第1115話「死の真相と行き場のない憤り」
浅田〜じゃなかった_(:3 」∠)_朝だー!
と言うわけで予約更新ですぞ!
前回までの手違いは……
チャタラーから秘薬を受け取ったアリッサは、なんとか一命を取り留めた。
しかし、サイキに大穴を開けたことがバレてしまう。
当然お叱りモードのサイキに、主人公共々チャタラーとアンバーも巻き込まれるのであった。
「ふぅ……まぁ良いわ……アレのおかげで結果的にアリッサを回収して、回復できたからギリギリ死ななかった訳だし!」
「死ぬ所だったなら、バッチリだったじゃないか!サイちゃん………」
「少し的が近かったら私達も地面同様消し飛んでたでしょう?」
「え?……あ!!」
サイキは顔を寄せて『本当に馬鹿ね?』と言うと、鼻をデコピンする。
「仕方ないからお説教はコレで終わりにしてあげるわ!折角だから……ダンジョン踏破していきましょう?ヒロはそのつもりで穴開けたんでしょう?」
サイキはクルンと回ると、さっきまでのお怒りモードが嘘の様になる……
ご機嫌になった理由は、アリッサが助かった理由がまさか自分の知り合いの行為とは、今の今まで思ってもいなかったのだ。
サイキが話した通り、アリッサは死にかけていた……
悪辣貴族の騎士達は、アリッサが死んだ後は他のやつを盾にすれば良いと勘違いをしていた。
確かに変わりにはなる。
しかしアリッサが絶命した瞬間、騎士達は八つ裂きの上、蜘蛛の糸でアンデット・パペットになって未来永劫地獄の苦しみを得て、王都は直後に灰都になる。
アラーネアは家族や友人を大切にする。
悪辣貴族しかもはや王都に居ないのが分かれば、親類や友人を助けた上で悪辣貴族諸共王都など破壊し尽くしたのだ。
しかしそうはならなかった……
アラーネアの脅威を身をもって知っているサイキは、自分に無関係な領民でも無惨に殺されるのは嫌だった。
それが悪辣貴族でもだ……永久に彷徨っていたサイキは死が怖い……
知り合いが年老いて自分より先に死ぬからだ。
そんな経験をしたのだから、悪意を突きくけてくる奴は勿論、知り合いにも天命を全うしてほしいのだ。
当然そんなサイキにも例外は居るが………
サイキは偶然助かった訳ではなく『本能でそうなる様に選んだ』と思ったのだ……
遥かに下の階層で巻き込まれて死ぬ可能性がある中、何故自分達が生き残ったのか……それが偶然だとは考えたくなかったからだ。
現にヒロは無闇に歩いていた訳ではない……最下層まで『人間の反応』を調べて『居ない所』に大穴を開けた。
魔法効果で貰い火をしない位置まで移動したからこそ、巻き込まれたのは魔物だけだったのだ。
しかしそのサイキにも、想定外の事はある……『地上で死んだイーザの事』だ。
その件がきっかけである事は彼女はまだ知らない……
当然だがその件を伝えるより、もっと先に伝えることがある。
話の順序で出てきた『踏破』問題である。
当然あまり考えないチャタラーは、普通にその件を伝える。
「うん?俺たちはもう踏破したぞ?……サイキ……お前……此処を踏破したいのか?だがヒロが管理してるからな……管理者目指すならゲートの兼ね合いと領地問題でコイツと殺し合いになるぞ?」
「「「「「「踏破済み!?」」」」」」
当然同じ様な質問が全員から上がるのは仕方がない。
その内容が『踏破済み』なのだから無理もない事だ。
「実は……ちょっと激怒する場面があって……つい………」
「ヒロが!?……激怒?」
「サイキお姉様……流石にヒロ様とて人間ですから……怒る事の一つや二つはあると思いますよ?でもその結果この巨大迷宮を踏破と言うのは、私も些か驚きましたが……」
「仕方ないので御座います……人時代のお知り合いが亡くなられたのです。流石にこのダーク・トレントの王アンバーアイズであっても、あの状態の我が君を抑える事はできませんでした」
「「「「「「トレントの王!?……アンバーアイズ!?」」」」」」
「ちょっと待てアンタはあの御伽噺のアンバーアイズなのか?地上を丸焼けにしようとしたオークの王様と戦って勝ったけど……結果的に命をかけて森を救ったって………」
「アリッサ様若干話が違う様ですが……大凡合っております。宿敵を撃ち破る為にダンジョンの力を使い、結果的に穢れに飲まれた哀れな王で御座います」
「かわらねぇよ!だってアンタ……人間とエルフの為に戦って事だろう?」
アンバーアイズはその言葉に『なつかしい事で御座います』と言葉を返す。
「アリッサ……感動するのは後にして………ヒロが怒る程の事よ?………まさか………此処に来る間に……何が!?」
「まさか……ジェムズマインで何かが?それか……ローズガーデンで?」
サイキに続き、シリカも質問に混ざる……
当然だが彼女達も両方の街に関わりがある以上、イーザを見かけた事くらいはあるだろう。
「知ってるかどうかわからないけど……ギルド受付の……イーザが死んだ………」
僕は言葉に詰まるが、彼女達がギルドで知り合ったなら、彼女の最後を知る権利くらいはある。
見かけたくらいを予想していた僕だが、彼女達の反応は異常を極めた……
「イーザが!?死んだ……嘘でしょう?イーザが!?……だってかなりの剣術の腕前で……王都へいくとは聞いたけど……うそ……嘘よ!!」
「サイキお姉様……イーザ……イーザが…………」
チャタラーは、泣きそうな僕の代わりに、『知っているのか?』と聞く………
「イーザは……私達をジェムズマインに暖かく迎えてくれた……住む家や……パジャマパーティーだって!」
「サイキお姉様は……イーザさんに剣術を習ってたんです!………ジェムズマインにいる時はいつも一緒で………」
アリッサがサイキの肩を強く抱く。
「仕方ねぇよ……アタイだって死にかけただろう?……戦場には『死』はつきもんだ………」
「なんで……なんでイーザなのよ?……悪辣貴族共の心が腐った兵達が沢山いるのに!!何故いつも死ぬのは私の知り合いなの!?……ヒロは何故助けてくれなかったの!?」
サイキの涙の訴えにアンバーは事情を説明しようとするが、チャタラーが静止する……
その理由は僕にある……
「ごめん………大切な時に間に合わなかった………言い訳なんか無いよ……」
「おい!サイキ……ヒロは関係ない!!………戦場へ行く奴は命懸けだ!帝国に行くと決めたお前だってヒロの為に死ぬ気だったじゃないか!」
「アリッサ……良いんだ………。仲の良い相手だった様なんだ。誰かに文句を言いたい事だってある」
アリッサは僕の顔を見ながら『く……悪いのはアンタじゃない!問題はクソッタレのダンジョンだ。それに……イーザを前線に行かせた貴族共だ!』と言って壁を殴る。
「………お姉様……でも……その仇を討つ為に……ヒロ様が激怒したんです。もうヒロ様はその相手を………」
「ああ……凄まじかった……悪魔の王と呼べるくらいにな………」
サイキはチャタラーを見て……『仇を……倒してくれたの?』と泣き顔で尋ねる。
「相手は穢れ要塞の主、悪魔ベルフェゴールに要塞の悪鬼、悪魔モレク……破壊の嵐……悪魔ディーブルだ。どの悪魔も穢れ界の猛者と呼ばれた奴等だよ」
「悪魔……ベルフェゴールにモレク……その上……ディーブルだって?……」
グラズはそれを聞き、目をむいて驚く……
何故ならベルフェゴールはかつて大国を1時間で破壊して沼地に変えた。
モレクは似た様な大国を地盤ごと破壊して、遥か海中に沈めてしまった。
ディーブルに至っては、数少ない古代浮遊城を地上へ叩き落とした……そんな伝説を残す口伝の悪魔達だ。
「そいつらは………」
「サイキ様安心されよ……主様は完全に消滅させました……古代エルフの剣を使い……自分がその効果で傷ついてしまうのに……」
「え!?………ううう………当たり散らして御免なさい……私よりもっと前から彼女を知る……貴方の方が心が痛いはずなのに………」
僕はサイキに『良いんだ……救えなかった事は事実だし……自分に腹が立ったのは……言うまでもないし……』と言った。




