第189話「ビラッツ大失敗!踊るホーンラビット亭の本当の支配者」
おはようございまーす_(:3 」∠)_
ストックから掲載でーすwストック少ないので更新頻度ちょい落ちるかもごめんちゃいw
「皆様方!お耳汚しで申し訳ありません!この私は、踊るホーンラビット亭の支配人『ビラッツ』と申します。今日は実にめでたい日です!銅級昇級された冒険者様に、昇格試験の受講資格を獲得された若き冒険者様!おめでとうございます!」
「我が店の料理長が腕によりをかけて用意した、我が店の自慢の一品を皆様に是非振る舞わせて戴きます!今日は幾ら食べてもお代は一切いただきません!是非腹がはち切れるまでお食べになって明日以降の糧にして頂ければと存じます!」
そう言ってビラッツの店の給仕達が大きな器に盛った肉と、大きなベーカリーバスケットを机に並べていく。
肉は冷めない様にギルドの調理場で保温していた様だ。
いつの間にか初級冒険者のフロアには料理長まで来ていた。
「まじかーーーー!踊るホーンラビット亭の料理長だぞ!あそこに居るのは!」
「って言うかまじで食べ放題なのか!明日の朝飯分も確保して持ち帰ってもいっていいか?ビラッツ支配人!」
「!!構いませんよ!この支配人言った事に偽りは有りません!どんどん店で作って持ってきますので、明日の朝ご飯分が食べれない位今日食べて行ってください!朝の分はそのままお昼の分としてご利用ください!」
ユイナの眉がぴくぴくしている………お肉の消費期限の事だろう………ビラッツはユイナの顔を見ていないので地雷を踏んだ事に気が付いていない………こう言う事に煩いのだユイナは……
しかし口に出して煩いとは言えない僕でもある………
『ダン!!!』
ユイナは皆を黙らせる様に、わざと大きく音が出る様に脚でギルドの床を踏みつける。
「ビラッツさん!美味しい料理は一番美味しい適時が存在します。それに時間を置けばそれだけバクテリアの繁殖につながるんです!食事を提供する店が食品衛生を守れずに店が経営出来ますか!?」
「それと、冒険者も食べるなら『明日一日食わずに済むぐらい食い溜めをしなさい!』消費期限と衛生の関係上『絶対』持ち帰りは認めません!」
「料理長、ちゃんと支配人を教育しろ!アンタは食べ物のスペシャリストだろう!?食材は時に毒になると何度説明すればわかるんだ。せっかく食べる客が明日の昼に時間が経ったもの食べて腹痛を起こしたらどうするんだ!?彼等は魔物と戦うんだ、その意味をわかっているのか?腹痛を軽く考えているのだとすればアンタは料理人じゃないぞ!」
「も………申し訳ありません!!ユイナさん!!ビラッツーーーーー持ち帰りは無しだーーー!!絶対にだ!あの店を継続するなら絶対に彼女の機嫌を損なうな!」
噂の料理長と支配人を叱った事で冒険者が一斉にユイナを見て目をパチパチさせている……しかしミオだけは崇拝の目で見ていた………
そして男爵の妻と娘3人、マッコリーニ夫人と娘のレイカは、3人の言葉など聴かずに一つの机に集まり6人でひたすら食べ進めていた………。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ユイナとビラッツの一件があってから、暫くは大騒ぎの食事会になった。
ギルドの売店ではエールが飛ぶ様に売れて、何度も新しい樽を持ち込む業者が青い顔をしていた。
しかし業者は今日とても運が良かった、料理長から柔らか焼きを挟んだサンドウィッチを業者が貰って食べていたのだ……彼等の給料ではこの肉を使った人気店の料理は決して安い食べ物ではない。
運び入れる時に彼等はそれを無料で好きなだけ食べられた。
食べていると結局ギルドの酒樽はあっという間に空になり、酒業者はギルドから空になった樽を受け取っては、また店に戻り納品に来る……を繰り返して結局はビラッツのサプライズで営業時間外でも働く彼等は可哀想だった。
「おーー!。ヒロこんな端っこで座って何読んでるんだ?何だい?それは?」
「ああ!エクシアさん……酒と肉はもういいんですか?コレはダンジョンからの出土品です」
「ああ!オーク肉は美味かったなぁ!普通に焼くのとユイナが調理するのじゃ…ここまで違うのか!?って思った位だよ!ちょっと食いすぎて運動がてら歩き回ってるんだ」
酒盛りが始まってからビラッツと料理長が結菜に説教されていた、衛生管理と賞味期限、消費期限、腹痛の要素、バクテリアこのあたりを嫌と言うほど叩き込まれていた。
その最中ずっと二人はいい歳こいて涙目だった。
でも気持ちは分からなくはない………食が関わるとめっちゃ怖いんだ……ユイナさん………
因みに彼等が解放された理由は、恐る恐るミオが虎の尻尾を踏まない様に『オーク肉ってまだ残ってませんか?』と聞いた時ユイナは思い出したらしく、調理すべく調理場にすっ飛んでいった。
それを見た、ミオが脱兎の如く追いかけて走り、料理長がミオを見て『!』マークを頭に出して追いかけた………料理長が走ってから少しの間完全停止していたビラッツだったが……
「ビラッツさん……止まってていいんですか?ユイナはオーク肉を焼きに行きましたよ?多分5kgも同じ調理しない筈だから、今から作る物の調理法知っておいた方が……」
と言うと、最後まで聞かずに走り出していた。
「何だい……その変な文字は何って書いてあるんだい?」
「ああ……僕に関する本ですよ。『例の魔法関係』のです。まぁ手に入ってよかったです。今読み進めてますが……」
僕とエクシアのこの会話を静かに眺めている者が居るなど、僕達は思っても見なかった…………
「…………要は魔力を効率よく扱う事で、魔力渦を作ることが出来るみたいなんですよ。その渦を回す事で中身を攪拌することができる様で………エクシアさん聞いてます!?」
「もう何言ってるか、始めの始めで〜あたしゃ〜ちんぷんかんぷんだ!はははははは!!」
「そもそも魔導書だろう?そんな物は魔法が使えない私には何書いてあるか意味さえ分からない。そもそも読めないからな!はははははは」
「エクシアさん……そこは威張る場所じゃないです……」
「ほう!ヒロ殿はやはり『魔術書』を読めるのだな?」
僕達の話に混ざってきたのは伯爵だった、男爵を横に伴い後ろには執事が控えていた。
執事は既に色々と仕事を終えたのだろう、先程出て行くのは見たので今ここに居ると言うことはもう終えたからだ。
マッジスと同じ様にかなり優秀なのだろう。
「それでそこには何が書いてあるんだ?」
男爵が訊ねてきたので、この本に書かれた魔法の基礎にあたる当たり障りのないことを話す事にした。
「まずですね、魔法を使う基礎は全身から魔力の伝達を感じる必要があると言う事です。この世界の生き物は魔力が最低限宿っているんです。それを如何にうまく使うかが魔法使いになる元と言いますか……要は訓練次第で実は誰でも使えるそうです」
「!!!」
男爵は過剰反応をする……多分、水精霊を信仰する一族の為だろう。
かなり精霊や魔法に傾倒している感があるからだ。
「男爵様、詳しくはまた今後でお酒が入ってない時にしますね?」
「そ!そうだな!是非に娘達に教えてやってほしい!ちゃんと講師代は支払う!」
「いえいえ!講師代要りません。そもそも僕が魔法を教えられる素質があるとも思えないので……と言うか僕は教え方も知らないので、概念の説明程度しかできません。この本に載っている内容の」
そう言って魔導書を男爵と伯爵に見せる。
どうせ魔法が使えないのであれば、エクシアの言っていた様に何が書いてあるか分からないはずだから。