第437話「ゴブリン絶叫!!多重渦竜巻の被害は甚大」
お昼更新ꉂ(≧∇≦)
竜巻が蹂躙した階層には瓦礫の山……
しかし次の問題が起きますよォォォォォヾ(≧▽≦*)oさぁなんでしょうか!
「酷いじゃないっすか!?この空気を少しでも和らげようと………」
満員電車並みの部屋で、ハゲたおっさんの裏声『きゃぁぁぁ』など聞きたくも無な……という空気が流れる。
冷たい視線をものともしないロズは、エクシアに精神的にも鍛えられている様だ。
流石に安全地帯だけあって、部屋に入ってさえしまえば入り口付近であっても影響はない様で、盾を構えた騎士達は無事だった。
防御に徹している騎士団は、生きた心地がしない様で、非常に顔が青ざめている。
問題は外がどうなっているかだが……
ニュースで竜巻の被害を見る限り、その状況は非常に酷い……密閉された空間でそれが起こったならば、そこに居る生き物は絶望的だ。
『ゴォォォォ………バリバリバッリィ………』
『ギョヒィィィィィィ………』
『ズガァァン……』
『ギエェェェ………ェェェェ………ェェェェ………』
『ズドォォン………ゴォォォォ……ミシミシ………バキバキ………』
『ゴォォォォ』
非恐怖を覚える轟音が鳴り響き、ゴブリン達の叫び声が響き渡る。
ゴブリンの悲鳴が上がると、すぐに水竜巻に飲み込まれて聞こえなくなる……
そんな事が暫く続いていたが、ようやく静かになった。
「そろそろ大丈夫ですね……魔法効果はもう消えてます。消すにも反応がないので消えてるようですし」
僕の言葉で、恐る恐る騎士団員が外に出て確かめる。
「だ……大丈夫ですね……ゴブリンとトロルが襲ってくる気配もないです」
その言葉で安全エリアから全員が出る……あたり一面が瓦礫の山になっている。
廃屋ではあったものの、街を形成していた筈のこの階層だったが、建物の形跡は一切なく全てが破壊されていた。
水魔法の竜巻であった為に、魔法効果が消えると綺麗さっぱり水は無くなった。
水が残らなかった事もあり、この階層の荒廃感が際立つ。
僕達は登り階段に避難していた騎士団員の方へ合流して、戦闘していた場所まで瓦礫の山が崩壊しない様に注意して進む。
当然騎士団が先頭で、ゴブリンやホブゴブリンの襲撃に備えながらだ。
「こりゃすごい状態だね……あの竜巻で砦諸共全てが瓦礫に早替わりだ……ベロニカ、魔物生体反応は?早速で悪いが感知頼むよ」
エクシアがそう言うと、ベロニカは目視出来る場所に登り周囲を見渡しつつレンジャースキルの『魔物感知』を使う。
『!!!』
ベロニカの驚愕の表情を見て、僕は急いで『空間感知』を使う……
既にあたり一面を破壊し尽くしたので『魔物の気配など』……と思ったが、複数の魔物の気配が残っている。
◉が一回り大きめの反応7つに、あの竜巻の難を運良く逃れたゴブリン達も僅かではあるが生きていた。
しかしトロルに対しての簡易鑑定のステータス表示は『昏倒』『瀕死』『超速再生』となっている。
「エクシア姉さん!!トロル達はまだ生きてます!!」
ベロニカの説明の前に僕は『ゴーレム』に『念話』を使って指示を出す。
『ゴーレム集結!!』
命令を聞いたゴーレムが瓦礫を押し退けて這い出てくる。
ゴーレムに最大値まで魔力を充填しているお陰で、防御が上がってあの竜巻を乗り越えられたようだ。
当然だが無傷とはいかない……
防御がかなり高くなっていると言っても、硬いものが何度も当たれば表面が欠けたり、突起物が折れたりはする。
そもそも瓦礫に埋まったお陰で助かったのかも知れないが、それを確かめる術は僕には無い。
あの場に居たら、確認する前に確実にあの世に行ってしまう。
『ズガァァン!』
ゴーレムの登場に合わせるように、割と近い場所に『埋まっていた』トロルが復活する。
『再生』スキルのおかげで、瀕死でも死ななければ回復し続けるのがトロルだ。
「ブモォォォォォ!!グルルル!!ゴアァァァァ!!……ゴロズ!ミナゴロシダ!!ニンゲン!ゴブリン!!エルフ!!オマエタチジャマ!!」
驚いた事に目の前のトロル達は『会話が出来る』くらい知能があった。
しかし攻撃を即座にして来ないのは、瓦礫に脚が挟まり移動したくても出来なかったお陰だ。
「マジかい!?喋りやがった!!アイツはトロルでも『古い個体』だよ!!」
「エルデリア、この矢を使え!!エルフレアお前も部下の矢を集めてエルデリアに!!お前達と俺達はあのウスノロと接近戦だ!いいか?右脚を狙え、俺達は左脚を攻撃して奴の移動力を完全に奪う!!」
月のエルフのエルオリアスが即座に指示を出す。
「エルオリアスの部下は人間から矢を貰え。無いよりマシだ!」
ハラグロ男爵も意味を理解して、弩隊の持つ予備の矢筒をすぐに持って来させる……自分達より遥かに有効利用できるからだ。
「人間の矢はエルフ族の物と違い使いずらいかも知れぬが、エルオリアス殿の言う通り『無いよりはマシ』だ。共に生き残り美味い酒と飯を食おう!!」
「ハラグロ男爵様有難う御座います。我々は『どの矢でも』うまく使いこなす自信があります。エルデリア!エルフレア!有難う、この矢が有ればトロルなど何匹居ても敵ではない!!」
ハラグロ男爵の弩隊の予備兵が、慌てて矢筒を大地のエルフ達へ届ける。
それを確認したエルデリアは部下に待機位置を指差して指示を出す。
「皆受け取りすぐに持ち場に!他のトロル個体が合流する前にアイツをまず片付けるぞ!視界を完全に潰すのが我々の仕事だ!即時持ち場へ散開!!」
大地のエルフ族は足場が不安定な事などなんでも無いかの様に、軽々と瓦礫の山を崩さずにこえていく。
「ゴーレム達は騎士団へトロルを近づかせるな!」
僕はゴーレムにそう指示を出した後騎士団を少し後ろに下がらせる。
もし戦闘に巻き込まれれば、トロルと石像の下敷きになりかねない……人間サイズはこの接近戦では邪魔でしか無い。
「グルルル!!ゴアァァァァ!!」
トロルは瓦礫を押し退け挟まれた脚を引き抜くと、怪我をしている脚の傷がじわじわと再生されていく……
「グルルル!!ゴアァアァァァァ!!」
トロルは威嚇をした後に突撃する態勢になる。
……しかし……
『ボゴォォォン!!』
『ズガァァン』
『バキバキ……ガラン……ガラガラ……』
他の場所に埋まっていたトロルが瓦礫を破壊して、這い出てくる……
どうやらトロルの咆哮で昏倒から覚めたようだ……
「参ったねぇ!!結局はコイツら6匹と戦わないといけないのか……チャンティコにならんとダメか……あれは疲れるんだよ……」
「エク姉さん!疲れるんだよって……死んじまったら『疲れることさえ』できませんぜ!?それとヒロ!さっきの竜巻もう一発くれてやれば始末できないかな?」
エクシアの愚痴にロズが茶化すが、僕に再度あの恐怖を再現させようとするロズの神経は相当ヤバいようだ。
「残念ながら再生効果が邪魔で、効果がそこまで見込めないかもですね……確実に一体ずつ対処するのが良いのかもしれないです。ゴーレム達には後ろの5体を抑えさせて、皆で1匹に総攻撃ですかね……」
僕が言った案を正式採用される前に、一番近い場所で咆哮していたトロルが突っ込んできてしまう。
「ウボォォォォォ!!ヤメロ!相手ニスルナ!我々ノ主ヲ救うノガ先!!」
「グルルル………『グルグア』サマ……ダガ……マタ、ジャマサレタラドウスル!!……ワレワレノジャマスル、ニンゲン!エルフ!!ゴブリンノナカマ!!」
『ゴブリンの仲間!?』………アイツ等の仲間なのはそっちの方じゃないのか?
……その聞き取りづらい会話を聞いて僕の頭に疑問が浮かぶ……
そして『グルグア』というのは、どうもこの目に前にいるトロルの会話相手の『名前』のようだ。
そのトロル・グルグアの言葉の発音は若干特殊だが、人間の耳には割と聞き取りやすいほど『流暢』であった……




