第1088話「重なる災難と借りたい猫の手」
念の為予約にて対応中death\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/
「カサンドラ……聞いてたの?嘘でしょう?」
「ちょっと!ヒロ……母さんでしょう?お父さんのボイドさん意外私の呼び捨ては駄目よ?幾ら息子でもだーめ!それにマモン来いって命令は駄目でしょう?息子の前で命令なんかやめてよ!」
「そんな事より……帝国北部の件は本当なの?」
「何よヒロ。アイツら私を迫害したんだもの……それくらい意趣返しでしょう?」
「じゃあ……僕達が向かう間だけでも解除して」
「えー?いやよぉ〜……だってあの氷があるから私は『絶対たるヒロの母親・カサンドラ』なのよ?」
「おい……カサンドラ。その名前の何処に氷が関係してるんだ?」
そのマモンのツッコミにカサンドラは『バレたー?』とおちゃらける。
「カサンドラさん……お願いされても……もう母さんって二度と呼ばないよ?」
「戻って今すぐ解除します!!でも一部だけよ?ドワーフ国に行くまでの道だけ!あの人間が移動する道もサービスで雪原解除しておくから!お母さんに感謝しなさい!」
カサンドラはそう言うとすぐに黒穴を出して転移する。
氷結地帯の氷を一部だけ解除しにいったのだろう。
氷穴の魔王カサンドラは『氷』が強く影響している……だから完全に無くせば魔王たるカサンドラにも影響が出てしまうのだ。
しかしカサンドラを突然見た全員は、文字通り固まっている。
相手が魔王であるのでそんな相手が湧いて出れば固まるのは当然だが、僕としてはいつの間にか部屋にいたことが信じられない。
「おいヒロ……アレって魔王だよな?お前異世界に母親がいたのか?それが氷穴の主の魔王カサンドラなのか?」
「ロズさん……何処まで本気なんですか?マモンが絡んでるに決まってるでしょう?」
僕がそう誤魔化すと、いつの間にか串肉を食っているマモンとロズの目が合う。
「何だロズ?肉はやらんぞ?欲しいなら自分で買ってこい……」
「ちげぇよ……カサンドラの件だ……」
マモンは『話すとなげぇ……その上意味もねぇ』と言って肉に齧り付く。
でもミオは『でもお母様なら挨拶しないと!嫁姑は仲良くしないと家が崩壊するって聞いたわ……』などと言う。
何処まで本気なのか……正直、張っていた気が抜けてしまう……
「はぁ……ミオさんのおかげで怒りの気分が抜けた……でも急がないと……どれだけの期間サイキ達はダンジョンに入れられてるか情報は?」
「う……うむ……王が大怪我を負う直前だったから……実際ダンジョンに入ったのは此処60日以内だ……」
「年単位じゃ無いのが救いだな……あの二人が死んだら龍核と精霊核はおじゃんだかだからな……」
マモンがそういうと、ウィンディアとザムドは非常に青ざめる。
「ま……まさか……ヒロの力の一端を預かっていると言うのは本当だったのか?」
「ええ……僕の精霊の力と龍力です……ゼフィランサスやエーデルワイスとはそれが無いと多分敵対します……」
それを聞いたザムドとウィンディアは勢いよく立ち上がる……
「ば……馬鹿な!此処で悠長に話している場合じゃ無いでは無いか!!騎士団を編成しダンジョンに向かわねば………」
「ウ……ウィンディア!!急いで知り合いの貴族へ騎士出兵依頼をしろ!出来る限りだ………くそ……全部裏目に出ておる……姫達の言う通りじゃ無いか!!」
僕は二人に『急いでも仕方ない!!まだ情報整理の最中ですよ!』と叱りつける。
「取り乱すくらいなら初めからしないで下さい。今の王国内問題は四つ王都付近のダンジョン問題が二つ、エルフ国の問題に、出所不明の魔物問題……それも突然湧くんですよね?」
「ああ……その通りだ……」
「その他の問題は、ドワーフ国の救済に帝国スタンピードからの救済が僕の知りうる問題です……他は?」
「多分無い……この国には……」
「ロズさんにベンさんは?」
「多くはお前の探索で歩き回ってるが……カナミが精霊絡みで砂の国に行ったくらいだな……」
「精霊絡みでって事は……サラマンダーの件?」
「ああ……火の精霊繋がりで何か方法を見つけるって言って向かったのは200日近く前だ……ギルド絡みの連絡が前は来てたが……ここ最近は遅れている」
「事件絡み……かも知れないですね………ホリカワが絡んでないといいんだけど……」
僕はそう言うと、チャタラーを見る。
「なんだよ?秘薬ならもう少しで全部できるぞ?」
「本当に秘薬作れるんだね……チャタラーは錬金術師だったの?」
「あ?なんだよ今更……そう言えば丁度そんな呼び方が出てたな……マジッククラフターって職業がザラだったが……錬金術師は精霊契約が必須だろう?俺はしてねぇから厳密には錬金術師じゃねぇぞ?」
「………知らなかった……って事は錬金術師は精霊契約がないとなれないんだ?」
「属性によって作れる項目が変わるんだとよ。面倒だなって笑ってたのが昔の記憶だ……マジッククラフターってのはそんな面倒がねぇ……そう言えば随分昔に弟子をとったな。思い出すと確かこぎたねぇ娘だったな……」
僕はその言葉に『そう言えばサイキはマジッククラフター』とかなんとか言ってた気がする……と思ってしまう。
まさかチャタラーがサイキの師匠なわけない……とは思うが……
「よし終わったぜ……おい女これで全部だ。本物か気になるなら鑑定しろや……」
そう言われてテカーリンは鑑定指示を出す……
もし本当に秘薬なのであれば、全くもって恐ろしいことが目の前で行われたからだ。
「あ……ありがとう御座います……ちょっと確かめてから使わせて頂きます……」
「あん?くれてやったものだ気にしねぇ好きにしろよ」
そう言うとチャタラーは部屋から出て行く……
「チャタラーお前ー何処行くんだ?」
「マモン様が食べてた物が気になって……ちょっと売店行ってきます」
僕は『会議中に自由か!』とつい呟いた……
◆◇
僕はやるべき事を纏めてから翌日報告するから、絶対に早まるな……と全員に釘を刺してから部屋を後にする。
領主邸の大応接間を出ると、多くの商人が押しかけていると報告を受けた。
「大領主様!!私はアウゴン商会の者です!是非一度お食事でも……」
「ああ……ちょっと忙しいので……」
「大領主様!ローズガーデンの販売権利を……我が商会に……」
「今忙しいので……また今度話しましょう」
「大領主様!おひさしゅう御座います!!」
「あ……ビラッツさん忙しいのでまた今度……」
「そんな久々ですのに!このビラッツをお嫌いに?」
僕はビラッツの持つ支店に帝国で助けられたことを思い出した。
「ビラッツさん……ちょっと飯の予約できます?人数は………」
「今すぐ貸切にします!何名でも平気で御座いますよ!」
ビラッツはそう言うと『おい……今すぐ店の看板ひっくり返してこい!!』とお付きのものに言う……。
「ビラッツさん……よく食う奴が多いので準備宜しく!数日でまた旅に出るので……」
「な!?数日で?長い間留守でしたのに……もう旅立たれるのですか?………なんてこった……このビラッツ腕によりをかけて接待させて頂きます!!」
僕はそう言うと冒険者ギルドへ向かう。
なぜかと言えば、冒険者達が大怪我をしていると聞いたからだ。
それならば王都前のダンジョンの様子を生の声で聞けるのだ。
悪辣貴族の様をちゃんとヒアリングして、今後の治世に活かさなければならない。
国王陛下が崩御された以上、調子に出て悪巧みをする者が間違いなく出るからだ。




