短期大学の白鳥さん
僕が高校を卒業して、寿樹が神職の専門学校へ行っている中、僕はアルバイトをしながら短期大学へ進んだ。
その短期大学へ通っている間は 寿樹に会っている暇はなかったが、友達は離れていても ずっと友達だと そう信じていた。
僕の家は片親のため、アルバイトをしながら学校へ通っていた。
そのアルバイト先はサイゼリヤで、先に働いていた白鳥さんという女性に教わりながらバイトを続けた。彼女は同じ短大の学生で、行く学校はちがえども 同じバイトをしながら大学費を稼ぐ同士だった。
僕は、名前からいっても美しい白鳥さんが好きになったかもしれない。わからない。でも、そうだったかな?彼女は会ったその日から、ど天然だった。
案の定、周りのバイトの人たちも気が付いていたらしい、それは後で知った。
彼女の特徴を言ってみれば、髪は長くて色は黒かったと思う。いつも縛っているからその他の特徴はよくわからない。身長も高くてスラッっとして化粧も付けま睫毛ばっちりの美人さんだ。
なのに、彼氏はいない。
その性格のせいか?
僕は、初めは意識していなかった。仕事を教えてもらっている割に、凄い天然だなーと思ってしまうことは申し訳ないと思っている位だったからだ。
仕事は一応出来る。出来ている。失敗もしていない。
じゃあ、何が?そのー イマイチなのか?
多分、彼女の口から出る私生活の不思議だろう。
サイゼリヤに務めている割に、好き嫌いが激しい。それは、その人の個性なんだろうけど仕事の合間に話されると、ちょっと引いてしまう。
バレンタインデーにチョコをもらった。
本当は受け取ったらまずい気もしたが、学校も違うし見られてもバイト仲間だけだから受け取った。
白鳥さんにお返しをするにも彼女の好き嫌いが激しいせいで、全く決められなかった。
直接、本人に聞いてみることにした。
すると彼女の口から、食べ物はいらないと言われた。
代わりに、連れて行ってもらいたい所があると、言われて二人の休日にそこへ行くことになった。
王子動物公園
パンダとコアラのグッズが多くて本体はあまり満足に見られなかった。
これって、デートじゃないのか?
明かに、入園料出して食事代を出してお返しより高くなったと思うが、一緒に行ってくれる女の子もいないのでこれはこれで良かったと思う。
それより、ここで彼女のど天然ぶりがさく裂する。いや、彼女の感性に感心してしまったというか、僕はここが弱いらしい。
動物と話せる。
また、他人が聞いたら白鳥さんのど天然ブりに笑われるだろうが、彼女はその感性で動物の感じているだろう感情を言葉にして表せるのだ。
いたるところの、柵の中の動物の気持ちを見た瞬間から話し始めるのだ。
僕は初め恥ずかしかったが、後々つじつまを合わせると なるほど まんざら嘘でもなさそうだと思えてくるから不思議だ。
「白鳥さん、どうぶつの気持ちがわかるの?」
「苗字で呼ぶのは 固いから 春美のはるで呼んでいいですよ。」
いや、白鳥さんでしょ!でも、まぁ動物園内では はるさんと呼んであげるか。
「じゃあ、はるさん。」
僕は、この白鳥さんを好きだったのだろうか、それとも動物を愛する気持ちに 寿樹がキツネにお供え物を密かにあげるものに通じる何かを感じたのか 動物の言葉をしゃべる白鳥さんは好感が持てた。
これが、白鳥さんと初めで最後のデートだった。
今頃、白鳥さんは、彼氏と動物園で同じことをやっているだろうか?好き嫌いが激し過ぎたので、彼氏と同じものが食べれるといいな。
美しい彼女は、内面まで美しかったのだと 思う。