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第1018話「真なる脅威と恐るべき対象」

更新ですぞ!とうとうオープニングまで到達!ꉂ(≧∇≦)長かったねぇ……


前回までのお話……


ディーナ宅を出た主人公はギルドへ向かうも、悪辣貴族に難癖を付けられてしまう。


その貴族とは問題児イコセーゼだった。


彼は力づくでも秘薬を奪おうとする……


しかし彼は知らなかった……既にその秘薬は存在せず消費されていたことを。


そして彼が相手しようとしていた相手は、ダンジョンの主よりヤバイ相手だと言う事を……


「貴方様も承知でしょう?この者はダンジョンに潜るときは、ほぼ必ずソロで潜っております。何度止めても辞めないソロ活動の探求者ですぞ!!それに秘薬を取得した時の彼の状況を確認した者がおります!」



 ギルマスが手招きをすると、後ろから冒険者達が現れた。


 今言った『確認した者』なのだろう……当然その顔には見覚えがある。



 というより無事帰れて何よりで、寝なくて良いのか微妙な人材だ。



「ああ、20層で見たぜ!そいつの戦いっぷりは異常だ!こっちは死にそうなのに、そいつは鼻唄まじりに魔物をミンチするんだ……」



 そう言ったアンガは『魔物以上のバケモンだ。ちょっかい出すなら街の外にしな。ってかよぉ俺は寝れなくて迷惑だっての。そもそも俺のダチに手を出してんじゃねぇよ!お前ら……全員俺が殺すぞ?ああ?俺が誰だか分かってんのか?』と半ギレだ。



 レイラに至っては非常に面倒な顔をして……


「アンタ達マジで馬鹿なのかい……っていうか金の為にミンチになるのかい?そもそもソイツを知っているんだろう?マジで止めときな!」


 優しくそう言ったレイラは『地下20層の魔物ってのはアタイ等が6人がかりで、やっと1匹相手に出来るんだ。ソイツはそこに鼻歌を歌ってソロで魔物を狩り尽くしているんだよ?』と欠伸をしながらいい『あんた達1000人集めても無理だって!』と言葉を付け足す。



 まるで興味がないのか、手のひらをひらひらと動かしている。

 

 そしてリーダーのガルムはと言うと……


「ワシらが6人がかりで戦って、一つでも連携を間違えれば大怪我を負う階層なんじゃぞ?そもそも儂等はその階層で、今日死にかけたんじゃ!!そんな魔物を一人で散歩しながら蹴散らすんじゃ……」


 ガルムは今日の事を思い起こしてため息をつく……そして『彼奴に喧嘩売るなら街の外でしとくれ!!帰る街が無くなるのはワシが困るからな。死ぬなら街の外で勝手に死んでくれ!』と言い始める。



 ぺムに至っては『ダンジョンならば幾ら破壊されようが翌日には元に戻ります。ですがね……街はそうは行きませんよ?その方が本気を出せば、この周辺など一瞬で消し飛ぶでしょう。言うなれば歩く暴発魔法なんですよ?その人は………』といってダンジョンと街の違いを引き合いに出す。


 今日魔法を沢山見せたので、そう勘違いしても当然かもしれない。


 見た魔法から僕が危険人物だと言いたいのだろうが、歩く爆薬扱いはやめて頂きたい……



 そう思っていると大怪我を負っていたクレムまで声を上げた。



「いやいや……アホ言うな。20階層で今日俺は死にかけたんだ!!そこにコイツが現れて雑談しながら魔物をソロで蹴散らすんだぞ?そんな奴が街で暴れてみやがれ!こんな街なんか瞬きする間に瓦礫の山だ……」などと必死に訴える。


 その必死さ加減はある意味常軌を逸している。


 止めようと言う気があるのではなく、巻き込まれたく無いと言う気持ちが前面に溢れていた。



 そしてクレムは更に『鼻唄歌いながら腕を振るうと、ミノタウロスがこんがり焼かれて輪切りになるんだ!全力で暴れたら此処は勿論、帝都どころか周囲は草一本も残らぬ焼け野原しか残らんぞ!」と言う。



 しかしそんな事はならないので安心して頂きたい……


 ゼフィに頼めば多分帝国全土くらいは燃やしてくれるだろうが、運良く未だに居場所はわからない。


 焼く事はフランメも得意だが、精霊信仰が邪魔をしてそこまで本気では焼かないだろう……


 だから煤だらけの城くらいは残る筈で、真っ黒な黒助が皆さんのお友達になってくれる筈だ。



 そして僕は、今知り合いのサザンクロスや、ウィンターコスモスの様な超広範囲攻撃を持っていない。


 龍化もするつもりは無いのでその心配はないと伝えておきたいが、龍種とお友達の情報は藪蛇だろう。


 

 だんだん聞いているのが苦痛になってきたが、トドメはラックだった……



「あっしだったら、絶対に手は出しませんね。貴族の旦那……この人にやられるなら宝箱の爆弾トラップの方が、手足が無くなるぐらいで、まだ命が無事でさぁ!」


 よし……石化ガスの薬品を開封してプレゼントしよう!


 手足はしっかり残るし、未来永劫『ラックの石像』として存在できるのだ……


 だから彼なら心から喜んでくれる筈だ。



 僕はプレゼントの石化ガスを作ろうとするも、ギルマスが前に出てイコセーゼに最もらしい事を言い始めてしまう……



「そもそも、ダンジョンの主を単独討伐できる者を相手に対して、20層にさえ行けない冒険者や私兵など何ができましょう?」



 ギルマスが貴族の間違いを正すように捲し立てると、周りの街の住人も気になり集まり始める。


 それを見た貴族の倅、愚息のイコセーゼは焦った声で檄を飛ばす。



「う………うるさい!お前ら何をしている。早くそいつから秘薬を奪いとれ!言う事を聴かない冒険者共など、少し位痛い目を見せても構わん!此方は貴族の権限と領主の権限で、幾らでもギルマスなど不信任で替えられるのだ!!」



 『どうして悪役は何処もこうなのだろうか?……』と思ってしまう程、イコセーゼは聴き慣れた台詞を吐く。



 その激でゴロツキや金で雇われた冒険者達、そして貴族の私兵が一斉に武器を抜く。



 ガルム達はそれを見るとあっと言う間に武器を抜き、一番面倒な騎士達を相手にして圧倒する。


 対人特化の騎士だったが、ガルムは元々騎士団長の座についている。



 ガルムの指導で、仲間はその対応策を身につけているのだろう。


 相手を苦もなく圧倒する。



 僕は向こうがやる気のようだから『貴族相手だが軽く捻るぐらいなら許されるのだろうか?』と相談をしようとした。


 しかしギルマスに聞く暇もなく、貴族に金で雇われた暴漢達は一斉に僕に襲いかかって来た。


 仕方ないので僕は腰に下げた水袋の口を開けて水っこを呼ぶ。


 その後近くの壁に掛けられている松明に左手を翳す。



「おいで、水っ子!にサラちゃん!」



『ああ!もうコレだから人間は……堕落も堕落……そんなんじゃ穢れた人生しか歩めないわよ!?いい事?コレを見てしっかり精霊信仰しなさい!!』



『グルル!!クワァァァ!!』



 化現したサラマンダーは誰よりも早く攻撃に移る。


 相手を殺さない程度にと気持ちを込めていたのだが、サラマンダーは遠慮なく焔を放つ。



 口から放たれた業火はサークル状に広がると、あっというまに内部が燃え盛り悪漢を包み込んだ。



「ギィヤァァァ!?嫌だ!!死にたく無い………がぁぁぁぁぁ!!」



「火が火ガァァァァ…………」



「ぐひぃぃ!?あじぃ!!焼ける!燃える!!だずげでぇ………」


 

 その言葉を聞いた水っ子は『ウォータープリズン』と唱える。



 服が燃えて熱がる悪漢達は、今度は水に放り込まれた。



「ガボガボ!!ゴバァ……ゴボゴボ」



「ガボガボ!ガボガボ!コボ……ゴボガボ!!」



「ガボガボ!ブクブク……ガボゴボ……ブクブク……」



 えらい熱そうで……えらい苦しそうだ……


 突然燃やされ非常に熱く、直後に冷やされたうえ酸欠で苦しそうだ……


 僕はこの真似だけは絶対にしたくない。


 僕がやらせた事だが……まぁ曖昧な理由で襲ったのだから、これに懲りて反省くらいして欲しい。



「もうしませんか?反省するなら精霊達に止めるように言います……」



「「「ガボガボゴバガボゴバカボガゴ」」」」



 全く何を言っているかわからないが、数名は土下座をしようとしているのだろう。


 足を抱えて正座でクルクルとウォータープリズンの中を縦に回っている。



 『鼻から水が入って苦しいだろうに……』と思って僕は解除するようにいう。



「ガボガボ……ゲホゲホ!!……ああああ…………もうしません!自分が馬鹿でした!!毎日火と水の精霊にお祈りします!!すいませんでした!!」



「精霊様……自分もです!!馬鹿をやってすいませんでした!!あああ………すいまぜんでしたぁ…………」



 間近にいた悪漢達は横になったまま泣きながら水っ子達に謝りを入れる……



 僕には全く謝らないので若干イラッとするが……致し方ない。


 いきがって仕掛けた結果、痛めつけられた相手に謝る事は、100歩譲って仕方ないと諦めた……



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