第191話「一枚も二枚も上手な伯爵」
今日は6:00には間に合いました!
ちょっと他の話は修正せねばなのででき次第順次掲載になりまーすw
(๑╹ω╹๑ )すり合わせ失敗ちぅ(笑)
伯爵は魔法の素養があるのは先程の魔力チェックで分かったので、念の為十分注意する事にした。
受け取る前に迂闊に『鑑定』など怪しい真似をすれば、所作で見抜かれないか心配したのだ。
爵位を持っているのだから、下手すればお抱えの鑑定士などもいる場合さえある。
そうなれば似通った行動でバレかねないし、伯爵には新しい餌を用意する事にもなりかねない。
万が一にも鑑定が使えることに行き着いたら『魔法』だと誤魔化せばいいかもしれないが、僕のは『鑑定スキル』である。
根掘り葉掘り聞かれたり、鑑定魔法を使える人が来て鑑定話に華が咲いた場合は確実にボロが出る……そもそも鑑定話など話す気もないが……
それに比べてこの世界の魔法の仕組みをほぼ知らない僕なのだ。
魔法の基礎学は今手持ちの魔導書で勉強中だが、何せ『錬金術』の本での基礎でもある。
他の本も探して読み進めないと、何が『普通』なのかは判別出来ないので、今でさえも話す事には慎重にしないと不安しかない。
その為に話す内容は十分気をつけ、書いてある基礎だけに絞って話したのだ。
伯爵位を賜っている以上はそれなりに博識でもあるだろう、魔法学か何かをしっかり学んでいれば精霊魔法も知っている場合さえある。
鉱山の一件で既に精霊魔法はバレている可能性さえ否めないのだ……
なので注視して結果を出せる『簡易鑑定』程度しか今は使えないだろう。
それだって中身を見るフリか、表表紙を眺めるフリをした方が賢明だ。
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錬金の書(初級・第5巻)
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「…………………」
………絶句だった。
コレは完全な罠だ!受け取った以上開けなければならない……開けずにいたら絶対不自然だ。
そして『読めない筈がない』今手に持って見せていたものが、正に今貰った物の第1巻だからだ。
見比べて仕舞えば同じだとわかる。
そしてコレが何の魔導書かなどは既に『鑑定済み』なのだろう。
僕は今まで基本的なミスをしていた。
『魔導書』と言われたから『土魔法』か、よくてバーム達に聞いた水魔法とばかり思っていた。
伯爵は僕が探し求めていた本を持ってきた。
嬉しいが何やら騙された気分だ。
「はっはっは!なに……君をどうもしようとは思わない。そんな困った顔をしないでくれ。実は君が宝箱を開けて弓とその本を欲しがった時に『何故古ぼけた本なんて?』って思ったのだ。」
「考えてみれば魔法を使っているのだ『魔導書』を欲しがるのは考えが及ぶだろう?だがよく見れば、我が家にある本とそっくりじゃないか!そして思い出したのだよ……『その本』の題名を。だから君が読んでいるのをみて、『君に相応しく最も役に立てる事ができる』と思ったのだ」
「大丈夫だ他言はしないし、君には驚かされてばかりだからな……ある意味意趣返しだ。だがコレからも多分驚かされるんだと思うと楽しくもある」
「ちなみにコレは何処で手に入れたんですか?似たものをどこかで販売はされてますね?」
「それはダンジョン産の物でな、トレンチのダンジョンとは別に『鉱山にダンジョン』が一つ存在する。そこは我がロックストーン家が管理するダンジョンでな我が騎士団の訓練場にもなっている。」
「我が派閥の騎士団は常にそこで戦闘訓練をするのだ。その際に手に入れて帰ってきた物でな、今までの遠征で1冊かしか出ていない。」
「昔王都のオークションで2度ばかり見かけたが、収集家が買っていた筈だ。それ以外は情報がないな。」
「魔導書は価値が高いものは、基本収集家が金に糸目を付けず買ってしまうからな……集めるのは至難の業だと思うぞ!?」
「奴等はいつか自分の親族が使いこなせる日を夢見て買い漁っているんだ。宮廷魔術師団に血族を入れるためにな……」
伯爵の方が僕より2枚も3枚も上手だった……悔しい………。
しかし僕は伯爵からこの本を貰って本当に感謝している。
見かけない珍しい本をプレゼントでくれるなんて太っ腹にも程がある。
まぁ錬金術で何か作れる様になったらめっけもんだと思ってるかもだが……
僕は錬金の書(初級・第5巻) をパラパラとめくって見ていると不思議なページを発見した。
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部位特化ポーション・初級 (再生効果) 『錬金魔法』
効果 欠損部位の再生(目、耳、鼻、指、足)
使用量 10ml
再生 極めて遅い
期間 1天にて再生(再生中、痛覚なし・感覚なし)
使用可能時間 『作成より10時進』
必要素材
中級ポーション1、オークの鼻1、ゴブリンの指1、
ゲイズアウルの目玉1、フォレストウルフの足1、
スライム粘液10、コボルドの耳1、魔石(中)1
『効果説明』
使用後1天をかけて欠損部位が再生する。
再生中は痛覚及び感覚は無い。
スライム粘液による欠損部位保護膜後、皮膚、骨、血管、
神経、の順で再生する。
再生中に接合面から切断時は、切断箇所先の再生効果が切
れる。
切断面から接合面は再生が可能。
切断され失った箇所はそれ以降再生不可能となる。
錬金術レベル
1レベル 50%生成(以降1レベルにつき5%追加生成可能)
9レベル 90%生成(上限)
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1天とは何かと思ったが、多分ニュアンスでは1年と言う意味だろう。
後でエクシアかロズに聞いてみよう。間違っても今は聞けない……伯爵に異世界人とバラしている様なものだ。
ここまでバレてしまっては隠しても意味がないので、伯爵の前だが僕はエクシアに必要素材の項目がこのギルドで手に入るか聞いてみた。
「いやーまいったね!さすが伯爵様だ。搦手でくるとは恐れ入ったわ。ちなみに素材は大丈夫だね……ゲイズアウルの目玉は多分保存と討伐時の難しさから問題であって、多分1個有ればいいくらいかな?」
「そんな物何でだい?って……『それ関係か』………ちょっと待ってな!今言われたもの見繕ってくるよ。」
「ほう……では私がギルドマスターに言って空き部屋を用意させよう。」
「いや……まだ成功するかもわからないんで……宿で作ろうかと……」
「此処でやった方が早いだろ!?万が一失敗しても材料があれば買えるしな……此処なら。後でなにするか詳しく教えろよ?」
そう言ってエクシアは空のコップを持って売店に向かう………材料と言う名の『エール』を買うんじゃないだろうか?
エールを揃えても酔っぱらいしか出来上がらないのだが!?
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僕達はギルドの空き部屋で伯爵と男爵が重要な話があると言う流れを作り、そこにエクシアが呼ばれ僕も連れ込まれるという寸法だ。
鉱山に向かったエクシアが呼ばれて、今日宝を持ち帰った僕も呼ばれるとあれば、王様絡みだと予想が行く様に仕向けた。
結果上手くいき、ちょっとばかりその部屋に籠ることになった。
周りの冒険者はそれを見て羨ましがったが、決していい話ではない。
僕が何かをすれば、大概知り合いには呆れられるのが関の山なんだ………
酒の用意を優先したと思わせつつ、エクシアは酒を片手に何気なく必要素材を買い込んでくる。
エクシアが来てから内側から鍵をかける。
外にはテロルが門番として配置され誰も近づけなくなる……こんな感じで『僕の初めての錬金』が始まる。
当然の如くエクシアはエールの他にツマミも買ってきた……それもエールは2杯もだ……どれだけここに居るつもりなのだろう……