第1020話「秘薬とお嬢様」
こんばんわー!\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/桃味のお酒を飲んでいますい!うまうまー!
暑い時はさらに美味いですねー!
前回までのお話……
精霊達の攻撃で制圧された貴族私兵と悪漢達。
しかしその時現れた日は、大貴族だった。
彼はの一言は重く、悪辣貴族達は逆らうどころか口を開くのさえ止める。
そんな最中現れたのは、帝国の姫殿下だった………
その女性は叔父達の静止を振り切り、僕へ近づき話を始めた。
「時に聴きますが……貴方様はダンジョンで秘薬を得られたというのは誠でしょうか?もし誠なら……皇帝陛下の為に献上される気は御座いますか?私共は冒険者の権利を承知しておりますが……もはや猶予がないのです!」
焦った口調でそう言った彼女は、何処でどうやってその情報に辿り着いたのかは正直謎だ。
何故ならドネガンもモイヤーも帰ってからそれを調べる時間は無かったはずだ。
位置関係からしても、帝都とコールドレインとは離れていて、一番近い渓谷を抜ける場合でもかなりかかる。
しかし姫様はその事を知っているのだから、話を説明する他ないのは間違いがない。
しかし姫様は僕に話す隙をあたえない……
「私の父は先の大遠征の際に屍のダンジョン遠征で呪詛をその身に受けてしまい、生きたまま屍人になって行くしか無いのです……秘薬を献上して戴けるなら、我がドレイマン・ランスロット家の名を持って必ず報いますので!!何卒薬を譲っては頂けませんか?」
「なりません……姫君!!迂闊にドレイマン以外の名を出すのは……如何に姫君とて……その名は軽々しく出してはならぬ物ですぞ!!」
ドネガンが慌てふためき、その口を閉ざそうとする。
だが姫は辞めようとはしない。
「良いのです!今は何としてでも薬を手に入れねば。今の陛下の状況からすれば、私達はなりふりなど構っている場合では無いのです……例え龍の名を語る事になっても、この取引は為さねばならぬのです!」
龍の名と聞いた瞬間、僕の中で何かが動いた。
湧き上がるそのナニカを必死に押さえ込むが、どう見ても龍に関係する何かだろう……
何故ならば、目の前の姫が名前を言った瞬間それが起きたのだから……
しかしそのナニカは、あっという間に力を弱めて消えてしまう。
「どうした?ヒロ……何かあったのか?」
その言葉は、ギルマスのテカロンが問いかけに投げた言葉だった。
ドネガンにモイヤーそしてお婆婆様にデイヴィットは、姫君の暴走を止めるのに躍起だったから僕の様を見ていなかったが、あからさまにおかしいと感じたテカロンだけは僕を見ていたようだ。
しかし、テカロンの一言は全員の気を引くには大きな一言だった。
僕は注目を一身に集めてしまう。
僕は誤魔化すための話を考える……
龍の絡みまで話したら其れこそ大変な事になってしまう。
既に僕は知り合いに水龍が二人そして、炎龍が1人、緑龍が1人居るのだ。
その上龍の力へ変異が大きく働きかけたら、覚醒しかねない。
そして同時に、この帝都で神格として祀られかねない。
面倒な悪辣貴族と王権派の板挟みは御免だ。
話す内容として一番適切なのは『秘薬』の話で間違いない。
何故ならば、既に秘薬はないのだ。
その注目は否応無く集まるだろう。
「あ……すいませんもう秘薬はありません。同じように差し迫った病人が居たので、差し上げてしまいました……。その人は僕をずっと世話してくれてた恩人なので最優先だったのです……本当にすいません」
「な!なんと……いやそうか……そうだな確かにギルマスにもその話には聞いていた」
「す……すいません自分みたいな底辺の人間が……皇帝陛下より先に助かるなんて……」
僕はディーナの名前は伏せているつもりだったが、気がつくと後ろに居た……
彼女は一部始終を聞いていたのか謝りを入れるが、彼女は何も悪い事などしていない。
寧ろ彼女を悪く言う奴がいたら、其れは全力で僕の敵として扱う事になるだろう……例え其れが国や騎士団であってもだ。
僕はそう思ってしまったが、お婆婆様の注視は別の箇所になっていた。
「な!なんと……部位欠損にそのアザはユニークモンスターのメデューサ・ボールの呪いじゃな?その歳で子供もおるのになんと難儀な……」
「え?お婆さんは……一目でお分かりになるのですか?」
「うむ!その呪いは秘薬か万能薬のみしか治せん。そして部位の欠損は秘薬のみじゃ。昔は錬金術で部位を治すポーションがあったそうじゃが、失伝しておるでの……。そもそも錬金術師など当に死に絶えて久しい。致し方ない事よ……じゃが……そのアザは薄れておる……既に回復に兆しじゃな!」
そう言われて僕は……『万能薬と部位特化ポーションで治せんじゃん!』と唖然としてしまう。
結果論だが、部位的問題はもっと早く解決した可能性がある。
しかし部位特化ポーションの効果の結果を帝都関係者に見られたら、そこから錬金術の情報を知るお婆婆様へ情報が渡り、結果的に帝国には居られなかっただろう。
そうなれば呪い効果でディーナは死んでいた。
ディーナを助けるには、秘薬が最適な手段だったと考えよう……
しかしディーナはそうはいかないようで質問をした。
「錬金術師?その人がいたら治ったのですか?では陛下も?」
「うむ!お主は元より陛下も治せたじゃろう。秘薬の様な物を製造するスキルを持っておると古文書があるのじゃ」
そう言ったお婆婆様は『じゃが問題もある。もしその錬金術師の生き残りが居たならば、世界中で奪い合いが起きるのは間違いがない。今の起きている戦争が大きく肥大するのは間違いが無い』と問題発言をした。
「錬金術と言うのは、何も金の精製が出来るから持て囃される訳ではない。その技術の高さに博識なる知識、そして多くの者を救うことができる、失われた古の儀式を有するからじゃ!」
お婆婆様の知識の多さには驚かされた。
僕は驚き顔を勘繰られる訳にはいかないので、僕はポーカーフェイスをして誤魔化す。
しかし問題は終わっていない……
皇帝陛下の危篤状態は変わらないのだから……
姫様は『錬金術師様がいれば……口惜しいです……』と言うが、僕は感情に負けて名乗り出る訳にはいかない。
「あの……そう言えば聞いてもいいですか?陛下の呪いには『万能薬』では効果は見られないのですか?大概の状態異常は回復できると思うのですが……」
「うむ……当然効果は見られるぞ?じゃがその万能薬は製薬できる薬師が限られておるんじゃよ。そして残念じゃが……帝国にはその域に達した薬師はもう居らんのじゃ」
お婆婆様の言葉にかなり驚き、そのあまり僕を直視するディーナは口をパクパクさせている。
僕は其れを見なかった事にして、お婆婆様と話を続けた…
「そんなに難しい薬品なのですか?」
「難しいも何も……製造のレシピさえ今は失伝しておる。失伝の理由は言えぬが……まぁ誇れた理由ではないのぉ……。じゃから今となっては、帝国お抱えの薬師がスキルレベルを最大まで上げる他ないのぉ……」
「ではダンジョンで入手を考えれば良いのでは?秘薬よりは入手し易いでしょう?」
「まぁダンジョンから万能薬は稀に出るが、ある意味秘薬よりもっと入手が困難じゃ」
僕は何故かと聞くと、至って理由は簡単だった。
『危険の最前線に立つ冒険者が、状態異常を治す薬をそうそう手放すはずがない』と言う理由だ。
そして残念な事に、市場に出ても秘薬と同じくらい悪辣貴族がその品を回収すると言う。
反王権派が其れを持っている可能性は濃厚だが、皇帝陛下を助ける意味がないので受け渡しはしないだろうと言った。
其れも当然だ……陛下が死ねば代わりに誰かがその場に立つ事になる。
そうなれば主導権は大きく変わるのだ。




