第1091話「バレた!?ハーフエルフの素性」
27日分のー更新でーす\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/わっちょーい!
「遅れてすまない……全員が身分証明書を作れた……だが問題もある……」
「問題?なんです?テカーリンさん……」
「その件は私が……」
エルルにどうしたのか聞くと理由は簡単だった……
応接間で待たせている間に、人間擬態の魔法効果が切れてしまったのだと言う。
本来24時間の効果があるが、それは『魔法使い』の場合であって、彼らはステータス上『一般人』だ。
訓練を積んでいない以上『市民』のステータスしか持っていない。
なので魔法効果は本来より短い様なのだ。
それは僕達の落ち度で、ステータスを鑑定で見ていない僕の責任でもあった。
何故ならステータスを鑑定すれば残り時間が出るので、一目瞭然なのだ。
「じゃあ……知られてしまったのですか?」
「いや……ザムド公爵様にウィンディア侯爵様、後は待機させていた事務員数名と私にミオだけだ」
僕はそれを聞いて胸を撫で下ろす。
事務員から口外しないようにしてさえ貰えば、暫くは彼らの身は安全だからだ。
「そうでしたか……騙してしまって申し訳ないです……でも彼らを見捨てる事は出来ないので僕は……」
「と言う事は……お前の仕事にはハーフエルフの救済も含まれるって事だな?」
「もしそれが上手くいかないなら、僕は仕事が終えたらこの国を捨てて、誰も治めてない荒地でも探して建国しようかと………」
「………成程な……その時は是非俺も誘ってくれ。異種族といえども生命を軽んじ、見殺しにする国には俺はいたくないからな!」
その言葉にロズやベンそしてザッハが目を丸くする。
領主を捨てて国を出ると言うのだから、当然そうなるにも無理はない。
「実はその事も踏まえて今後の予定を話したいんです。国絡みは抜きにしたのでザムド公爵とウィンディア侯爵は呼んで無いんですよ」
そう言うと、隣の部屋から声がする……
ザムド公爵とウィンディア侯爵ではなく、マックスヴェル侯爵にソーラー侯爵の声だった。
「言った通りだろう?ザムドにウィンディア……全部こいつは自分で抱え込むんだ!付き合いが長いお前達なのに情けない……」
「煩いぞ?マックスヴェル……」
「だが……この店で網を張っていて良かったとは思わんか?儂等だけ蚊帳の外では寂しいだろう?」
そう言って現れたマックスヴェルは片目が潰れ、片腕を失い、片足が義足になっていた。
「マ……マックスヴェル侯爵様?な……にが………」
「心を入れ替えて遠征した途端、運に見放されたんだ!ガハハハハハ。驚いたか?よしこれで今日は俺の勝ちだ!」
「笑っている場合ですか?そんなでは生活に支障が!!」
「悪運尽きたとはまさにこの事よ!国王陛下にも同じ事を言われたわ!!だが見放されたのは俺だけじゃないぞ?なぁソーラー侯爵よ?」
そう言われて奥を見ると、両足を失い歪な木製の車椅子の乗っているソーラー侯爵だった。
「ぶはははは!なんて顔をするんだ?ヒロよ……まぁコレで私も一本取ったって所だな?」
「何故二人とも笑ってるんですか?現状をわかって笑ってるんですか?」
二人は『勿論だ!それに後悔もない!』と更に高らかに笑う。
「儂は3度目の遠征でな……メタルハウンドに両足を喰われたわ!だが自慢の武器で皆殺しにしてやったぞ?」
「俺はソーラーが居なくなった穴のせいだ!5回目の遠征でグレートミノタウロス相手にヘマをした!がはははは!」
そう笑う二人にチャタラーが近づき……
「馬鹿ほどよく笑う……闘えなくなった男に何の価値がある?」
と真顔でそう言う……
「違いない!だが腐っていく己を傍観するより、遥かにマシだ!お前もそう思うだろう?ソーラー?」
「ああ!目的遂行の為に失ったものだ。自慢であり後悔などない……後悔があるとすれば陛下のおそばで戦えず、我々より先に崩御なさった事だ!」
二人はチャタラーを『キッ!』と睨みつけてそう言うと、また大笑いをする。
「だったら秘薬を飲んでまた戦え!戦士に休息など不要だ。死ぬまでが戦いである!!」
そう言って二人に秘薬を投げ渡す。
「戦うべき時に戦い……例え化け物になっても……守るべき者を救ってこそ戦士なり!」
「チャタラー………」
「なんだ?ヒロ……今から俺は肉を食う!店主もっと肉を持ってこい。こんなんではすぐ食い終わる!」
その姿を見たマックスヴェルとソーラーは目に涙を浮かべながら、秘薬を一気に煽る。
「おい!そこの冒険者!貴重な物を……礼を言う。お前のおかげでこの通りだ!」
「俺も礼を言う!これで死ぬまで戦える!陛下の無念を俺たちが晴らせる……本当に有難う!!」
「礼などくだらん!それより飢えて戦えなくならない様に飯を食え!秘薬で傷は治せても飢えはしのげんぞ?」
マックスヴェルとソーラーは大笑いをすると『違いない!』と言って、勝手に机の上の肉を食い始めた……
◆◇
「それで?ヒロお前はどうすると言うのだ?ハーフエルフを救いたい気持ちは分かった。だが……今の治世では到底無理な話だぞ?」
「おいマックスヴェル……決めつけは良くないぞ?ハーフエルフとてエルフの血が混ざった種族だ。劣ってると決めつけたのはエルフ族の情報が出回ったにすぎん」
僕は彼らに直接エルフ族の問題を暴露する……
当然だが全員がその情報に目を丸くする……何故なら実行犯本人の音声を録音してあるからだ。
「些かソーラーの言葉も予測の範疇ではないな……」
「うむ……ハーフエルフが嫌いもしくは何か理由があるから排斥しようとしている節があるな……」
そのソーラーに言葉にエルルが『排斥でございますか?』と恐る恐る質問をする。
「エルルと言ったか?ヒロの前では無礼講だ。儂等とて恐れる必要など無い。そもそも迫害などすれば1番の危険人物がこの王国を破壊しかねん!」
そうマックスヴェルが言うと、ロズが『ヒロはこえーぞー?山程でかい魔物でも、行き先間違えたって理由だけで腹いせにぶっ殺して帰るんだからな!』とジュエルイーター討伐話を蒸し返す。
かなり脚色されているが、それでシャインが助かったのだ……
しかしエルルの目は怖がる訳でなく憧れの対象を見る目だ……その視線を感じ取ったのか、視界にミオが素早く入りシャットアウトする。
「今はそれより話を進めないと!!ソーラー侯爵様の言う通りですね……何か裏がありそうです……」
「それはそうと……俺を侯爵様呼ばわりはやめてくれるか?お前ももう俺と同じ侯爵なんだぞ?直接皇帝陛下に拝謁し、戴いてないからと言ってその話は無しにはならん」
マックスヴェルもウィンディアもその話に首を縦に振る。
慣れでつい言ってしまうのだが、僕は誤魔化す様に続きを話す……
「一応その件は同時進行で片付ける流れがいいと思うんです……目立った動きをすれば潰されかねませんし、万が一先回りしてハーフエルフ狩りなんかされたら元も子もないので……」
「俺もその意見に賛成だな……だよな?ロズ………」
僕は賛賛成派を見つけつつ、意見を聞きながらハーフエルフの移民話は水面下で動かすことにする事で纏め、スタンピードの話へ持っていく。
急務はサイキとシリカの救済と森エルフのユイと月エルフのモアそして太陽エルフのスゥを探索しつつ救助するのが第一優先。
2番手に王国のスタンピードを阻止して、穢れに世界へ入れるゲートを僕が奪取する事。
3番目にエルフ国の解放もしくは破壊と再構築だ。
エルフ国の破壊はハーフエルフが密接に関わるので、その状況によって変動させなければならない。
なのでハーフエルフ問題を解決させながらでないと、後々問題が大きくなるのだ。
同時進行で出来ればドワーフ国への侵入及び救済。
ドワーフ国は位置的な問題から、帝国の問題に絡めないと二度手間になるが、悠長に構えていると滅亡まで待ったなしになる。
最低限のドッペルゲンガーを駆除して、安全を確保しないとならないだろう。




