第1147話「エルフ国の危機・閑話……其々の神3 」
本日更新分最後death\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/っぽっぽっぽ!
『閑話……それぞれの神・月の姫モア編』
『真月の教団』
「何処に……エルフ族に伝わる月の姫は何処に消えたのだ!!しっかり調査したか?放置などできぬ問題だ……」
「司祭達よ!!このままではこの世界は終焉を迎えてしまうのだぞ?」
「大司教様方……申し訳ありません!!未だに行方がわかりません……」
大司教の一人はその報告に『何を呑気に!!』と声を荒げる……
「今の状況を分かっておるのか?終焉を齎す始祖の誕生なのだぞ!?ダンジョンに居る紛い物の奴等とは訳が違うのだ!!」
「そうだぞ司教!!各種族に1人現れると言う……始祖が……また新たに一体など………黙って見過ごせる筈……」
そう言った大司教の2人は、『パシィン!!』と言う音ですぐに黙る。
この場を治める枢機卿の1人が『黙れ!』と合図をしたからだ。
枢機卿は大司教の慌て様を見て『その重要性が理解できないわけではない』しかしその判断を下す前に慌てふためくなど……愚の骨頂でしかない。
だからこそ、『黙る様に』合図を送ったのだ。
「司教よ……話すが良い。報告を聞こう……」
枢機卿の言葉に大司教の一人は『何を呑気に……』と口走った瞬間、彼の姿が蒸発するかの様に消える。
枢機卿の扱う『転移術』で遥か彼方に『左遷』された証拠だ。
飛ばされた大司教はもはや『遺体』でしか戻れない。
それが理解できた大司教は固く口を閉ざす。
「すまんな……司教。口ばかりの大司教は『戦地で文字通り……のんびり戦うこと』になった。口喧しいのは居なくなった。さぁ話すが良い」
「我々が到着した場所は……月の戦士団ではなく太陽の戦士団が多数倒れており……」
「だから何故そうなった!!」
つい大司教は司教の報告を聞いてそう言葉を荒げるが、枢機卿とて怒らぬ理由がわからぬわけでもない。
その言葉はあえて聞き流していた。
大司教は咳払いを数回すると、深呼吸をして質問を開始する。
「『ゴホン………』司祭よ取り乱してすまん。ギルドに届いた手紙では月の戦士団が向かった場所であろう?して………問題のスゥ姫は…………太陽の教団が知ったならば大事なのだぞ!?」
「は……はい……ジェムズマインに潜ませていた魔導師が間に合った様で……上位魔導師複数名にて転移魔法を使いました。救出後は問題の地より近隣の……ローズガーデンに……戦士団が自ら運んだと」
「ローズガーデンだと?あそこは以前にも悪魔の目撃例が報告された場所ではないか!?何故よりにもよって宿敵が発見されたと言うそこに…………」
「姫の出血が酷く……身体へかかる負担を考慮すると、遠距離転移が出来ない有様だったとの報告で……。運良くエルフ達がパニックしていたので『スゥの力』と言う形でそこに落ち延びたと……結論が落ち着いた様です……」
大司教の口調が厳しくなっていく中、枢機卿は黙って話を聞いている。
思ったより事態は深刻である。
大司教が怒って言葉を荒げる理由も分からないではない枢機卿は、次の質問をする様に大司教を見据える。
『大凡の回答は想像がつく』と判断したからだ。
しかし枢機卿が解せないのは、連絡内容の不備があったからだ。
「して!エルフの報告が間違っていた理由は?」
「エルフの報告には問題はありませんでした……。問題があったのは寧ろ人側で………ギルドの受付嬢に問題が……エルフを毛嫌いしていた模様です。我々が依頼した模写に実は不備が………」
それを聞いた大司教は頭を抱える………
思っていた以上に、仕事を託した司教達が無能だからだった。
「そもそもお前達は何故模写を依頼した?……もっと確実な手があるだろう?街営ギルドに何故人員を潜ませなんだ?……中に潜ませればそもそも良いではないか!!」
もっともな事を言う大司教に、報告をしていた司教は更なる問題発言を上乗せする。
「あの地は……太陽の教団が既に人員を送った地でありまして……我等は遅れをとりました……と言うか……」
「ええぃ!!もう報告はいい……お前に任せたのがそもそもの間違いだ!!お前は修道士からやり直せ!!この大馬鹿者が!!」
「申し訳御座いません!大司教様!!………」
我慢の限界からか、大司教はつい枢機卿の前で大声を上げて司祭を叱責するが、枢機卿からのお咎めは無い。
大司教は代わりの司祭を呼ぶと、新たなる任務をその者に言いつける。
「いいか……お前達には重要な任務を与える!!魔力の痕跡を追える物をその地に送らせよ!問題となったエルフが絡んでいるか、それとも他の輩の横槍か……徹底的に調べ上げろ!」
「はい!大司教様……」
新たな任務を受けた司教は、数名の神官戦士を伴い部屋から出て行く。
しかし入れ違い様に、別の司祭が更なる報告を持ってきたのだった。
「枢機卿様方並びに大司教様方に………も……申し上げます………覚醒の壁画に………異変が…………」
「か……覚醒の壁画にだと!?……どの種族だ?まさか……」
「まさか……渦中のエルフ族ではあるまいな?……よもや……その封印の聖火が消えたと申すなよ!?」
多くの大司教が驚く中、最上部の祭壇に居た大司教の二人がその声を荒げて質問をする。
「大司教様……そのまさかで御座います。場所はマーナガルムの壁画……新たなる始祖の予兆にございます!エルフ種における……変質………エルフ族変質によるヴァンパイア始祖の誕生です………」
その言葉に、流石の枢機卿も慌てた素振りで聞き返す。
「エルフ族を象徴する……マーナガルムの壁画が崩落したと申すのか!?人族を象徴する、九尾壁画の崩落よりまだ444の月日しか経過しておらんのだぞ!?」
「はい……枢機卿様………ライカンスロープ種を司る白虎……人種人族を司る九尾……そして今回は……エルフ種を象徴するマーナガルムにてございます……」
その言葉に枢機卿は『大司教達よついて参れ!今から青の枢機卿がこの目で確認する!!』と言う。
◆◇
「青の枢機卿……些かこれは困った事になったぞ………」
「ああ……赤の枢機卿………とうとうエルフ種から始祖が誕生した……」
その言葉に司祭達が不安のあまり言葉に出す。
「枢機卿様……未熟な我等にお知恵を……今何が……どうなっておるのでしょう?」
下位の司祭は、枢機卿に縋る様にその言葉に耳を傾ける。
真月の教団とは月を祀る信奉者の集まりだ。
だからといって、月に関する生き物を讃えるわけでは無い。
彼等教団の存在理由は、魔力の源であると言う月を信奉しつつ、各種族に紐付けられる聖獣を信仰して後々の世に引き継ぐために有る。
しかしそれは面の顔であり、裏の顔は吸血鬼の始祖たる王や女王をこの世に誕生させない為に力を注ぐ秘密教団であった。
ヴァンパイアとは当然だが吸血鬼達の事である……
主にヴァンパイアは闇の眷属と知られて、極稀にその存在を確認される。
しかしその多くは、実のところ紛い物だ。
穢れから生まれたヴァンパイアの始祖は主にダンジョンに生息し、その為ダンジョンによって管理されてしまう。
それは冒険者に倒される存在であると同時に、ダンジョンの試練であり同時に罠でもある。
ダンジョンのソレを倒した者は予め計画された宝を持ち帰る。
その事は人々に称賛され、彼等討伐者によって触発された冒険者がそのダンジョンへ潜り、尊い命を落とす。
いわば、欲望を更に連れ込む為の広告塔になってしまう訳だ。
しかしその元になった『主』は間違いなく居る。
誰もそれを理解できはしないが、ヴァンパイアの始祖がダンジョンを徘徊した形跡があるからこそ、そのダンジョンのコアは紛い物だろうが、その力の痕跡を手に入れることができたのだ。




