第1106話「激戦地・血溜まりの中のイーザ」
こんにちわー\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/
今日も元気に?更新ですよー!
前回までの手違いは……
イーザの窮地を聞きつけ急ぎ現場へ向かう主人公が見たものは……膝を地面につき空を見上げるイーザの姿だった。
「やっぱり……貴方だった………」
「話すな!イーザ……血が………血が……溢れて………何でも傷を癒すんだ!このフルポーションは……シリカ直伝……フローゲル家の自慢のフルポーションなんだよ!!くそ!!何故フルポーションが効かない!!」
「うふふふ……焦らないで?他の人には効果があるでしょう?ヒロさん……あのね……コレばかりは何をやっても無理だよ?」
「何で?何で…………欠損でも無いんだたかが傷じゃ無いか!……秘薬!秘薬があった、そうだチャタラーだ!」
そう言った僕は念話を最大で飛ばす……
『チャタラー!!今すぐ来い!秘薬が必要だ!……イーザが………このままでは………イーザが死んでしまう!!』
するとすぐに黒穴が開きチャタラーが現れる……
「俺に命令…………どうした?お前………その禍々しさ………」
「チャタラー秘薬を!!すぐに………」
「………その娘に……秘薬を飲ませて回復させたいなら……残念ながら無駄だ………」
僕はその言葉にチャタラーを睨む……
しかし僕の発する言葉の前にチャタラーの開けた黒穴からマモンが出てきて、首を突っ込んでくる……
「オイ………ヒロ!勝手にも程があんだろうが!まるでヘカテイア並だぞ?俺達に他の仕事を押し付けて………ってオイ……チャタラーにヒロ……殺伐としやがって……一体何してやがるんだ?」
そう言ったマモンはイーザを見る……
「オイ……馬鹿かこの娘……血族スキルの自滅系をマックスまで使ってるじゃねぇか?もう暫くで………死んじまうぞ?」
「な……何を言ってるんだ!?マモン………そんな……そんな訳ない!これからチャタラーの秘薬で治す………」
そう言った僕の口を指で塞ぐイーザ………
「この二人が言った事は本当………血族スキル『血の精霊』って言うの……。本来は血族で引き継ぎ、結婚相手の男性が使う攻撃バフの専用スキル。だけどね?……女性が使うと寿命を糧にどんな魔物でも一撃で殺せるスキルなの……」
「寿命を糧に!?……な!?……何故そんな物を………此処で使わなくても!!」
「怒らないで?ヒロさん……貴方らしくないわ。だって……わたしにはコレしか無いもの……」
「だって……僕は……王都についていたんだよ?こんな危険なスキル……使わなくても!」
「ヒロさんは私に『命の重み』と『使い方』を教えてくれた。私の父は母と私を救う為に………このスキルを使って村を守ったわ」
そう言ったイーザは言葉短く昔話をする……
イーザの父は冒険者グループのリーダーをやっていた。
父は母を娶り、その血族スキルを与えられたと言う。
しかし村を襲った魔物との死闘で文字通り帰らぬ人となる……
父を失ったイーザは母親に『血族スキルを封印しろ』と言われたそうだ。
理由はイーザの祖父達も同じ運命を辿ったと言う……
イーザの母……即ち娘を救う為に、命を失った祖父達。
奇しくもその運命はスキルで繋がれ、運命はほぼ同じ……
イーザはその力を封印するつもりでいた。
だから母や祖母の冒険者としての生き方とは別の道を歩もうと決意をする……
彼女は父の死を目の当たりにし、母の言い付けを聞いて育った為に普通の街娘として暮らし、平和な家庭を夢見ていた。
しかし自分に流れる血がそうさせなかったのだろう……だから『ギルドの職員』と言う戦闘に関わる立場に歩みを進めてしまった。
この異世界では戦闘は頻繁に起きる、農作業の合間にもスライムやらホーンラビットの様な魔物に出くわすからだ。
だからこそ『街の中の仕事』で『直接戦闘をしない立場』を選んだのだ。
しかし僕は『戦闘の仕方』を教えてしまった。
彼女でも出来ると証明してしまったのだ。
彼女は僕の表情を見て、何かを感じ取ったのだろう……
昔話に僕とのやり取りを付け加えた。
「そんなかおをしないで?ヒロさん……コレは私の贖罪なの!あの山から帰ってこなかった、ライハンにペース……イギーにグース……私が間違いなく送り出したの。それは間違いではない……だから……私が彼らの分まで戦うの!」
「イーザ!それは気にする事じゃ無いって俺達は何度も言っただろう?元はと言えば、アンタの血の精霊を狙ってたミオの馬鹿な弟の所為だ!」
「ミオの……弟の責任?何ですか………それは………」
そう言った僕は彼を見る……
「あんた………女じゃなかったのか?……何だその姿……今までのは?」
その言葉に僕は、無意識のうちに魔法を解除していたことに気がつく……
イーザの手前、その姿が望ましく無いと思った結果だろう。
「今までのは……理由があって………擬態魔法です!それより………」
男は擬態魔法の言葉に目を白黒させるが、僕の目を見ると説明をする。
何故ならば、イーザの残り時間がわずかであるのは彼も察知していたからだった。
「ミオの弟はうだつの上がらない鍛治師だった。そんな奴は自分の客の冒険者からイーザの血の精霊話を聞いちまったんだよ!だから攻撃バフを自分の剣に盛る事を思いついたんだ!結果『名剣』を打つ事に成功した」
「な!?……じゃあ………」
「その手柄を得た奴はイーザを捨てた。元々浮気症のクソ野郎で有名だったんだ!だがそれを自分の手柄と過信したアイツは……面倒な事になる前に、同じ職員である姉をダシに使ったんだよ!!」
「イーザさんは……それを知っていて?」
「あんな人でも私には優しかったの……冒険者の皆は『スキル』の事を知ると離れていく……攻撃バフは私と共にいる事が重要だから。戦闘に巻き込まない為に皆……私の前から居なくなるの……」
僕はその事情を聞いて言葉を失う。
イーザの事を利用していたのはミオの弟であり、姉のミオとイーザはその様を計画的に見せつけられ利用されていたのだ。
情報操作は姉のミオを用いて『まるで自分が被害者』である様を作り出していた。
ミオは、弟の起こしたその事実を知らないのだろう。
しかしその話にも続きがあった……予想外にも天罰は下されていたのだ。
「だがそんなミオの弟は、コレまた戦場で2天前に戦死したよ……。娶った妻が囃し立てたせいでな……ザマァない馬鹿な奴さ……」
「スキル効果は?名剣の効果は消えないんですか?」
「消えたさ……その所為で娶った妻が『剣の効果をこの戦場で示せ』と言ったんだからな!」
そう言った彼の言葉はとても皮肉満ちていた。
イーザとの関係を失った彼は、文字通り血族が絶たれその効果を失った。
しかし名剣と歌われた剣は納品済みだ。
持ち主の貴族は鈍に落ちぶれた武器を持ち、ダンジョンと言う戦場に立った……
どうなるかなどは『火を見るより明らか』だ。
全員が大怪我を負うか、その命を失った。
剣の効果が失われた事は当然の如くすぐに知れ渡る……
生き残った貴族達が彼に元に事情の説明を求めにきたからだ。
しかしミオの弟は、その事を理解出来なかった。
冒険者でない彼は『イーザとの血族になる事で、彼が得られるスキル』と勘違いしていたからだろう。
その結果打った武器を持ち戦場で実践した。
単なる鍛冶職人が、鈍武器を片手に戦場に立てばそこにあるのは『死』である。
「イーザさんはその事を知って?」
「うん……私の所為で彼は死んだ……。だって……勘違いする前に説明できたの。でも……嫉妬が邪魔して出来なかった……」
「ミオさんは?……知ってるの?」
僕はそう聞くと、イーザは静かに首を縦に振った。




