第1120話「命運が尽きた悪辣貴族達の顛末・後編」
3話目death!\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/
頭痛がひどいのです_(:3 」∠)_
前回までのホニャララは省略ですー(ヾノ・ω・`)ムリムリ
僕はあえてチャタラーには答えず、計画を実行に移す……
「ゴールドマン侯爵様……一体全体なんの真似ですかな?」
「何の真似?さて私は何もしておらんぞ?単に『我輩自慢のマジックアイテム』を掲げておるだけだ。コレが欲しければその首と交換してやらん事もないぞ?……とな?」
その意味深な言葉に、王政派の貴族は何かを理解した様で民衆を掻き分けて前に行こうとする。
しかしお膳立てはまだ完了してないので、僕は話を前に進める。
「ほう……そのアイテムが私の記憶違いでなければ『硬く凍る冬の宝寿』な筈ですが?」
「ほう……このマジックアイテムにそんな名前が?」
「何を言っておられますか?侯爵様の持ち物なのでは?」
僕がそう問いただすと、『ああ!如何にも……私の物だが?多く所蔵する中のひとつだ。名前など知らんのだ!欲しければゴーレムと交換してやらんでも無いぞ?其方の言う通り安くはない故、ゴーレム全部とだがな?どうせゴーレムなど、また作れるのだろう?』と言う。
侯爵は素晴らしいガメツさだが、聞きたい言葉は話させた。
「ならば再度問います。その品は錬金術師フローゲルが必死の思いで『氷姫カサンドラ』から引き離し、血族の封印で漸く管理できる物を……何故貴方様が?それも……この様な危険な場所に持ってくるなど……気がふれたとしか思えませんが?」
僕は恐怖の対象として、氷の魔王の部分を少し柔らかく言った。
何故ならコレから登場するカサンドラには、化現できる最大出力でお願いするからだ。
僕はそのまま欲しい言葉を誘導する様に、言葉を選んで口にする。
「彼女の本体を封印できたから『高位マジックアイテム』としての記録を持ちましたが……貴方はフローゲル家の血筋ではないでしょう?」
「はん!そんな値打ち物だったか!ならば尚のことだな。ゴーレム全騎士とその首三つ……ダンジョンで手に入れた財宝で『とんとん』と言う位ではないか?騎士爵テール……うん?」
「そうだぞ!!王国貴族最大派閥の我等だからこそ手に入れられた『至高の一品』なのだ!その価値が分かるなら充分交換に値しよう?」
「何!心配するな……お前達の功労を無駄にする気はない。我々も協力したのは間違い無いのだ。だから我々がそれを持って凱旋したいだけと言う話。それだけの事でマジックアイテムが得られ、王の誉も頂けるのだ!お前達にも悪い話では無かろう?」
けたたましく喚く悪辣貴族の群れにゴールドマン侯爵はしたり顔をしつつ、彼らの言葉を止める様に手を上にかざす。
「これこれ!皆の者……そんなに威圧的にしてはならん!テール騎士が交換しようとしていた気持ちが冷めてしまうだろう?これから我々の派閥に入る、勇ましい女性貴族なのだから優しくしてやらねばならんだろう?仮にもコレからはゴーレムの主、戦場の戦姫と歌われるお相手なのだぞ?」
「「「おお!失礼いしました!全くもってそうでした!」」」
「侯爵様……つい周りの馬鹿者達にこの私も怒りが……『同じ貴族』なのだから『仲間』でした!失敬!失敬……テール騎士爵申し訳ない……歳ばかり無駄にとったのでな」
ゴールドマン侯爵の横にいた貴族がそう言うと、身振り手振りで首や財宝を持ってくる様にジェスチャーをする。
恐らくは『悪い様にする気はない……だから派閥へ入れ』と言う貴族の合図なのだろう。
その様を見た僕は『大きな魚が引っかかった!後は釣り上げるだけだな……』とついついほくそ笑みたくなる。
しかし僕の話はまだ半分だ。
「何か勘違いをされてませんか?」
「テール騎士爵………勘違いだと?儂が勘違いをしてるのか?今一度尋ねるが………儂は何を勘違いしておるのだ?」
「お前この期に及んでまだ何かを申すか?話なら後で聴いてやるはようこっちへ来ぬか!我らは『仲間』ぞ?」
僕は頭を左右に振って『馬鹿の相手は疲れる』と言う素振りを見せる。
「貴様!侯爵様の前で何という馬鹿なことを!!」
「馬鹿に馬鹿だという素振りをして何が悪いのですか?その宝寿は魔王カサンドラを引き寄せる!!彼女の力の源だ!!このダンジョンの主など比べ物にならない程に危険な相手!玄室にあった古文書文献では、錬金術師10名の死をもって漸く封じた相手ですぞ?」
「「「「「「な!?…………」」」」」」
「その上カサンドラは帝国北部のロナ・ウルグスの封印を破壊して解放されたのです!!その生き証人がサイキとシリカで他ならない!!」
僕はそう言うと、サイキとシリカを手で前に押しやる。
二人は突然の事で目が遠泳クロールで泳ぎまくっているが、口は何とか動く様だ。
「さ……最後の錬金術師として申しあげます………あ………アレはもう止められない……人知の及ぶ相手ではありません………既に封印するだけの余力が人族には居ません。何せ……錬金術師は私で最後なのですから……」
「だ……だから私はそのマジックアイテムを侯爵様が持ってはならぬと言ったのです!!それなのに貴方様は、抑えられぬ強欲から無理にわたしから奪い取った!!早く再封印を!!」
一言ずつ言うと彼女達は僕の後ろにそそくさと引っ込む。
しかし帰り際に右足と左足を交互に踏まれて、僕は手痛いしっぺ返しを喰らってしまった。
「意味がお分かりになられますか?……そのマジックアイテムを穢れの強いダンジョン入り口になど………」
そう言いかけた時僕はカサンドラへ『念話』を送る。
『母さん!出番だよー!一丁かましてあげて!』
カサンドラに景気良く『母さん』と言ったのは間違いだった……
張り切った彼女は、絶賛試作段階のホムンクルスの出力最大まで上げた。
『ズドォォォォォォォォン!!』
「な!?何事………何だこの瘴気は………スタンピードに比などでは………」
『漸く見つけた!!我が半身………『魔王ボイドの闇の宝寿』……お前等が奪い去ったのか!!王国貴族共………王都国民全員をこの氷の魔王カサンドラが氷塊傀儡にしてくれる!未来永劫、氷の魔物として死に続けるがいい!!』
おいおい……名前が違いすぎる上に『魔王ボイド』は言っちゃいけないワードナンバーワンだ!
『言ってはいけない人』と同じフレーズに入っている!
それもよりにもよって『超広範囲念話』をぶちまけたので、王都郊外は勿論の事、王都全域にまでカサンドラの出現が知れ渡ってしまった。
「「「「「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!」」」」」
案の定住民は連鎖パニックに陥っている。
逃げようにも前はダンジョンと悪辣貴族、後ろは王政派貴族の兵士たちでサンドイッチ状態で逃げようがない。
しかしカサンドラの迫真のなんちゃって演技は絶賛執行中だ。
何かのホラー映画顔負けのその様は、見た瞬間絶望しか覚えないだろう。
現に、この一連を予め知っているサイキにシリカそしてアリッサ一行は『既に魂が飛び立って絶賛気絶中』だ。
その状態を意にも介さずカサンドラは遊び呆けた。




