第271話「因果応報、虫けらは虫の餌に……」
おはようございますDEATHっぽ(°▽°)
今日はいい天気〜
もう13時です……外出したーい!
でも……できないから洗濯(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ざぶざぶ
村からなんとか出ることができたヤクタ男爵一行は、追手が来ない事を確認しながら出来る限り帝国領方面へと向かう。
誰も置いてきた騎士の事は口に出さない。
既にどうなっているかなど理解できてしまう。
昨日までどうやってこの男爵の元を離れてから、上手く伯爵に取り入って男爵の私財と騎士団の編入をお願いしようか考えていたが、よくよく考えれば既に遅いと言うのは誰にだってわかる事だ。
王様への献上品を襲撃したのだ、早馬なり伝書鳩也を使うなど目に見えている。
悠長に村への移動時の強奪などを考えずに、初日にメイドの付き添いで一緒に行き荷馬車を奪い姿を晦ませれば良かった……と後悔しかなかった。
彼等は自分の家族を助けたいなど考えてもいない部類の人間で、自分勝手の具合が飛び抜けているのだ。
此処で方向性の違いから内部分裂が起きてしまう……騎士が言った一言が原因だった。
「男爵様!此処は我々が『私財』を取り返して参ります。そしてその荷馬車を帝国領まで輸送します。今この人数で移動すれば逆に怪しまれます。」
「なので男爵補佐の部隊と私財奪還班に分かれて移動しましょう!4、5名の騎士であれば怪しまれる事も無いですし、村で冒険者装備を買えば誤魔化しも効きます」
男爵は『私財奪還』の言葉が非常に魅力的に聞こえた。
しかし、此処から先野営の担当にも人員が必要だった……5、6名の騎士に減らして昼も夜も寝ないで帝国領など行けるはずもない。
金銭に目がくらんでまともな判断が出来ない男爵に変わって、その事を言わねばならんと声に出すターズ。
「それはならん!これから先数日かかる距離である。魔物との戦いも控えているのだ!それに夜の見張りはどうする!?此方もだが奪還部隊は寝る事さえもままならんぞ!」
もっともな事を言うターズに対して、帰る気のない騎士は極め付けのことを言ってしまう。
「万が一今の状況で『帝国領』へ渡ってみてください、どうなるか分かっていますか!?騎士団長殿は!『私財を全て失った』ヤクタ男爵様は『いい笑い物』です。」
「それどころか、路銀さえ儘ならない旅になりつつあるのに、爵位や権力を得ても『元手』は一銀貨も無ければ何が出来ましょう!?私の言い分と騎士団長の言い分、どちらが今後大切になりますか!?」
「片や頑張ればどうにかなるでしょうが、伯爵や王の手にヤクタ男爵の財産が渡った場合二度と男爵の手には『戻らない』のですよ?万が一伯爵の所へ投降していても、夜中のうちに荷馬車を持って逃げる事は出来ましょう!」
「命をかけると言う意味では此方の方が分が悪いのです!それを騎士団長はお分かりか!」
物は言いようでである……帰る気がないのだなんとでも言える。
そう騎士団長は言いたかったが、それを言ったら分裂してしまう……だからこそ次の手をと考えていたら、男爵が命を出してしまった。
「よく言った!今からお前が『我が私財の奪還部隊』隊長だ!無事に帰ってきたならば、第二騎士団長の座をお前にやろう!しっかりこの任務こなす様に!お前が頼れる仲間を連れて行くが良い!」
「ただし、申し訳ないがお前を含めて4名の奪還部隊となる。ターズの言う事もまた然りなのだ。なんとか帝国領まで行かねば全てが水泡に帰してしまう……大変な任務だが頼んだぞ!」
ターズが上手く話を纏めようとする間も無く、金に目が眩んでいる男爵は許可を出してしまう。
「では!我々騎士4名が奪還部隊として荷馬車の行方を探してきます!」
そのメンバーは予め厩で話していたと思われるメンツだった……男爵は帝都まで戻る路銀の足しにと金貨50枚が入った袋を手渡す。
奪還後は積んである私財の中から、旅費を工面するようにと申しつけて送り出してしまった。
暗闇に消えゆく騎士4名に声も掛けられずにいたターズ。
しかし、少しでも私財が取り返せるかも知れないと喜ぶ男爵は、逆にターズに対して怒りを覚えていた。
理由は簡単で『奪還作戦』に反対したからだ。
「皆の者行くぞ!ターズ!お前は事あるごとに目立とうとしているな!少しは他の者をみて真似をして見たらどうかと思うぞ!今回の『奪還作戦』は特にな!これはお前が間違っている!」
ターズは怒りを覚えたが、もはやこの状況下選択肢など一つも残されていない。
帝国でヤクタ男爵に罵倒されながら今の地位で頑張るか、この国で打首にされるかしかないのだ。
ターズは一言も発さずに馬を出す……もはや猶予などない。
敵など全く対処できる状態でなくなった……人数不足で本来の騎士団の役目である男爵の身を守ることなどもできない。
そして連携で魔物を倒す事も困難だ。
このヤクタ騎士団に残された手は、もう逃げるだけになってしまった。
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「いやー!上手くいったな!これで伯爵に取り入って男爵の私財の何%か貰って騎士団編入をお願いすれば安泰だな!俺達のために金貨50枚もくれるなんて太っ腹だな!」
「俺の説明が良かったからだろ!感謝しろよお前等!あそこから連れ出さなかったら終わりだったぞマジで!ターズと言い『あの二人』と言い、残るとか意味わかんねーよな!金が無ければ帝国領で何もできねぇっつーの!」
「「「ガハハハハハ」」」
彼等4人は男爵とターズを馬鹿にしながらも一路、王都とジェムズマインを結ぶ街道を目指していた。
王都側からジェムズマインに向かえば伯爵と逢えると思ったのだ。
大きな篝火を焚いていたので遠くからでも夜であれば、明るさで分かるだろうと4人で話し合った結果決まった。
目的は騎士団編入だ。
もう既に騎士団員が到着していれば、その積み荷を条件に入るつもりだった。
素晴らしく厚かましいが、それが罷り通ると思っている時点で救いようの無い脳味噌の持ち主だった……中身が完全に腐ったレモップルでも大差ない筈だ。
「それにしてもターズの奴は最後まで使えないよな!あれだけ男爵に甘い蜜吸わせてもらって、メイドを平原に放置しただけで心入れ替えるとか……見殺しにしてもう遅いっての!」
「だよなー!奴隷なんかまた買えば良いんだよ!所詮奴隷じゃないか!俺達とは格が違うんだ!」
「「「「ガハハハハハ」」」」
彼等が大笑いをした瞬間地面の至る所にヒビが入る。
当然この周辺はトンネルアントの縄張りだ……上を馬で走ればすぐに出てくる。
「くそ!蟻の巣だ!山程出てくるぞ!飛ばせ!」
「こんな状況になるんだったら、もっと早く逃げるべきだったぜ!」
「同感だ!」
そう言って馬を全速力で走らせようとしたその瞬間、足元が流砂のようになる。
「ガチン!ガチン!シュー!ガチン!」
流砂の真ん中に現れたのは、蟻地獄をトンネルアント並みの大きさにした魔物だった。
蟻がいれば当然蟻地獄も存在しておかしくない。
「な!何だよあれ!」
「くそ!う……馬が足を取られて……進めねぇ!」
「上からも蟻の群れがくるぞ!ヤベェ!」
「嫌だ!こんな所で生きたまま喰われたくない!男爵付きのメイド共みたいに生きたままなんて絶対嫌だ!死にたくない!」
生きたまま喰われたくない……と言った騎士が騎乗していた馬の足が、蟻地獄の大顎によって切断され身体が砂に投げ出される。
彼はなんとか大顎を前転してかわすが、伸びて来た触手に脚を刺されて倒れてしまう……そして生きたまま喰われない代わりに、身体の内部を溶かされた。
消化液を注入してその後に捕食するのが『蟻地獄』だ。
相当の苦痛の様で仲間に助けを求めていたが、全員彼を助ける事などできない。
攻撃方法も無ければ彼を治す手段さえ無い。
その上、馬が倒れて暴れた際に自分の上にのってしまい、身動きどころかどんどん馬の体重で砂に埋まって行く……
その夜多くの蟻が蟻地獄に捕食されたが、蟻地獄が人間を捕食した形跡はない……小さいので砂に生きたまま埋まってしまったからだ。
彼等の過ちは来た道を帰るのではなく、金の為にわざわざ新しい道を選んだ事だ。
先程ターズが魔物の事を言ったのに、何も学習していない証拠だった。
彼等はこの先もずっと誰に見つかる事もなく、存在さえ知られず弔われる事もなく蟻地獄の砂に埋もれたままになる。




