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第1017話「欲に駆られたイコセーゼ」

こんばんわー!更新ですぞー!


前回までのお話……


ディーナはとうとう回復した!


そして回復に使われたのは、万能薬では無く秘薬だった。


しかしそれが問題を呼ぶことになる……




 僕はヴァイスの人間性を見て、その様に若干感化されていた。


 だからこそアドバイスをするべきだと思い、最下層の情報を提供することにした。



「ヴァイスさん、最下層の化け物は二連戦します。瘴気が尋常じゃ無い化け物で、更にその配下を召喚します。そして討滅後に再度脱出不可になり連戦です!充分な装備と回復薬、そして瘴気対策がなければ全滅します……」



「な!?なんと……そんな化け物でしたか!!ありがとう貴重な情報を。騎士団は秘薬の存在を確認した今、全力でそこを周回することになりましょう。本当に素晴らしい情報を有難うございます!」



「いえ……今回は申し訳ないですが……猶予が全く無いディーナさんを優先しました。すいません」



「何を言いますか……得た財宝は持ち主の一存でどうとでもするのが慣わしですぞ?それが国とて違いはない!……ところで……いま今回はと仰られたのか?」



「ええ……手伝いますよ?お人好しで有名なので……」



「く………くはははは!!我は危うく道を誤るところだった………はぁ……ガルム殿の言う通りだ。信じる者を間違えれば、得られる信頼は少ないと。……はぁ……もっとわたしはあの人の様に精進せねば!」



 そう話したヴァイスは『では後程祝いの品を持って来させます!わたしは会議をせねばならなくなったので、部下が来ます。ディーナ殿、全快なされて本当によかった!』と言って家を後にした。



 そして去り際に『ヒロ殿貴方は既に各貴族の重要冒険者リストに載っている。それは生死を問わずと言う意味だ。助けて頂き申し訳ないが、早く街から出て身を隠されよ……騎士団として不名誉な事しか言えず申し訳ない。だが……帝国内で秘薬の存在は今や……うむ……何でもない。忘れてくれ』と言って最後まで言わずに出ていった。



 ディーナの事を考えれば言うべき言葉でないと思ったのだろう。


 ヴァイスと言う男は、周りに対しても気が回る、中身がしっかりした男だったのだ。



「ディーナさん、今回のお客さんは人として、しっかりした人だったので問題は無かったですね。でもコレが続くとは限らない……。下手すると……今日をもってさようならをせねばならないかもです」



 僕がそういうと、ディーナもそれを理解していたのだろう……


 涙ぐみながら『本当にすいません………わたしのせいで犯人の様な扱いにさせてしまって……。もし何かあればわたしを突き出して下さい』という。



 だから僕は『ソロで階層主と戦う相手を敵に回して、彼等が生きていられるとでも?』と言う。


 ディーナは泣くのを堪えつつも首を縦に振る……



「じゃあディーナさん、行ってきます!メルルちゃんにはちゃんと肉を食べさせてあげて下さいね?」



「は……はい!……うふふふ。ちゃんと明日からもお肉は食べさせます!ヒロさんのおかげで脚はこのとおりですから!」



 そう言って彼女は回復中の透明な足を伸ばして見せた。



 僕のディーナ一家への懸念はもうない……ドドムは待てば帰ってくる。


 何故なら頼もしい仲間が増えたのだから……



 メルルには悪いが、ドドムに知らせに行く余裕は今の僕には多分ないだろう。



 全力で抗えば負傷者が出て、関係者であるディーナ親子は犯罪者を匿った家族になるのだ。



 僕の向かう場所は『帝国以外の何処か』しか選択肢はない。


 そしてドネガン公爵やモイヤー公爵が出てくる前に、僕はこの街を出なければならない。



 生憎彼等は今朝帝都に帰った。


 運が良いのか悪いのか……情報を聞きつけて戻るにも数時間はまだ猶予がある。


 何故なら踏破情報が出て1日も経ってない……過ぎていても3時間程度なのだ。



 ◆◇



 僕は回復完了を告げにギルドへ向かう……


 そしてその報告が終わったら、テカロンに別れを告げて帝国からは避難する予定だ。


 今の僕は、モルガンの力にはなれない。



 帝国皇帝陛下を助けなかったと言うレッテルを既に得てしまった。


 そうなれば、関わった者は反逆者の仲間にしかならないからだ。



 僕は堂々とスラムから広場を抜けて、ギルドを目指す。



 悪辣貴族に雇われた悪辣冒険者が数名凄んで来たが、威圧を解放すれば誰もそこには残れない。



 レベルが15にも満たないゴロツキが、最下層の階層主とソロで戦う相手に勝てると思っている時点で馬鹿なのだ。


 ちなみに僕のレベルは既に99で、取得経験値は増え続けている。


 だが100レベルの大台には乗れてない。


 何か原因があるだろうが、その事を相談できる相手はこの世界にはまだ居ない。


 

 モルガンくらいが妥当だろうが、今や既に相談をしている場合でもないだろう。



「やっと見つけたぞ?ちょこまかと逃げおって!!お前は俺が目をかけてやったと言うのに……恩を仇で返しやがって……」



 その言葉はギルド正面の大通りを歩いてる時にかけられた。


 僕は逃げているつもりは無い。



 ディーナへの仕事を完了するために家に行っていただけだ。



 しかし大声を出す馬鹿貴族には確かに見覚えがある。



 コセ家のイコセーゼ坊ちゃんだ……念願の男爵の爵位は貰えたのだろうか?


 そう思っていると、向こうからその詳細を教えてくれた。


「さっさと秘薬をよこせ!それが有れば我が家名はこの国にもっと広く名が知れ渡るのだ!わたしの爵位も父の爵位も上がる!!父は晴れて侯爵に!!わたしは伯爵だ!おいお前……潔く渡せば今なら命だけは助けてやる!」



 大声でそんな事を言い始めたイコセーゼだが、同じように僕を探していたと思われる見知らぬ貴族まで集まってくる。


 口々に『アイツはうちのお抱え冒険者だ!デマを言うな』などと罵り合いを始める……



 当然イコセーゼもその罵り合いを受け入れて喧嘩をするが、あの宝石ゴテゴテの短剣を持ち出して自慢して見せている。


 財宝事情も含め、イコセーゼが一歩リードだろう。



 しかしその馬鹿げた話を聞いた、正義感満載な男が声を上げる……



「コセ家のイコセーゼ殿!!冒険者ギルドのギルドマスターとして、一言申し上げさせて頂きます。冒険者達がダンジョン内で手に入れた物の権利は、その者達にあります!渡せば命は助けるですと?この街を治める長子が何と馬鹿な事を仰るか!!」



 威圧120%の冒険者ギルド・ギルドマスターテカロンの周囲への圧力は半端なかった。


 騎士達でさえ、自分達は間違いを犯していると実感して顔を見合わせて居るくらいだった。

 


 ギルドマスターはゆっくりとイコセーゼへ近づき、上から睨みつけて話を続ける……


「貴族と言えども、冒険者達が得た物を強制的に接収する権利はどの国でも許されてはおりません!ちなみにこれは、前の皇帝陛下が決められた事であり、現皇帝陛下も推奨されてます」



 そう言って一枚の羊皮紙を取り出し、目の前で見せつける。

 

 それは冒険者と国の規約であり『如何なる財宝も所有権を認める』とのサインが入っていた。



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