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第150話「2人目の精霊使い『エクシア・フレンジャー』」

昼間分の掲載でーす(๑╹ω╹๑ )


良ければ良ければ読んでくださーい。


 怒りが頂点に達してしまったエクシアの腕から焔蛇が、主人の感情に伴い具現化してしまい、炎の精霊の持つ「スキル解放条件」『憤怒』を起こした事で新しいスキルが発動したのだ。



 炎の精霊はどの階級の精霊でも『強い怒り』に反応する。



 通常は炎を用いて契約した力を借りるが、実は別の化現させる方法が存在する『対象に対する憤怒だ』



 しかし通常は開示されることのない条件なので取得や行使には至らないケースが殆どで、普通の怒り程度では得ることも使う事も出来ない方法だ。



 怒りが強ければ強いほどそれを糧に化現する事が可能な方法で、憤怒のあまり対象全てを自分の使役する精霊で燃やし尽くす事を意識する必要がある。しかし人の身でそんな事をすれば、後悔から暴走するのは目に見えている。



 普通はそこまでプッツンと出来ないし、怒りの最中に使役している精霊を意識出来ないものである。



 なので取得には至らないが、今回の対象であるエクシアは違った。



 父が魔物に殺された怒りも内包しているのだ、そして父は人を守る為に戦って死んだ……その守るべき対象の『人間』が自分の大切な家族である『ギルドメンバーを身勝手な理由で死地に送った事実』コレで完全にブチギレた。



『イーザに対する憤怒で、それを放置したギルドマスターのテカーリンに対する憤怒でもある。』



 前から彼女に対しては多数のクレームが出されていたのに『辞めさせなかった』



 簡単な話だ…ギルマスはこの女の更生を第一に考えて、命を張る冒険者の存在を軽く考えている証拠だとエクシアは判断したのだ。



 冒険者は危険に身を置くので、冒険の中死ぬ事は仕方ないとエクシアも考えているし、信念の元父は死んだ。



 しかし、ギルドの受付嬢が冒険者の死に場所を自ら進んで用意するのは間違っている……冒険者が死地に足を踏み込む場合は自ら選んだ結果であるべきなのだ。



 自分の力量を把握して適切な経験を積むコレが正しい冒険者であり、適切でない場所に行こうとする冒険者を止めさせるのは受付嬢の役目の一つでもある。



 彼女の場合『自分の思い通りに』したいだけで、周り等どうでも良いのだ。



 ギルマスは単純に「窓口」を辞めさせて「掃除係」でも「販売員」でもさせておけば問題ない筈だ。



 支給される賃金に差はないからだ……異世界では働いた時間=給料なので、日払い制だ。



 受付嬢としてプライドがあり離れたくないならば、自分から辞めれば良い……それだけだ。



 そもそも受付嬢のプライドがあるなら、もっとまともな仕事をする筈だが……



 そして彼女がどうやって炎を連想したか…はギルマスの存在だった。



 エクシアは前に激怒してギルマスを焔蛇で生焼きにした事があるのだ……辛うじてその時はゲオルの水魔法で事なきを得たが、エクシアはこのギルドから依頼を受けるのを止め、この頃に仲間を集め自分でギルドを作った。



 その時彼女はこう言った『また同じ事をしたら今度は遠慮などしない!灰も残さず焼き尽くす!!」



 ギルマスは以前一つの村を『見捨てた』のだ……エクシアの母が育った『村』だ。



 両親が既にいないエクシアには大切な場所だった。



 エクシアのその様を見たギルマスもサブマスターも、ただ謝るしか出来なかった……また同じことを繰り返したのだから。



 前回もギルド職員の暴走、今回も受付嬢イーザの暴走。そして前は『母の故郷』今回は『彼女の仲間』だ…これはブチギレて当然だ。



『エクシアさん!呑まれてはダメ!還ってきて!』



 突然の頭に語りかけるカナミの声で我に帰るエクシア……カナミは同じ火属性の精霊を過去に使役していた。



 ある意味今でもエクシアと同じ力を持っているのだ。



 そして力関係では元S級冒険者のカナミが完全に上である……冒険者としても精霊使いとしてもだ。



 彼女の言葉は精霊の使う力を使ったもので、上下関係の厳しい精霊には重く鋭く響く。



 このまま『憤怒』に呑まれた場合、エクシアはカナミと同じ過去を繰り返し『この街全部』を焼き払うだろう……それがわかるのはカナミだけだった。



 そして生き残るのは『カナミとエクシア』だけだ…その結果エクシアは『壊れる』……カナミが通って来た道だから彼女はわかる……人はどう強がってみてもその惨状を見れば絶対に強くないのだ。




『カナミ有難う……アンタのおかげで自我を保てるよ……この状態で話せるのはアンタのお陰だね』



『この子が言ってる……カナミの子はこの世界(現世)で貴女を待っている……あの日からずっと貴女の帰りを……それを伝えてと言われた…』




 カナミはその言葉に目を見開くが声には出さないで、ただただ涙を浮かべ震えていた………精霊は嘘など無駄な事は言わないからだ。



『カナミ……貴女のおかげで今はこの炎蛇(子)とこれまで以上の繋がりを感じる……こんな馬鹿なことしていないで早くヒロを助けないと!って怒られたよ……』



 エクシアの身体は全身が炎で出来たラミアの様な格好になっていた……チャンティコは火の女神であり山神でもあった。



 彼女が使う焔の蛇はチャンティコのもう一つの姿だった。



 エクシアは深く深呼吸をすると元の姿に戻っていく……カナミの言葉で冷静になった彼女は、もう自在にその力をつかえる様になっていた。



 それもこれも全てカナミの言葉で冷静になり、チャンティコのもう一つの姿……焔蛇との絆を確立できたからだ。



 しかし周りは突然静止したかと思うと元の姿に戻ったエクシアから目が離せないでいた……彼女は初めに怒鳴ってからは、突然静止してから微動だにせず『何も言葉を発しなかった』からだ。



「エ…エクシアさん……今のは……」



 ミオが恐る恐る聞くと



「精霊と一つになれる様になったみたいだ。詳しくは言えないが……今はすごい複雑な気分だ………テカとイーザを殺す気だったよ……そのあと多分この街全てを……あたしゃ…もう少しで彼奴らと同類になりそうだった……いやそれ以上の酷い事を……」



 途中まで言いかけた言葉をエクシアは慌てて呑み込む……『この場に相応しくない』言葉だからだ。



 カナミがあの時助けてくれなかったら彼女はこの街を破壊して焼き尽くし、そのあと自分自身が完全に壊れていたのは彼女が一番知っている。



「あんた達は勝手をやった…テカは身内のため良かれと思ってんだろうが……今のやり方だったら仲間の命を預かるギルマスとしてギルドも仲間もここの街には置けないよ!」



「テカ…いや…ギルドマスター・テカーリン…アンタはアンタの『仕事仲間の為』に、『また』この国に居る『誰か』を切り捨てようとした!…今までそんな気がなく、結果的にそうなったにせよ……周りは『はい!そうですか!』じゃ済まないんだよ。いい加減気がつけよハゲ!」



「周りの冒険者は文句があっても手が出せないが、アタシは違う!こんな馬鹿のために誰かが傷付くギルドなら無い方がましだ。無くなれば冒険者は誰も傷つかないからね!ギルドが無くなった場合の街の住民?しらねぇよ……他の街にでも引っ越せ!ってんだ……他所の方がまだマシだ。」



「イーザ……アンタは自分のことが大好きなんだね?でも自分しか愛せない奴を一体誰が愛すんだ?誰が慕うんだ?周りもっとちゃんと見ろよ!アンタは何したいんだ?生きる者の!護る者の邪魔をするなら他所へ行け!アタイ等の迷惑だ!」



「まぁアタシも同類になりかけた……馬鹿を仕出かすところだった!アタシも人のことは言えない……だからお前達とは違うと言うところを見せてやる!」



「それと、あたしはアンタ達に礼を言うよ!あんた達のおかげで今見せた新しいチカラも手に入った。だから鉱山に行って宝石食いの魔獣ぶっ潰して、必要なものを全部取り返してくる。」



「お前達がこの件でどう考えるか……此処の冒険者どもはこれからどうするか……ひとまず魔獣をぶっ倒して全て終わらせる……話はそれからだ。」



「すまないエクシア……もっと早くに責任を取らせるべきだった……本当にすまない……」



 ギルマスが謝罪してエクシアが冷静さを取り戻した時、慌てた顔つきで飛び込んでくるジェムズマインの領主



「テカーリン!どうなっているのだ!?正門がゴブリンに襲われて怪我人が出たと報告を受けたぞ!ジュエルイーター討伐で衛兵が居ないから周りの魔物には注意する様に言っておいただろう!」



 大激怒で入ってくるジェムズマイン領主だが、ほぼ同時に別の入り口からウィンディア男爵までも陽気な大きな声で飛び込んでくる。



「ミオ君!どうだね?ヒロはもう帰ってきたか?私達は来るのが流石に早すぎたか?いやー彼を驚かせたくてね!彼は有望株だろう?具合を聞かせてくれ!はっはっは!!」



 一瞬静まり返る現場……大激怒のこの街の主に、これまでに無い笑顔の男爵。



 何が起きているか把握出来ないギルマスとミオはアタフタし始める。

 


「ギルマス!何処だ!あれだけ言っておいたのに!どうなったのか今すぐ報告を……………ウィン?何故ここに?」



「ミオ君そこに居たか!おーエクシアも一緒か!それにヒロの仲間の皆も居たか!まさか彼はもう帰……………ん?………ザム?」



 大激怒だった領主はウィンディア男爵を見るなり和かになる、ウィンディア男爵は領主を見るなり『ザム!帰ったのか!』と喜んでハグし合っていたが、皆の目を気にしたのか途中から『ザムド伯爵』と呼び方を変えていた。

 


 ウィンディアの後ろには、三姫と妻にテロルもいて順番に伯爵へ挨拶をしていた。



「ザムド伯爵様、ウィンディア男爵様!お話の最中ですが急を要します……お話を遮る事をお許しください。大変申し訳ありません…ウィンディア男爵様……鉱山へ向かう貴族専用のルートの使用許可を今日だけ私共に頂けませんでしょうか!手違いでヒロが……鉱山に……」


「な…なんだと!どういう事だ!?鉱山だと?ギルドマスター!前もってあれだけ注意する様にいておいただろう!!」



「えっ?アナタ……鉱山といえば連合討伐の場所ではないのですか?」



「お父様!ヒロ様は?ダンジョンじゃないのですか?無事なのですか?」



「「お父様ーーー!!」」



「ウ…ウィンディア男爵様……申し訳ありません……コレは全て私のせいです……」



 エクシアのその発言でウィンディアが激昂すると、突然の有様にザムド伯爵はとてもびっくりした様に口を開けていた……男爵一家も心配でならない様で伯爵様と話し中なのにエクシアと夫の話に割って入る。



 彼等は和やかな空気から一転することになる。


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