寿樹くんは二人いるのか?
中学時代は悪い事をよくした。
学校をサボって部活をサボって、でも先生は僕にあまり酷く叱らなかった、それは母親が亡くなって転校しているからだと推測する。
生活指導の先生しか僕に話しかけてこない。
僕は友達もつくらないで塞ぎ混んでいた。
そんな時、寿樹という同じクラスの生徒とサボリが良く被った。
寿樹は顔の作りが整っていてまるでお人形のように綺麗な少年だった。
それもそのハズ、彼は宗教法人の神童と呼ばれる特別な産まれだった。
この時の僕は何も知らない。
この彼との出会いで僕の人生が変わるなんて思ってもみなかったから。
……寿樹が好きだ。
けたたましく鳴る目覚ましに飛び起きた。
なんだ、夢か。
お父さんはサラリーマンで、朝はお婆ちゃんがご飯を用意してくれる。
母親が病気で亡くなってから、お父さんの実家へ引っ越しをした僕は、学校に馴染めず友達も作れないでクヨクヨしていた。
そう、さっきの夢の通りなのだ。
ばあちゃんの用意してくれた朝ご飯を食べるとまだ空気の冷たい外へ出て自転車をこぐ。
そう、ここは田舎なので中学校まで遠いのだ。歩いて帰ると真っ暗になってしまうので、登下校は自転車使用可となっている学校なのである。
それはいいとして、やる気のない僕に興味を抱かせてくれたのが、先程夢にあった寿樹くんで。
彼は一見男の子の様で僕はアソコが付いて無い所を見てしまった。
だから、女の子だと思っていたら夏のプールは、男の子だった。
そして、昨日話した事が今日には通じなくなっていることもシバシバあって、これはもしかして、寿樹くんは二人居るのでは?と思い始めた。
一度寿樹くんの家にでも行って寿樹くんが何人居るか確かめてみたいものだ。
暇な僕は彼の家を探し始めた。
田舎なので、知らない山と山間にある村は独特な雰囲気をかもち出していた。
道路だと思って入って行ったら、村の一本道で行き止まり。周りは知らない家と家畜の豚にキバがあって、それが酷く体が大きくブギュー!ブギュー!と鳴き叫び今にも檻を食い破って出てきそうで怖かった。
確か、寿樹くんはこんな村に住んでいたような気がしたが、ここでは無いことを祈りたい気分だ。
後日、寿樹くんの家を聞いてみると自分は御師という集落の山の上に住んでいるという。
許可が無ければ入山出来ない宗教法人らしい。
そんな難しいのか、とため息をついていると、送迎の車が朝と夕方の2回来るから、1泊するつもりなら来れるという。
1泊!考えてみなかったが、1泊もしたら寿樹くんの正体もわかりそうなものだ。
次の日も一緒に登校したら良い話だし。
直ぐにその話を受けた。
あーワクワクするなぁ。初めて友達の家にお泊りするよ。