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第1019話「皇帝の娘」

こんばんわー_(:3 」∠)_未だにあぢぃです!夜なのに……


さぁ更新!!


前回までのお話……


秘薬を得た証言を買って出てくれたのは、ダンジョンから脱出したガルム達一向だった。


しかし彼等の証言を聞いて尚、悪辣貴族は実力行使で秘薬を奪おうとする。


遂にやらかした貴族の私兵や金で雇ったゴロツキに、精霊の攻撃をお見舞いした主人公は、新たな問題に巻き込まれてしまう……


 ものの数分で悪漢冒険者12名に貴族の私兵18名、そして街のゴロツキが8名が無力化された。



 それを見た他の悪漢や、他の貴族の私兵達は巻き込まれるのを恐れて、武器を投げ捨て。



 その行為は『戦う意志が既に無い』ことを見せる……という意味だ。



 ギルドマスターを含め僕を庇おうとしてくれた人は全て、目を見開き口を開けたまま微動だに出来ない。



 それも当然だ……


 今まで共にギルドで笑って話していた相手が、精霊を化現させ戦闘に使っているのだ。



 唯一話そうとしていたのが、20層で今日僕が助けたガルムだけだった。



 頭に手を当てているのだが……偏頭痛だろうか?



「だから言っただろう?馬鹿共が!!見た事も無い戦い方をするんだソイツは。おい!ヒロそろそろ止めておけ。それ以上やったらアイツら全員馬鹿貴族の小倅のせいで死んじまう……」



 ガルムはそういうと、しゃがんで泣いている悪漢を蹴飛ばして追い払う。



「いいかお前ら!!心を入れ替えてちゃんと働け!!この大馬鹿者が!」



 そう言ったガルムは、ある一団を見てビックリしている。



「久しいな……ガルム騎士団長……いや……今はもう只のガルムか……」



「は!帝国の剣デイヴィッド・デザート様……何故この街へ?」



「うむ……ちょっとばかり用事がな……。悪いが、お前との話は後にさせてくれるか?何せ大馬鹿者がやらかしたとみえる……」



 そう言った大柄の男は、僕の元へ来ると大きな声で語りかけてきた



「青年よ!怒りが収まらぬのは分かる……だが今は剣を納めてくれぬか?我が国の貴族が本当に失礼な事をした。帝国の剣の家名を持って必ずその者達に裁きを加える故、今は怒りを鎮めて貰えぬだろうか?」



 僕へそう言った大柄の騎士は、兵士に指示を出す。


「今すぐ此処にいる貴族を全員連行せよ!!歯向かう者は、その場で素っ首を切り捨てる事を許可する!!」


 そう言った大柄の男は『この大馬鹿者共め……その責任を申し渡すまで、各々家で大人しくしておれ!』と吐き捨てる。


 その言葉を聞いた瞬間、貴族の全員が項垂れる……相当ヤバイ相手なのは間違いがない。


 しかし帝国の剣という異名には聞き覚えがある。


 僕は戦闘はもうないと踏んで精霊を側まで戻す。


 戦闘継続の事も加味して、まだ化現は解かないが……



 するとその騎士は僕に、神妙な面持ちで話しかけてきた。



「その……なんだ?その肩にいるのは……魔物なのか?君は力ある魔物を使役できるのかな?確かテイムとか言ったような気がするが……」



 そう言った騎士は、マジマジとサラマンダーと水っ子を眺めている。


 精霊信仰をしていない人は稀に居るが、その存在を全く知識として知らない相手は初めてだ。



「ふむ……稀に冒険者の中にいると聞いた事があるが、その様な凶悪な力がある魔物を使役した冒険者の事など、今まで聞いた事は無いのだがな?野に下るとはよく言うが……何処ぞの猛将とお見受けしたが……お名前を聞いても?」



 そう言った騎士は自分の自己紹介をした。


 名前はデイヴィッド・デザートと言い、異名は帝国の剣という。


 ガルム曰く大貴族であり、帝国を代表する人物の一人だそうだ。



 しかし意外なのは精霊信仰だ。


 帝国は水龍を祀る国だが、精霊を知らないにも程がある。


 町人もさることながら冒険者も精霊を信仰してない人が多い



「この子達は、水と炎の精霊ですよ。帝都では精霊を見たことが無いので、精霊の信仰はあまりされないと言われましたが……この街も同じなんですね?」



 そう言った矢先、騎士デイヴィットの後ろに居た老婆が、目をむき出しながら叫びながら飛び出してきた。


「まさかとは思ったのじゃが!やはり精霊様の使い手……偉大なる精霊使い様で御座いましたか!!あのカナミというお方以外にも、この地にまだ精霊様のお使いがおられたとは……それもコールドレインと言うこんな身近に。なんと馬鹿げた方を相手にしたんじゃ!領主たるコセ家のバカ倅は……」


 そう言った老婆は、歳の割には大きな怒声でイコセーゼを呼びつける。



「ダンジョンの下層にさえ潜れない私兵如きが、精霊様が扱う魔法の相手など出来ようもない。焔に巻かれて始末されなかったのをありがたく思え!!」



 そう怒りを露わにした老婆は怒りが治らないのか『イコセーゼ!!お前は帝国領を火の海にするつもりか!この大馬鹿者の大痴れ者が!それにしてもお前は噂通りの大うつけなのか?お前の父の責を心しておけ!!ふがふが……」と言う……


 勢いよく文句を言ったせいで、入れ歯が口の中から無くなったようだ。


 その様子を見ていたデイヴィットは『それ程迄の力なのですか?お婆様』と自分に足らない知識を補おうと聞いき始めた。



「精霊様の力を満足に扱えた者は、今まで知る限り今は亡きS級冒険者に一人だけじゃ。それも呼ぶのにかなり前からの準備を要したのじゃ!今の帝国の魔道士では準備さえ出来んから、精霊魔法は使えぬよ!」



「な……なんと……帝国広しとされますが……只の一人もですか?」



「うむ……一人もじゃ!そしてのぉ……その後に現れたお方が、炎の精霊を扱うカナミ様じゃ!そのカナミ様とて帝国民ではなく王国に籍を置いておる……」



「ぬぅ……それでは……帝国として精霊使い様を持たぬのは些か情けのうございますな!」



「今そんなことなど問題じゃないぞ?デイヴィット。既にこうして居られるのじゃ!!その上、炎と水の精霊様を同時になど……亡くなった冒険者様でも、先日いらしたカナミ様とてあり得んかったわ!!」



 そう言ったお婆様は『それも……<おいで>の一言で2属性の精霊様を呼ぶなんぞ……もはやこの目で見れた事を、産んでくれた親に感謝することしか出来ぬよ!!』と水っ子をマジマジと見る。



 水っ子はその視線に気がつき、すぐに僕の後ろに隠れて……



『あのお婆さん……丸呑みでアタシを食う気だよ!絶対そうだ……』と念話を送ってくる。



 水っ子をゼリーの類と思っている訳ではないから、安心して欲しいものだ。


 しかしその行為を止める者がいた……

 

 遠くに止めてある数台の馬車から飛び出たその女性は、徐に駆け寄る。

 

 そして興奮するお婆さんに注意を促した。



「お婆様……何をなされているのですか?今は……急を要します。父上の為に秘薬の件を聴かねばなりません!!」


 そう言った女性は『叔父様達の伝手を頼ろうと……この街に着くなり、探し求めていた秘薬の話を聞いたのですよ?悪辣貴族達に奪われる前に……入手を急がねば!』と慌てる素振りを隠さない。



 そして女性の後を追う様に走り追いかける貴族には、どう見ても見覚えがある……


 お嬢様と呼ばれた女性を静止させたのはモイヤー公爵であり、その後ろを追いかけてきたのはドネガン公爵だった。



 しかし二人は、突然の出来事で僕が目に入らないようだ。



 慌てふためくその様から、その女性が相当な重要人物である事は想像できる。


 僕を目の前にして、なんとか馬車へ戻そうと躍起になっている。



「お嬢様……姿を見せてはなりません!!その交渉はちゃんとー我々が………うん?お……おぬし!ヒロ?……ヒロではないか!!」



「なんだと?モイヤー……今ヒロと言ったのか?ペダルファお嬢様、その者が妹君もよく知るヒロで御座います。その者さえいればダンジョン踏破は……って!!ちょ……ちょっと待て!何がどうなってるのだ?」



 妹君と言った時点で正直困った。


 状況から推察するに、ある意味想像はついていたが……もはや点と点が線で繋がった上に、その線で『危険!』と文字が浮かび上がっている……


 目の前にいるのはそのピラミッドのほぼ頂点、エクサルファのお姉さんであり、皇帝陛下の娘と言う事だろう。



 何故ならばドネガン公爵とモイヤー公爵を叔父様達と呼んでいるのだから、身内なのは間違いないのだ。


 その叔父は、皇帝陛下の血を分けた兄弟だ。


 

 ギルマスに聞いた話では、皇帝が長男であり、二男と三男がドネガンとモイヤーなのだから……



 今の彼等を見る限りそれなりの理由があり、帝都についた瞬間ドネガン公爵とモイヤー公爵は、蜻蛉返りでコールドレインに戻ってくる羽目になった様だった。


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