第292話「覚悟のない裏切り者」
22時だよぉー
✌︎('ω'✌︎ )時ー
✌︎('ω')✌︎時ー
( ✌︎'ω')✌︎時ー
♪(´ε` )
「頼む!そこのアンタ!宿でさっき会った冒険者だよなあ?白状するから保護してくれ!家族だけでも保護してくれ!罪は償う。だから頼む!」
「見てみろよ?衛兵さん。彼は白状すると言っているんだよね……アンタ達の仕事もわかるけどさ、悪いが今はそう言ってられないんだよ!」
「王宮騎士団の詰所に呼ばれて、アンタがコレから起きることの全ての責任取るなら構わんけどね!?どうする?衛兵さん?」
「あと後ろのアンタ……なんで暗器なんぞ握ってるんだ?」
予めロズに指示を出し、衛兵達の後ろに回り込ませていたエクシアがそう言い放つと、ロズが衛兵の腕を取り締め上げる。
『カランカラン』と音がして細長いナイフが落ちる。
「ぐあ!」
「く!何の言いがかりを言う!それだって後ろのお前が今投げたのだろう!」
その言葉を聞いたザムド伯爵が剣の刃を抜き首筋に当てる……目は大マジだ。
「もう一度聞くぞ?私は大切な物を奪われた……貴様も家族も一族全員引き摺り出して法の元で捌くか?拷問なら特に極めた奴が此処にいるぞ?従魔に部分的に生きたまま食わせる事ができるからな!」
「そして人間の生を終わらせて、魔物にすることも出来るが?……王に許可を得てお前の死体を魔の森に放り込むことでな!」
ザムド伯爵の秘薬は無事なのに……言う事がひどいと思うしかない……
彼自身は罪は償うしかないが、助け舟を出しておこう。
「言葉を選んで言わないと本当に家族全員魔物になりますよ?今更なんですから認めた方がいいと思いますけど……彼等が命を取り留めたら『必ずトドメを』とか言われたんでしょう?」
「因みに僕は拷問反対です……アリン子には美味しい物を食べさせたいので……衛兵の腕はちょっと……」
僕が助け舟を出したら何故かザムド伯爵の威圧が強まる。
「そうだなトンネルアントの餌にするか……ヒロすまんが厩舎にいるアリン子を貸してもらえるか?生きたまま腕の2本も失えば全部吐くだろう……コイツは事態が分かっていない様だからな」
「このジェムズマイン領主が持ち込んだ献上品の襲撃に加担したのであれば、ヤクタ同様縛り首だと!」
今アリン子にコヤツの汚い腕など嫌だと言った筈だが………?聞いてた?伯爵さん……
「はぁ!?ちょ!ちょっと待ってくれ!………いや!待ってください!違います!まさかそんな事に加担はしてません!商団の荷物をちょろまかす様に言われただけです!」
「そのナイフには痺れ薬が塗ってあるだけで、殺す気もないです!本当です!」
それを聞いてナイフを拾ったもう一人の衛兵は、ナイフを見てワナワナとし始める……衛兵が懐から手錠と腰に巻いてあるロープを取り出して、
「この衛兵の恥さらしが〜今すぐ貴様を逮捕する!腐敗貴族の言いなりになるなど……この王都の衛兵にあらず!虫の餌にでもしてやるわ〜」
皆で僕のアリン子に変な物で餌付けするのはやめて欲しい……
「じゃあ白状しますね?取り敢えず彼等の身元はザムド伯爵様が管理した方がいいですね……監獄に入れたら明日は首吊り死体になってるでしょうから……彼等貴族の手下によって」
「今はひとまず助けましょうか?ザムド伯爵様……まぁ助けても今後どうなるかは正直わかりませんけどね」
「それはそうと、ちゃんと然るべき場所で白状してくださいね?後で嘘ついたら間違いなく粉々にしますよ?」
そう言って僕は無詠唱で『アイス』の魔法を唱えて水路の一部を凍らせると……魔力を込めすぎたために水路の一本がまるまる凍結する。
疲れが出ていて魔力操作が雑になっていた。
「「言う!言うから!氷漬けにしないで………」」
でも犯人は白状する気になった様だから………結果オーライだろう。
ひとまずエクシアとも合流でき、偶然襲撃犯や悪辣貴族の手下も確保できたので数人がかりで連れて行く。
人の目がある以上、間者に一部始終を見られていると計算して行動するべきだし、最早衛兵に突き出してもこの2人には明日がないのはわかりきっている。
それに僕らに捕まった以上、彼等が何と言おうと貴族達には知らぬ存ぜぬを貫かれるだろう。
「私達はどうなるのでしょう?まさかこんな事になるとは……マッコリーニ商団の荷物で欲しいものがあるから協力しろ!と言われただけです!今までの借金を返せないなら手伝えと!」
「私もです……装備欲しさに金を……。そこにコマイ男爵が借金返済の仕事をと言われまして……逆らえなかったのです!」
この一件に関わった悪辣貴族は既に味方では無いと、自分の状態を悟った彼等2人は命乞いをザムド伯爵にしている。
彼等の借金の理由は自業自得だったが、それで迷惑をかけるのは間違いだ。
なので、悪事には償いを……彼等を利用したならこっちも利用させてもらうだけだ。
しかし当然だが、彼等を証言させに連れて行っても、トカゲの尻尾切りにされてしまうのは目に見えている。
「どうしたものかな……彼等を救ったところで貴族の奴らは罪を認めるはずはないよな?自分でやらない理由はそこにあるんだからな」
エクシアも同じことを考えていた様だ。
だからこそ僕達は、その全てを利用するしか無い……自分の行いで自滅してもらう為だ。
彼等が自分自身の手でより確実に終わりを迎えてもらう為には、更に調整する必要がある。
「なので結局は自滅の道でこの件は進むしか無いんですよね……僕達を敵視してくれる事が悪辣貴族全体の最後に繋がるので、彼等悪辣貴族がザムド伯爵を陥れ、この2人を見放すと信じておくしかできません」
彼等を連れて来た目的は、証言させて悪辣貴族に罪を認めさせる事では無い。
そもそも彼らとの繋がりを否定されればどうしようも無い。
今の予定では王の御前で証人として発言をさせてから、貴族に盗んだかどうかの質疑をする。
その上で『盗んでいない』と言う言質を取った上で『箱を開けさせる』事コレが結局一番良い手だ。
向こうが盗んでないのだから、こっちは『箱は諦めて』引き下がる予定だ。
中身が『大変な物』なので、盗んだのを認めれば『王への逆心』認めなければ『送った理由』を聞かれるのは間違いない。
正当な理由がなく王の黒箱に『馬のフン』を詰めればまず不敬罪は免れないだろう。
ちなみにザムド伯爵だって同じだ。
逆に認めた場合は、此方が箱を引き取り開封しなければ済む……『偽物』を回収したかった、中身はとても王様には出せない物と言い訳をこねれば良いだけだ。
問題は、開ける前に問い質す必要がある……何処の誰がどう繋がっているかを明確にしておかなければ、トカゲの本体を逃してしまうからだ。
「結局この者達の安全を確保しつつ、アレックスの吉報を待つしかないな……ところで王宮からの使いはどうなった?」
僕はこの短期間ですっかり忘れていた……王宮の使者が来る事を。




