第1090話「越えられぬ壁と進化条件」
3話目予約更新……
ちゃんと出来ているか心配だなぁ_(:3 」∠)_
「チャタラーさっきは申し訳ない……あの状態は以前味わったことがあって。つい条件反射で……」
「構わん。お前のお陰で俺が代わるきっかけを得た………魔人から格が上がり『悪魔』になれたのは元を正せばお前のお陰だ……」
「え?チャタラー……あ……悪魔になったの?……ええ!?今日?」
「ああ……どれだけ魔物を殺そうと、強い変質薬を使おうと成功しなかった『悪魔』への壁が……まさか塵と蔑んでいた人間の手で成せるとはな……」
そんな話をしつつ、悪魔組だけで先にホーンラビット亭に行く。
当然今の状態をファイアフォックスのメンバー全員には明かせないからだ。
「皆ご飯を食べながらでいいから聞いてくれるかな?これから僕の人間だった時の仲間が来るんだ」
「おう……それで?飯はまだか?」
僕は軽くマモンをドツクと『邪魔したらご飯はお預け』と言う……
明日以降行く場所が多岐に渡る……バラバラに活動する事になると思う。
「なんだと?俺はマモン様からは離れんぞ?」
「そうだ!俺は領主様を守るために同行したんだ!!」
僕は『それを先に話すために皆より早く来た』事を説明する。
王都のダンジョンへ行くのは、王国の貴族である僕と離れないと言っているアンバーだ。
そしてマモンとチャタラーには王国周辺の調査だ。
魔物が突然湧くのは間違いなく自然発生では無い……
待ち伏せで魔物に襲われたことがある以上、誰かが魔物を利用して何かを成そうとしているのは目に見えている。
ヘカテイアは予備枠で、ジェムズマインとローズガーデンの守備を頼む予定だ。
僕達は人間や魔物程度の強襲はなんて事はない……しかし周りは違うのだ。
国王が崩御した今、狙うべき新天地は間違いなく金が取れるジェムズマインであり、金の集まる交易都市のローズガーデンだ。
少し話を聞いただけで、悪辣貴族の面々がローズガーデンに引っ越している。
ジェムズマインはザムドの息がかかっていた場所だけに、身の置き場がなかった。
だがローズガーデンは領主たる僕が不在であって、貴族相手の拒否権は運営を任せた村長では一般市民に毛が生えた程度で使えない。
火焔窟踏破の褒章は、陛下より直接貰ってない以上据え置きだったに違いないのだ……
だからこそのヘカテイアだ。
マモンだったら相手の家族諸共穢れ堕ちさせかね無い。
チャタラーだったら何かの実験に使うこと請け合いだ。
アンバーはもってのほかで僕は王都へ行く。
引き算の結果、貴族に『諦めさせる』事が出来るのはヘカテイアに他ならない。
相手に心理的ストレスを与えて、完膚なきまで追い詰めることのできる『悪魔の様な女神』だからだ。
「じゃあ……私は問題が起きるまでは好きにしていいのね?このお店に来るのも?」
「ヘカテイア様是非!!」
僕がその言葉に首が90度ひん曲がる……
「い………何時からそこに?ビラッツさん………」
「はい?えっと皆様が悪魔や魔王……魔人だと言う最初のあたりですね?チャタラー様、悪魔への昇格祝いに当店から祝いの酒を提供させていただきます!御神酒の様な物騒なものではありませんのでご安心を!」
そう言うとビラッツは『話が大方終わられた様なので、そろそろ食事をお持ちさせていただきますね?』と言って出て行く……
「おいヒロ……アイツは本当に人間か?使い魔の間違いじゃ無いのか?」
「チャタラー……僕もびっくりしたけど……ビラッツはああ言う人なんだ。職務に忠実というか……店の運営以外何も興味無いというか……」
ビックリしている間にどんどんと食事が用意される。
そしてビラッツは『大丈夫ですよ?飯屋はお客さまの秘密を守ってナンボですから!』そう言ってゼフィの鱗を見せる。
「龍の鱗か?成程な……秘密が何かを産むと言いたいんだな?分かった……じゃあ俺はコレをやろう」
「なんですか?コレは……瓶?」
「ああ……瓶だ。中身はナイトメアの涙と言ってな、1滴でその日の夢をお前の好きにできる。無味無臭だから飯に混ぜればソイツの夢に今日の晩餐を再度見せることも可能だ……」
「な!?なん……なん………なんて素晴らしい!!寝ているお客さまの夢の中でも……当店の食事を提供できるなんて!!」
大喜びで踊り回るビラッツは、料理長のシュラスコに拳骨を喰らう………
「馬鹿な薬品で喜ぶな!!自力で夢くらい見せないで世界一の飯屋など目指せるか!!そもそも今日のコース説明はしたのか!アホ支配人め!」
シュラスコはそう言うとビラッツの持っていた瓶を取り上げて、『ちゃんと接客せい!』といって部屋から出ていった。
しばらくしてロズとベン、ベロニカにゲオルそして少し遅れてサブマスターのザッハに受付嬢のマフィンにクッキー、ビスケットそしてラスクとマドレーヌが来た。
受付嬢の5人はヤクタ事件の時からかなりの月日が経ってるので驚くほど成長していた。
「君達……すごく成長したね……」
「最後にあったのは6天近く前ですからね……今は大人の一歩手前です……」
マフィンがそう言うと、全員が笑い合った……
「本当に無事でよかった………私達ヒロさんが居なかった……フォレストウルフの餌だったんです……。私達がちゃんとお礼をするまで死んでは困ります」
ラスクがそう言うと若干泣き始める子まで出てくる……
「ベロニカさんにゲオルさん……サブマスターのザッハさん……帰宅の挨拶が遅れてすいません」
「本当だよ!アタイもエク姉もどれだけ心配したか!ちゃんと飯奢って貰うからな!」
「本当じゃ!……ああくそ……歳をとると涙脆くなるわい………」
「遅れてすまんな。前が帰ってきた事をギルド伝手に報告してたんだ。エクシアは今は居ないが……ファイアフォックス全員がお前を待っていた」
僕はエクシアともうあったとはいえないので、頷くだけにした……。
「あと言いにくいんだが……お前の仲間含めて多くのメンバーが探索で各地に散っている。カナミとミサは小国郡国家を経て砂漠の国に……ソウマはテイラー伯爵と東大陸へ……ミクとアカネは西方面だ……ちなみにエクシアとユイナは一緒にエルフ国近辺の前哨基地へ国絡みの任務だ」
「そうですか……実は言いにくいのですがその頃の仲間の記憶を失ってます……」
僕はその事を包み隠さず話す………何が起きてどうして忘れているのかを、ぼやかしながら伝える。
ユイナの件で記憶を戻したことは、エクシアの事を伝えないので今は敢えて秘密にしておく……
「う……嘘だろう?じゃあ………帰るための試練で記憶を代償にしたのか?何で……もっと自分を大切にしろよ!!」
「おいベン……もし俺やお前でも仲間のためなら同じ事してたぜ?きっと………」
「わかるけどよぉ……ロズ……何で何時もこいつなんだよ………苦労しすぎだろう?出会った時はすげぇ幼いガキで……今だって見栄えは変わらねぇんだぜ?」
「何はともあれ!記憶は切っ掛けがあれば回復するので……ホリカワの件で立証済みだから………」
「それが問題なんだよ!何で一番最初がアイツなんだ……殺しに来たってのに……納得いかねぇよ……」
僕はぶー垂れるベンを宥めて、それ以外のメンバーに改めてヘカテイアとマモンから紹介をする。
助けてもらった事は言うが、死んだことは秘密だ。
「チャタラーにアンバー有難うな……こんな奴でも俺たちの大切な仲間なんだ……俺はロズだ。改めてよろしくな!マモンにヘカテイア……感謝する!お前達がいてくれて本当によかった」
「俺からも礼を言う。有難う!申し遅れたが俺はベンと言う。同じ飯を食う物同士コレからも頼むぜ?……あとヘカテイアにマモン……今までの失礼……申し訳なかった。改めて仲間としてよろしく頼む」
口々にマモンとヘカテイアに謝罪とお礼を言い、チャタラーとアンバーにはお礼を言う。
そうしていると、遅れてきたエルル達がテカーリンとミオに連れられて来た。




