第1060話「堕天と太陽神話」
この更新でとうとう1060話ꉂ(≧∇≦)っぽ!
前回までのお話
監視の天使・堕天使アザゼルと力比べになった主人公。
相手の土俵dw闘う気など毛頭ない様を見せつけた。
しかし投げ飛ばした先は、派閥に居た悪魔や魔人、魔王達の集まる野次馬の真上だった。
間違いなく恨みを買う事は避けられない状況となる。
「ヘカテーにマンモーン儂は自分の領土に戻る事にする‥‥じゃが中立は保つ事を約束しよう。そのヒロとやらはまだ魔王質と悪魔質を解放しておらん様じゃからな……」
「あらアザエル………以外に抜け目ないわね?あれだけ派手に投げ飛ばされて誰もが『負け』と認めざるを得ない状況なのに……」
「くっはは………確かにそうだぜ!?アザ爺。ヘカテイアの言葉にも一理ある……何故そんなに頑ななんだよ?此処穢れの世界に堕ちたお前だ……もはや天上の父たる神には借りなんかあるまい?」
ヘカテイアとマモンを前にアザエルは苦笑いをする……
「儂の考えに父は関係ないぞ!?儂は自分の事を最優先に考えただけじゃ……『何処かに組みすれば何処かが良く思わない世界……』それが此処じゃろう?」
「違いねぇな……だが……早えほうがいいぞ?このガキが悪魔たる本質……『もう一人の自分』を得たら……その席は末席になるだろうからな………」
マモンとヘカテイアではない声で、突然アザエルと僕に向けて話しかけられた事で全員の視線がそちらに移る……
そこには
「なんじゃ……古神たるコアトルか……折角知恵を得た文明を壊した己が……何を偉そうに………」
「その名で呼ぶな……アザエル。お前とてアザゼルの古き神名で呼ばれるのは好かんだろう?」
「じゃあククルカンで良いのか?」
「マモン………貴様……我が死後も尚いけ好かんな……。自業自得だが……過ちさえ犯さねば此処にお前と肩を並べることもなかった……」
「なんだ?いけ好かんか!?じゃあ折角だ……また殺し合うか?平和の神と崇められたケツァルコアトル……意外に気性が荒いとは知られてねぇ仮面を持ったペテン師だったな?人知の域で創造神まで上り詰めたお前だったが……裏では何度も殺し合ったからな……俺とすれば好敵手とは認めてるぜ?」
「そんな事はどうでも良い……。今俺はその元人間のガキに用がある……どうしてソイツの魂の片隅に『トラロックの記憶と力の一片がが埋まってるのか……』それを聴きに来たんだ」
その言葉を聞いて僕は『ハッ』っとする……
僕が力を借りていた『古き神トラロック』は古代の神である……
そしてケツァルコアトルはその神々の一柱であり、便宜上は格上の神だ。
第二の太陽たるケツァルコアトル……平和を愛し人に文明を授けたしかし、第一の太陽の謀略により全てを破壊した神だ……そして人を猿にした経歴がある。
僕がお世話になった第三の太陽たるトラロックは、創造神話上、火の雨で地上を滅ぼし人間を死滅させ、そののち他の生き物に再誕させたのだ。
「そ……それは少し前に力を借りた事があって……数回ですかね……」
「トラロックが人の子に力を貸すとはな……そして今其奴が此処穢れの世界の住人になるとは……奴も浮かばれまい……。だがどうやって現世に戻した?」
「ククルカン……それは企業秘密って奴だろう?『コイツの居た世界』ではそう言うらしいぜ?」
「…………まさか………我々を知っているとでも?………」
そう言ってククルカンことケツァルコアトルは、僕をじっと見つめる………
「アステカ文明……第二の太陽ケツァルコアトル……マヤ文明ではククルカンでしたよね?」
「お……お前は………アステカ人か?それともマヤ人か?……その両方の知識を持ってるのはあの世界ではあり得んぞ?……当時であっても我々の口伝は消滅して僅かなはずだ……」
「自分がいた世界では……貴方達のその名前はゲームで語り継がれてます。そこから紐付いた知識であって詳細を全て知るわけでは無いんです……」
ケツァルコアトルは『ゲーム?……なんだそれは?』と言って頭を傾げているが、僕としてはそこは軽い説明に纏める……
何故なら僕よりマモンの問題が大きいからだ……
ケツァルコアトルは中立である勢力ではあるが、ヘカテイア勢力側に近い位置づけだという。
彼は創造と豊穣の神だが、死と密接な関係があるそうだ。
『死から生まれる創造』と難しい話になったので途中からはチンプンカンプンだったが、話の最中マモンが彼を煽るので、いつ殺し合いを始めてもおかしくない緊張感が続いていた。
「マモン……お前の魂胆は分かってる。今更俺を煽っても無駄だぞ?トラロックの力を持つガキと俺を組ませたくないのだろう?」
「くそ………やっぱり無駄か……。お披露目の時からお前の目線には気を付けていたんだがな……。まさかアザエルの爺だけじゃ無く、お前まで来るとは想定外だったぜ……」
「お前の城だったら行かなかったさ………。だが此処はヘカテイアの縄張りだろう?珍しくカサンドラの一件から縄張り出身者が続いたから、たまたま気になって来ただけだ」
マモンは『ああ……カサンドラの件絡みか……』というと、面白くない顔をする。
「どうした?マモン……。カサンドラが加わって以来、ヘカテイアの勢力が増しているから気にしてるのか?」
「あの馬鹿女……ヒロを追って来やがった時は此処まで化けるとは思わなかったからな!引き込んでおくべきだったと今は素直に反省してるさ……」
「あら?マモン……今の台詞をカサンドラが聞いたら喜ぶんじゃ無いかしら?」
「あん?今アイツいねぇのか?さっきまで居たじゃねぇか……何してんだ?」
ヘカテイアとマモンの会話を聞いて、カサンドラがいない事に気がついた僕は『どうして居ないの?』という視線をヘカテイアに向ける……
「またボイド様絡みなんだってさ……楔を打ちに行くって」
「ヘカテイア!それって異世界召喚の件?カサンドラはまだ続けてるの!?」
そう僕が驚くとマモンとヘカテイアが驚き返す……
「なに?貴方知らなかったの?半年も此処で殺しあってる間何も聴きかじらなかったなんて……それって貴方の世界では『情弱』って言うんでしょう?」
「何か実験してるのは何時もの事だと思ってたんだよ!僕にはボイドのDNAから自分と彼のクローンを作るって言ってたから……もう諦めたとばかり!!」
「諦めるだと?あの馬鹿女が諦めるタマかよ……アイツの目的はフォンターナの肉体を手に入れて事実上『妻』になりことだって言ってたぜ?」
「か………母さんの肉体を?はぁ!?……ちょっとマモン!!なら身体を奪われた母さんは?……」
僕がそう聞くと、ヘカテイアは『カサンドラの身体になるだけでしょう?入れ替えないと母にはなれないもの?』と当たり前のように話す。
「い………意味がわからない!!中身を取り替えるなんて出来るわけが!」
「馬鹿かお前?……俺たちは悪魔だぜ?中身を取り替えなくて何が悪魔だ?頭ボケるのはアザ爺だけで充分だぞ?」
「おいマモン!!儂はボケてなんぞおらん!!儂が何度もお前を消滅させているのを忘れたようだな?このお披露目会で消滅したいか?」
「うるせぇ……此処のところ負けが込んでるだけだ。そもそもヒロの戦闘訓練後にテメェが見計らうように喧嘩売ってくるから負けてんだ!本気の俺なら負けねぇよ!」
「ならば仮初の肉体で無く本体でこい」
マモンとケツァルコアトルそしてアザゼルは睨み合っている。
ケツァルコアトルとアザゼルは仲が悪い訳ではないが、特別仲がいい訳でもないようだ。




