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第1099話「閑話・受付嬢の災難」

更新3話目≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡c⌒っ゜Д゜)っポチリ!


『閑話・後日談(受付嬢編)』



「クーシャン!!今日という今日は……教えなさいよね?その………香りの元はなに?何処で売ってるの!?私も彼とのデートで付けたいの!教えてよ!!お昼奢るから…‥ねぇ良いでしょう?」



「ハクチョン……だから!!コレは買えるものじゃないの!貴族のアンミン様からの頂き物だってば!!」



「へぇ……アンミン様から?ふーん……ちゃんと裏を取って聞いたのよ!?アンミン様は『貴女から貰った』と言っているのよ?何方かが嘘をついてるのよね?」



 そう言ったハクチョンは『貴族が嘘をつく意味は?』と言う……


 貴族内なら嘘の意味もわかるが、位が下のギルド受付嬢に嘘を言う意味など無いからだ。



「そ………それは貴重な素材が必要だから……表沙汰に出来ないの!!」



 周りが大騒ぎするその理由……


 貴族とも思える受付嬢には思えぬ洋服に身を包み、綺麗に整った髪質に鼻をくすぐる羨む様な香り……


 たった一日でクーシャンの装いが180度も変われば周りも騒がずには居られない。



 それも翌日ギルドへきたノンレムお嬢様とシープー伯爵夫人が、クーシャンと似通った様な服を着て、同じ香りがすれば嫉妬心も高くなる。



「必死に貯めた金貨20枚で買った素材だもの!!製法はそう簡単には言えないわ………」



 咄嗟に出た嘘……


 それが彼女を苦しめる……



「あら?……そんな物が金貨20枚で手に入るのね?……ふぅん……あの落ちぶれ貴族のノンレムが持っていて私が持ってないなんて……許せませんの!金貨なら幾らでもお支払いしますわ。私の為に用意なさい!」



「ひ……ひぃ!?クージョお嬢様?……何時から………そこに?」



「偶然通りかかったら貴女からノンレムと同じ香りがしたのよ。だから入手先を聞いてみようと思って戻ってきたの……お父様が私の護衛を雇うとか言ったから仕方無く見にきたんだけど……思わぬ収穫だわ!」



 クージョと言う女性は『明日迄に用意なさい。金貨で300枚分……その匂いの元をね?』と威圧的に言うとその場を後にする……


 クーシャンはどうするべきか悩んだが、自分だけではもはや手に入れられる代物でも無い。



 そこで執務室を訪れていたノンレムに、已む無く相談をする………


 ノンレム・アンミン……彼女はおっとりした性格で行動が遅い。


 

 貴族令嬢達の集まりでは『カメ』と揶揄されるほどである。


 その言い出しっぺが『クージョ・リアーロシュ』で他ならない。



「ま……まぁあのクージョさんが?前から目の敵にされていたのは分かりますが………」



 そう言ったノンレムはこう付け加える……



「お母様が言ってたのですが……シャンプーやコンディショナーに水を加えると嵩増しできるそうです。シャンプーを例えにですが……一袋の半分で相当多く作れると……入れ物はポーションの瓶で……ほら!ポチさんが出した試供品みたく!お母様も友人にせがまれて……仕方なくそうして渡しているそうですわ……そもそもアレはヒロさんなしでは買えませんから。」



 ノンレムは『流石に原液で周囲に渡すのは駄目だ』と珍しく強い口調で言う。


 この品はあくまでも僕との出会いの証であり、誰でも簡単に手に入れられる物では無いと説明をする……



「実は私もそう思って……悩んでいたのです。でも大量購入したシャンプーとコンディショナーだけでよかった……洋服とか言われたらもう打つ手なしですもん」



 クーシャンはノンレムとお茶を飲みつつ、そんな話をする……そして『人間関係って拗れると厄介ですね』と笑い合った。


 ひょんな事から得た貴族の友人ノンレムだったが、お互いの身分格差はない。



 その夜クーシャンは手に入れたシャンプーやらボディーソープ……そしてコンディショナーをギルドで売っているポーション瓶に移し替える。


 当然水で希釈した各種原液だ。



 翌日からクージョは『移し替えられ、水で希釈された紛い物』を、クーシャンから金貨をはたいて買う羽目になる。


 その反面クーシャンは思いがけぬ副収入を得た上、偶然からできた『試供品』をこっそり渡す事で仲間受付嬢からは高評価を得た……


 当然クージョに渡した物より更に希釈した物だが……



 しかしそれを知るのは、悪辣貴族令嬢から利用されたクーシャンと目の敵にされたノンレムだけだった。


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