
「オイ兄ちゃん!」
僕は急に手に抱えた小さな小人、ノームに話しかけられる……
ノームは意外と声が大きいので、他のノーミーやノーム達も手元のノームに目を向けた……
「さっき金鉱石たっぷり回収してたけど……アレどうやったんだ?」
要らぬ事を!!と思ったが、実はソウマやミクにカナミそしてミミとカーデルも偶然それを見ていて、何故金銭に余り興味が無さそうな僕が回収をするのか不思議に思っていた様だ。
採掘方法はノーム達に教えられる……しかしそれをマックスヴェル侯爵が知れば毎回掘る事になるのは間違い無いだろう。
ちなみに金塊はクリムゾンミスリルに変換するための素材に過ぎないが、それを今ここで言えるわけもない。
そう思っていると問題児ミミが満面の笑みで話し始める……
「それはでしね!ワテクシの十八番『魔力容器の応用』なのです!!お師匠様ワテクシも少し回収しましたよ!」
そう言ってミミは、マジックバッグから大きなスイカくらいの金塊が含まれた鉱石を取り出す……
『ゴトン………』
「ふぉぉぉぉ!重いであります……魔力容器を使わないとこんなに重いのですか……金って……カーデルちゃんなら力持ちだから持てそうですけど!」
「ミ……ミミ!貴方それを一体いつの間に?って言うか……私をゴリラの様に言わないでくれるかしら?イメージって大切なのよ?」
その会話に僕は『ゴリラ』がこの世界にも居るんだなぁ……と思ってしまう。
「なぁミミ……俺も持ってもいいか?」
金鉱石と聞けば冒険者ならば誰だって気のなるのだろう……ルームがそう言い始める。
「ルームさんは……言葉巧みに誘導して、それを売る気なのでは?……借金してミミさんから武器を買ってましたが……今度は金塊の取り分ですか?」
「ル……ルーナ!?何故そんな事を?俺には何を言っているか分からんな………はははは……パーティーだからちょっと分け前貰えるかな?とか思っただけだ……」
ルーナの鋭い指摘で冷や汗がダラダラ出ている、リーダーのルームだったが、当のミミは珍しく金塊の買取価格を気にしていた。
「ねぇ?ミミなんでそんなに金額を気にしているの?」
カーデルがミミにそう尋ねる……するとミミがルームの秘密を暴露する……
「パーティー維持にはお金がかかるんです!ワテクシ実は知ってるんですよ?ルームさんの稼いだお金は全部パーティーのギルド保険にかけられているんです!それを『借金』と言って誤魔化しているんですよ!師匠の奥さんから聞きました!」
パーティーリーダーのルームに一斉に注目が集まり、耐えられなくなった彼はそそくさと逃げようとする。
だがルームはルーナの機動力を舐めていた様だ……ルーナのヘッドロックが彼を襲う。
「いででででで!!ルーナ!ブレストプレートが額にめり込む!!いでででででで!!………」
「なら!ミミが言った事を全部白状なさい!!」
ルームの話を聞くと、彼は万が一自分に何かがあった時のためにギルド保険をかけていた。
パーティーが崩壊した場合、全員に満足な金が渡る様にする特殊な保険だ。
主にリーダーが死亡した時に支払われる他、パーティーメンバー自身もリーダーと自分にかけることができる。
ちなみに基本的に受取人は家族や仲間であり、生活保障のための保険だ。
「やっぱり……そんなことだと思ったわ!あなた賭博もやらないし、酒も飲んだらすぐ酔って寝ちゃう人が……一体何処にお金を使ってるのかと思ったのよ!武器も防具もそこまで値が張るものじゃないし!」
「ルーナちゃんはルームさんの奥さんみたいですね!?ワテクシは将来旦那を持つならこんな夫婦が良いですねぇ……師匠の家族は結構危険なので、ミミとしたら普通がいいです……」
「え!?………どう言うことかしら?ミミさん?」
ルームとルーナは突然変な事をミミに言われ若干距離を作る。
彼らの表情からすれば満更じゃない様だ。
しかし不意打ちを喰らったシャインは、ビックリしつつもズイっとミミに近寄る……そして拳に武器を装着する。
「え?あ!!シャインさん居たの忘れてたです……でへへへへ………まった!待ってくだせい!シャインさんのボディブローは死んじまいます!ミミは三途の川は泳げません!カナヅチですから……ぎぃぃぃやぁぁぁぁ………」
ミミは、シャインより早く動いたカーデルの回し蹴りをくらい……ぶっ飛んでいく……
「シャインさん、大馬鹿のミミはちゃんと成敗しましたので!」
「ミ……ミミさん……大丈夫かしら結構飛んだわよ?」
そんな事があって、ミミが回収した金鉱石はリーダーが管理する事になった……
ある意味一番大手柄なのに、口から出た禍で痛手を被ったミミは……『安定してるよね……ミミってさー尊敬するわー』と心が籠らない口調でアーチに言われていた。
上層階に行った貴族待ちをしている間に起きた珍事件だったが、休息を取るには良い時間だ。
しかしエルフ達は暇になったのか、僕から地図を借りたいと言ってきた。
どうやらこの時間に少しでも魔物を間引きたい様だ……精霊信仰があるので気が気じゃないのが表情に出ている。
地図を受け取ると、エルフレアとエルオリアスそしてエルデリアは武器を持ち、下層階へ向かう準備を本格的に始めた……




