第659話「街に走って向かったら包囲された……トロルですが何か?」
ああ!あぶなぁ!∑(゜Д゜)更新した気でいたw
今回のおはなし……
走っていったらトロル包囲されました……当然といえば……当然?
それにこのダンジョンのダンジョンマスターは何故か人種を失った僕で、困った事に操作も出来ないしマニュアルも無い……
それどころか、大元の作られた経緯も作者もわからない。
唯一わかるのは『ダークフェアリー』が『外界と隔絶した隠れ家』にするために模倣して作っただけと言う事だ。
僕はダークフェアリーの穢れを、マモンかヘカテイアが回収出来ないか考える様になっていた。
もしそれができれば、このダークフェアリーは『ルモーラ』の様に適当な性格の妖精に戻るのでは無いかと思ったのだ。
例えフェアリーに返っても、このダークフェアリーを許す事は多分出来ないと思うが……
『おい……言い難いんだが、お前の考えは全部伝わってるぞ?念話は考えが筒抜けになるんだぞ……何もしらねぇんだな……契約者。まぁ……お前は放置してた方がコッチは楽しめそうだからな。聞かなかった事にしとく。だがダークフェアリーの事は諦めんだな……フェアリーに戻した瞬間……消滅するぞ?『アレ』はダークフェアリー様に作った物だろうしな』
『筒抜けに?だからアーティファクトはすぐに返してきたのか……それはそうと……何か知ってるんですか?僕が言おうとした物について……』
『あのダンジョンの秘密については、なんとなく変だ……位しか思わなかったな……。それに地獄に無い物は、俺にもヘカテイアにもわからねぇよ。だが牢獄系のマジックアイテムは別だ……あれは全般的に汎用性がねぇ』
『汎用性?霊体というか思念体全般に使えるんでは?』
『まぁ言い方次第ではそうだな……だがな、フェアリーはそもそも思念体を維持できねぇ。『アレ』は混沌種や死霊種、天族や精霊種に限られたものだ。身体を持たないと言ったほうが分かり易いか?まぁ一言で言うなら無理っていう話だ……まぁ頭冷やしてゆっくり考えんだな!それよりトロルどうすんだ?」
無知はそれ自体に問題がある……
困った事に黙っておきたい事まで伝わった。
考える時は『念話を一度終わらせる方がいい』とマモンに注意をされるくらいだ……変に勘ぐられない様に『考えたい事がある』とハッキリと言っておけば、相手はそれ以上聞かないだろう……との事だった。
当然それが通用するのは、目の前の悪魔だけかも知れないが……
僕は念話を終わらせてから、『何故伯爵達はトロルについて何も言わないのだろう?』……そう思いつつ馬車の窓から顔を出す。
「衛兵長さん大丈夫ですよー。知り合いです!ヒロです……言うの遅くなってすいません!伯爵達も無事で、そっちの馬車の中に居る筈ですけど……」
僕がそういうと、全員がホッとして武器をおさめる。
「ヒロ男爵様!!良いですか?貴方は『必ず』変な方向へ話を持っていきます!!予め報告を心掛けてください。周りを見てください!その高い位置なら、皆怯えてるのが見えますか?」
門の前には兵士が怯えながらもトロルにメンチをきり頑張っており、当然入場待ち中の商人は荷物を護るのに大慌てだ。
防御壁の上には弓兵がいつの間にか陣を築いていた。
ウィンディア伯爵にザムド伯爵が説明しない理由は、既に馬車の中で深い眠りについていた……所謂……気絶だ。
帰りの馬車は、今後の打ち合わせのために僕とエクシアそれに、異世界組からはカナミとユイナにギルドからはテカーリンとイーザそしてちびっ子の龍っ子が乗っていたので、伯爵達二人が気絶して居るのが分からなかった。
「おう!ヒロ、モウ平気カ?俺ドウスルべきか考えてた。人間達傷ツケナイ方法。衛兵長、俺グルグアと言う。トロル・キングダムのギムドロル王子付き、近衛隊隊長を兼務シテイル。ヒロの馬車持ってイルのが『ギムドロル王子』ダ!ヒロに助ケテ貰っタ。トロルお前達ノ味方、ダカラ攻撃シナイ!友好関係ムスブ王子ガイッテタ」
その言葉に衛兵長はびっくりして兵士たちに正門を開け放つ様に言いつける……
「今すぐ城壁正門を開けさせます、失礼をお許し下さい。トロル・キングムのギムドロル王子殿下とお仕えのグルグア隊長殿……直ちに武装解除にて開門!!繰り返す!武装解除して開門!!決して失礼のない様に!!」
問題は街に中には、トロルの居場所が無いと言う事だ。
どうやら早速マジックテントとスキルの『拡張』を使用する必要がある様だ……テントを余分に買っておいて本当に良かった。
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「夜のニンゲンの街、雰囲気ガ良いナ!トロルの王も見習うベキ。少し外界知って王国盛り上ゲル。そして太陽光の克服考えないとダメ。王族の持つ『石化無効』なんとかして、他のトロル達ニ覚えサセルベキ。スキルスクロール探すベキだと人間の街見て我は思っタ」
ギムドロル達トロルはギルド前の広場に座っている……何故かと言えば人間の街には入れる建物が無いのだ。
中が大きい作りでも、入り口は人間サイズなのだ……入れるわけがない。
宿は『人間用』で小さいし、ギルドは門を開け放ち扉を壊せばなんとか入れるだろう。
しかし天窓があるので朝になればギムドロル以外は『石』になってしまう。
そもそもトロルが邪魔で、ギルドとして運営できなくなってしまう。
なので急遽大量の布を用意して、ギルド職員が総出で縫いまくっている。
明け方にそれを体に巻いて芋虫状態になり、光を避けるためだ。
自国に帰る旅の途中でも、絶対に必要になるのは目に見えている。
ちなみに布と作業の費用は、トロル達が持っていた宝石類だ。
街中から布という布を買い漁っているギルド職員。
顔に疲れが出ているが、嬉々としてその手を休めない……何故かと言えばそれが完成したら、針子は一人一個一番小さい宝石をもらう手筈の様だ。
ギムドロル達にとって宝石は、豆粒より小さい光る石くらいの価値だ。
何かの品と交換できるなど、思っても見なかったそうだ。
ちなみにギムドロルの目の前には、ギルドが用意した宝箱から溢れ出るくらいの金銀財宝が鎮座していて、布代金はそこから支払われていた。
トロルには非常に小さい宝石だ……
うっかり何個か指で潰してしまったので、それを見かねて代金の支払いは全部ギルド職員がやっている……
目がマジで怖い……どう盗むか仕切りに考えているのだろうか?……
何故こんな物を山程持っているかというと、ダンジョンの奥に閉じ込められているときに、定期的に手に入る宝箱を開けて次元収納へ回収していたそうだ。
ポーション類が少なくとも、王子の臨時飲み水の代わりになるだろうと集め出したそうだ。
話の過程で明らかになったのは、グルグアとウボォの特殊能力は『次元収納』だと言う。
グルグアは王子の旅の荷物がかりで、ウボォは武器や兵站担当だと言う。
宝箱の回収によくゴブリンが逆らわなかったなぁ……と思い聞いたら、流石に『名前付きのホブ・ゴブリン』でも暴れ回るトロルには手を焼いて、宝の回収はトロルが一方的に出来た様だ。
それでもホブゴブリンが許せていたのは、あの階層には『宝箱』は6箱も出るそうで、うち3箱はホブゴブリンが囲っていたからだと言う。
いずれ瓦礫から掘り起こせば、良い収入源になりそうだ。
場所を聞いておこう……
ホブゴブとゴブ達の多くの装備を賄えた理由は、どうやら冒険者だけで無くそこが主な回収場所なのだろう。
ちなみに布では心許ないのは、トロル達も考えは一緒だと言う。
しかしトロル用のテントを製作・改造したいが、注文は今朝に行ったのだ……今は魔導士学院から預かっているマジックテントしかない。
ポチの宅急便でも届くのに最低限1日はかかるので、明日の朝日はギムドロル含めて全員が拝む事になる。
そうギムドロルと話していると、聞き慣れた声が聞こえる……
「童!連れ帰ったのは良いが、寝床も用意してないのじゃろう?全く……今日は安全のためにダンジョンに寝泊まりさせておけば良かったものを……それで?何か妙案はあるのか?」
話しかけて来たのは、現状を見て呆れているフレディ爺さんだった。




