第584話「事情聴取とスラの就職先」
遅くなりましたー!!\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/
今までの纏めをしてたら遅くなったです!
今回のお話は!
聞き取り調査から始まります!ではどうぞ!
ビックリした事に、ビーズもステイプもミサの生い立ちを黙ってくれていた。
ダークフェアリーの一件を見聞きして、彼女が200年も彷徨っていたことを聞いたのだ……
これ以上、可愛らしい彼女を泣かせたくない男心と言うものだろう。
彼等は、ダークフェアリーという魔物に拉致されていたミサが、ダンジョンコアの人柱にされる直前に僕が助けたと言った。
一部嘘では無いが、一部嘘だ。
彼女は剣を持ち襲ってきた……そして彼女の戦力はアシュラムじゃないと防げない。
充分休んだ今の彼女だったら、衛兵達を皆殺しにして街から逃げ出すのは容易い。
彼女はそんな事をしないし、しない理由も分かりきっているが……
衛兵達は彼女に温かいお茶を出し、『女性冒険者なのに苦労したな!大丈夫だ!このジェムズマインの街は王国いち安全な場所だ!炎帝エクシアに魔物の王ヒロがいる』と言った。
ミサは涙を流しながら……
「本当に夢の様です!自由になれて良かった!あの薄暗いダンジョンコアの部屋に未来永劫ずっと居ないとならないと思っていました……助けて貰ってよかったと、心の底からそう思います!」
と言ったが、僕的には他の事が気になった。
物騒な名前が立て続けに言われたが、エクシアさんは炎帝と呼ばれる様になったのだろうか?
そして僕の魔物の王とは何だろう……
そう思っていると、衛兵長の背後に何故か分裂した個体のスライムが衛兵詰所に居るのが見える……
現時点でも衛兵達に餌付けされているが、裏庭を見ると山程フォレストウルフが頭を潰されて横たわっている。
「スラ?ちょっといい?」
「なーに?主?」
「あそこにいる大きめのスライムって……まさかスラ?」
そう聞くと『そうだ』と言う。
この街には大切な宿の主人だけで無く、美味い餌を定期的にくれるビラッツが居るので、守護していると言う。
フォレストウルフの死骸について聞くと、ゴブリン声帯の再現力を手に入れたスライムは、直接衛兵達と会話してこの周囲の脅威を聞いたそうだ。
周辺の魔物、特に足の速いフォレストウルフは衛兵達でも数人で囲み倒す必要があるので『特に厄介』と聞いたスライムは、周辺の樹々に分裂潜伏し、見張り替わりになっていると言う。
そして日夜フォレストウルフ駆除をしているそうだ。
ビックリした事に話はそこで終わらない。
衛兵長の話では、今やそのフォレストウルフは、衛兵宿舎の貴重な収入源になっていた。
僕が薔薇村に出た、たった4日のうちにだ……
スラが倒したフォレストウルフは衛兵が回収するが、遺骸を埋めるには場所が足らない……だからと言って遺骸を魔の森に放置すれば『ダイアー・ウルフ』と言う『死霊犬』になってしまう。
個体としては大きいフォレストウルフを、完全に燃やし尽くすにはそれこそ大変で大量の木材がいる。
悩んでいた衛兵達にスラが、僕の様な考えを話したそうだ。
『解体して肉は街に卸して、素材はギルドに売ればお金になる。そしてそのお金で装備を整えれば死ににくくなる。そうすれば困っていたフォレストウルフを燃やす必要も埋める場所も必要無くなるなる』……と言ったそうだ。
衛兵達はビックリしつつもそれを実行すると、肉の存在を聞きつけたギルドの売店と街の精肉屋、そして踊るホーンラビット亭のビラッツが押し掛けてきたそうだ。
そして肉の取り合いが始まり揉め事になったので、朝日の出る時間に毎日ある分の肉を来た店に均等に卸す事で争いは収束したと言う。
ビラッツは以前ホーンラビットに執着していたと思ったが、もはや肉なら何でもいい状態になった様だ。
ホーンラビットの肉だけで、街の住民の胃袋を満たせるだけの肉が無いのは分かる。
だからフォレストウルフの肉に手を出すのにも仕方のない事だが……
素材の方も同様で、ギルドの素材店と街にある素材専門店、そして各種工房が駆け付けた。
同じ様に揉めたが、来る者皆が筋骨隆々なので殴り合いになったそうで、スラが窒息させ争いは落ち着いたそうだ。
素材屋の主達はスラの決定には逆らわない事を約束して、素材の買取を許可された。
各種工房は物々交換で、冬用の装備と交換すると話がまとまった様だ。
冬装備で外向けに着る外套は皆で使い回しをして居たので、スラの妙案には大助かりだったと言う。
話していると衛兵長が話しかけてきた。
「スライムを借り受ける契約を結ばず、勝手に販売して収入を得て申し訳ありません……男爵様!てっきり男爵様の妙案かと……」
「スラが自発的にやった事ですから!街の為と思っているならそれでいいと思います。それに皆さんがこのスライムを敵ではないと思ってくれているので、それが逆に嬉しいですしね!」
僕は衛兵長にそう言うと、近寄って来た分裂したスラは何故か衛兵の帽子を被っていた。
どうやら分裂の一個体は衛兵として就職した様だ。
一応ミサにも聴き取りがあるので、数日は詰所預かりになると言う。
しかし牢獄での監視は無く、指定時間に詰所に来て聴き取りを繰り返すらしい。
僕はミサを連れて泊まっている宿の『陽だまり亭』に向かう。
「おお!無事帰って来おったか、飯はどうする?って後ろのおなごは客かの?もしかして……同郷か?」
僕が連れてくる客は既にそうだと分かってしまうのか、そう話しつつ鍵を用意する亭主……
「そうですね!彼女はミサさんです。多分相部屋になるかもなんですけどね……」
僕がそう言うと、『そうか!そうか!』と言いながら、大部屋の鍵を取る亭主。
この宿の2階は、殆どが女性で埋まっている。
「お仲間は遠征旅からまだ帰っておらんぞ?同部屋じゃが急に入っていても大丈夫なのかのぉ?」
その言葉に僕は『部屋に知り合いがいた方がビックリすると思うんです!』と笑って言うと、亭主も笑いながら『サプライズって言うやつか?お主らがよく使っている言葉で言うと?』と言う。
僕は宿の亭主にお願いして、彼女の布団を一式部屋に持っていってもらう。
「これが二階の部屋の大部屋の鍵じゃ!鍵は出かける前にカウンターに戻す様にな!じゃあ布団を持っていくので、此処で少し茶を飲んでなさい」
そう言って、外に干して居た布団を取りに向かう亭主。
「なんか温かみのある宿ですね!もう私が異世界人だと見抜かれました!」
「実は此処には異世界人しか泊まってないんだ!だから否応にもそれが分かるんだよ……」
そう説明すると、ミサは『成程!だからですね!』と笑いながら言う。
ダンジョンで悲痛な顔をしていた数日前とは打って変わっての笑顔で何よりだ。
しかし、ゆっくり此処で話している時間は、実は僕には無い。
ドワーフの姫さん達2人に鍛冶工房のことを伝えて、ギルドに行ってダンジョン踏破報告をせねばならないのだ。
早い時点でドワーフの姫を工房に連れて行かなければ、溶鉱炉が作れないのだ。
詳しく知らないが、流石にドワーフでも炉の製作には時間はかかるはずだ。
僕は事情を話してギルドに行くと言うと、ミサもこの街を見るのは長谷川くんの時以来と言いかなり久しいと言うのでついてくる様だ。
数日前はダークフェアリーの力で移動したので、当然だがこの街は見てもいない様だ。
龍っ子の背中に乗っていたので身体が冷えていたので、風呂と着替えだけ先に済ませておく事にした。
龍っ子での移動の最中、雨雲に突っ込みかなり濡れたのだ。
それでも移動時の風でかなり乾いたが、濡れた服が生乾きと言うのも正直嫌だ。
宿の主人に言って風呂を使わせて貰う。
僕はスキルの魔力容器に水を入れて、生活魔法の『着火』で加熱する。
早くお湯にしたいので魔力をガンガン使う。
熱々にしたお湯を男女別の浴槽に入れてから、宿に主人にお湯を入れた事を報告する。
女性用の風呂桶にお湯を入れる時、なぜか恥ずかしくなってしまう……考えすぎだろう……
「なんか、すまないのぉ……お湯が沸くまで時間が掛かるから助かるぞ!はっはっは!!」
そう笑いながら、亭主はカビ対策で外に干していた風呂桶などを持って来てくれた。
僕は先に風呂に入ったが、部屋の準備が終わったとミサは言われたので部屋で荷物整理をしていた様で、入れ違いで風呂になった。
と言っても風呂は元々壁を隔ててかなり離れているのだが……
ミサは湯船がある街の宿を久々に使った様で、かなり満足した様だ。
仕事が終えて帰ってきたらまた入ると言っていた。
そんな風呂に入って、ふやけないのだろうか?と思ってしまう……




