第285話「街一番の宿……見かけはホーンテッド〇〇だった……」
ディズニー行きたい……そう思っていたら……宿泊ホテル思いつきましたw
15時のおやつ話ではありませんがw(*´Д`*)甘味くれーー
僕達は案内されるままに宿へ向かう。
大通りを城門方向に進むと一際大きな建物が見えてくる。
一つ一つがそれぞれ独立した宿の建物の様に思えるが、どうやらここが目的地の様だ。
十字路を挟んで4棟も宿が建てられていたが、それ全てがその一族の宿らしい……相当なやり手の夫婦の様だ。
問題はその宿の作りが独特で、遊園地のホーンテッドナントカの様だ。
夜中に何も出ないと良いのだが……
「いらっしゃいませ!『シャングリラ』へようこそ!私はこの宿の支配人の妻のテルーザと申します。当施設はこの十字路にある全てがシャングリラの宿泊施設になっております。」
「ご案内させていただく部屋は完全施錠タイプで御座いますので、防犯も完璧で御座います!壁もそんじょそこらの安宿とは違い、魔樹の『イービルエント』を使用していますので!防音対策も万全です!」
「お客様は、何人様で何泊のご予定でございましょう?」
やんわりと自慢を挟みつつ、宿のテルーザという女将さんが宿泊日程を聞いてくる。
しかし、僕達の到着を待ちわびていた伯爵が階段から降りてくる。
「おお……来たか、マッコリーニ!大所帯だけに多分こっちに来るだろうと、騎士のアレックスも言っていたので待っておったぞ?」
「そうだヒロ!アレックスから伝言だ。『アリン子は目に付くから先に騎士団宿舎に行っている』との事だ。多分テイラーとシャインに言っていたので後で言われる筈だ。因みに彼等は今ギルドに『ヤクタの件』を報告に行ったから暫くは帰ってこない」
「此処に来るまで、街の衛兵10人に付き添われてな……魔物に騎乗したまま入城するなど前例がないと言われたぞ?ちなみにアレックスはカノープス皇女を早く王の元に連れて行かねばならんのでな……此処で待っていたかったらしいが、まぁ仕方のない事だ」
「積もる話は後だな……部屋の案内が終わったら、騎士団宿舎へ行くといい……向こうも大騒ぎだろうからな!」
「女将!彼等が先程言っていた私の連れだ。マッコリーニに説明を受けて、出来るだけ私と同じ建物内に部屋をとってくれるか?」
「マッコリーニ!では後は任せるぞ?『私の荷物の確認』を護衛にさせてから、エクシアと私の部屋に来る様に。ヒロは先にアリン子を連れてきてからでいい……問題が起きてからでは遅いからな」
「では私は先に部屋に行くので、後で女将に案内を頼めば連れてきてくれる筈だ。宿の関係者とでないと貴族の階には来れないからな?」
かなり一方的な説明であったが、知りたい事は全部混ぜてくれたので話が早い。
僕は先にアリン子を連れてきた方が良いのはわかった。
「すいません、騎士の御二方……騎士団の宿舎まで案内をお願いできますか?」
僕は騎士二人に先導をお願いしつつ、その後アリン子を繋いで置ける場所を女将さんに確認する。
「女将さん……あの見かけは大きな魔物ですが、馬と同じ位大人しいトンネルアントなのですが……宿の何処に繋げておけば良いですか?」
「あ!あのアレックス様が乗っていた魔物は……では……」
「僕テイマーなんですよ……姫の護衛で付き添わせたんですよね。馬より知識レベル高いし、何より攻撃力も防御力もあるので」
事前にアレックスから説明を受けていた様で話は早かった。
馬専用の屋根付きの納谷と、何台も馬車が入る広い倉庫があるのでどちらでも良いという事になった。
折角なので馬車の側に入れさせてもらう事にした。
馬を間違って食べちゃっても困るからで、流石に馬車が食べられることは無いだろう。
木製の馬車だけにキノコの苗床にならないかは心配だが……
周りを見回すが、ヤクタ元騎士団のメンツは居なかった。
まぁ当然だろう……お咎め無しとされる理由はないし、本人はまだ捕まった様子はない……それだけに今は、衛兵にコッテリと事情聴取をされている事だろう。
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騎士団宿舎に行くと、何故かアリン子と騎士達が打ち合っていた。
僕はビックリして駆け寄るが、どうやらアリン子が暇だった様で騎士達に稽古をつけていた様だ……
アリン子の攻撃は寸止めであった様だが、手数と攻撃パターンそして何よりブチかましが脅威なので、ブチかましは文字通りぶっ飛ばされているので当たっている以上、寸止めの意味が有るとは思えない。
まぁ鉤爪で切り裂かない様に……と注意したのだろうが、騎士達は笑顔で接しているので相当訓練にはなった様だ。
その問題の騎士団宿舎があるのは当然、王国騎士団なので城門の中だ。
騎士団長の馬に跨りゆっくりと走らせる。
正直乗れる様になった事はなったが、勢いよく走る事はまだ出来ない。
パッカパッカと歩くぐらいなので、進むスピードに大差がない……全身筋肉痛になるので寧ろ酷い位かもしれない。
「アリン子殿のマスター様。お疲れ様です!この様な魔物を使役されるとは……どの様な腕前であれば成せるのか!是非お手合わせを!」
何故だろう……アリン子を引き取りに来たのに、脳筋はこうやって無理を言う。
「いや僕、メインは剣じゃなく魔法使いなので剣の腕はそれほどではないです。と言うよりこの間やっと銅級に上がったので実力はゴブリンがやっとです」
そう言ったが、体育会系のノリは伊達じゃなかった……『一度だけ!』と泣き付かれて諦めさせる為に『魔法あり』でならと無茶を言ったら即答で『模擬戦』をやる事になった。
獲物は『木刀』なので変に受けなければ死ぬ事はないだろうし、寸止めしてくれる筈だ、きっと!と思ったのが甘かった……その考えなど無駄だった相手は典型的な脳筋だ……
「うりゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「ブン!ブン!!」
「まだだー、ふん!!薙払いに見せかけて!からの………」
凄い勢いで剣を繰り出すので、バックステップで避けるのが大変だ。
相手は騎士ではなく『見習い』だった様だ。
攻撃が荒く『魔物』向きの動きではない、距離を測り隙を窺うので非常にやり辛いのだ。
姫を迎えに外に出ていたメンバーではなかった様で、そもそもアレックスが引き連れていた騎士は外では兜を被って居たので判別が付かなかった。
今目に前にいるのは、騎士団長に憧れる見習い君達だった。
食用オークの攻撃の方がヒヤヒヤする物があったので、彼等の攻撃は辛うじてかわせている。
「魔法を使って構いません!稽古なので多少の怪我は覚悟の上です!うりゃぁぁぁ!」
僕はひとまず相手の言う通り魔法を使う事にした。
言い出したのは『彼』だから悪く思わないで欲しい。
だが万が一を考えて、狙う場所は『地面と木刀』に絞る。
「うりゃぁぁぁぁ!」
「ウォーターバレット」
彼は毎回叫びながら飛び出そうとするので、そこを狙って地面を窪ませる。
五発のウォーターバレットを地面に撃ち込むと、足を取られてすっ転ぶ見習い騎士。
機を逃さず顔めがけウォーターを貼り付ける。
「ウォーター」
「ガボ!ゴバゴバゴバ……ガボガボ!!」
転んだところで急に水責めに遭いパニックになり混乱に飲まれる騎士見習い。
僕はそれを解除したところに木刀で首元にチョンと触れると、彼は意味を察して『参った』をする。
「何故手加減したのですか!見習いと言えども騎士です!痛みを乗り越えて………」
手合わせした見習い騎士が口惜しそうに食らい付く……ならば体の一部がなくなっても良いなら最小の魔法でもぶつけてみようか?と言おうと思ったが、一人の騎士の発言で緊張した空気に様変わりする羽目になる……




