王と教皇
王様と教皇様の対談のみなので短めです
教皇は医局を後にすると、その足でシェルナ王に謁見する為にお付きの見習い神官と共に王宮の回廊を王の使者を先頭に足早で歩いていた。目的地は王の応接間…ここが一番話しやすいことから王がそちらに来て欲しいと迎えの者に伝えていた、その為一行は謁見の間ではなく王の執務室へと案内された。
広い王宮内を迷いなく、ゆっくりでも速足でもない丁度いい歩幅で使者は進む…そして
「教皇猊下をお連れしました」
使者が教皇の到着を伝えると
王の応接間の扉の前に居た二人の近衛警護として立っていた、二人共教皇に礼をし
1人が執務室の戸を開けて中で王が待っていることを伝える。
教皇は開かれた扉を見習い神官と共にくぐり、部屋の最奥に居る王の元へと歩みを進め
執務室に設えられたソファーには肩より少し長いすんだ金髪を首で束ねた壮年の身なりの良い男性が既に座っていた、彼がこの国の国主レイオス・ルス・シェルナであった
国王は立ち上がり一礼すると教皇に向かいのソファーを勧め教皇が座り、見習い神官が部屋を出て行った後、自分も元座っていたソファーへ腰掛け、そしてレイオスはいきなり本題を切り出した
「率直に問いますが、今回の聖樹の枯渇はなぜ起こったと思われますか?」
と切り込んでいく、教皇も難しい顔で聖樹枯渇について考えるが…答えは出ない…た一つ言えることは…
「誰かがかなり魔力を消費する程の魔術を施行したとしか…」
「でしょうな…どの国が行ったかまでは、現段階では判らんな…その前に行わなければならない儀式もある」
「葬送花の儀ですね…それはこちらで行いましょう…」
葬送花の儀…
この世界では10歳になると国中から魔力の有無を測定する儀式がある
国によって対応は違うが、ここシェルナでは魔力ごとに宮があり、魔力持ちと判定された子は
両親から引き離され、城の奥まった場所にある宮で衣食住を保証され、飢えることなく生活を送れる…が
魔力保持者の保護のために、彼らが宮を出られるのは親族の葬儀と自分の葬儀の時だけ…
国の為に殉じた枯れた花を家族の元へ戻す儀式…親からしてみれば可愛い盛りに引き離され、自分の死に目に一目見るか…最悪冷たくなった子が手元に戻ってくる、だがそれがこの国の在り方…シェルナの守護の為…
頭で納得しても心の部分では納得できてはいないだろう…しかし、今回の件で葬送花の儀を執り行わなければならなくなった…シェルナ側もフィークス神聖国も…その為王と教皇の合意で、合同で儀式を執り行うことになったのだった。
そして、葬送花の儀を合同で行う事、聖樹の魔力枯渇についての調査を合同で行うこと等を
レイオスの近習がの持ってきた羊皮紙に認め、血判を押して、今後の協力体制を
改めて確認しあい、握手はしないものの軽く頭を下げ、レドリアは部屋を辞した。
教皇が部屋を辞した後、レイオスは部屋の片隅に声を掛けた
「今回の件、大事になりそうだ…情報収集部とゼノラータ情報部に別れ
情報部は国内、そしてフィークス神聖国の情報を集めろ、ゼノラータ班は今まで通り奴らの動向を探れ、今回の件で結界が薄くなったことに気づいているかも含めて」
「「かしこまりました」」
二つの声が部屋の片隅から声がしたかと思うと、その気配はすぐに消えていった
そして、誰も居なくなった部屋で、レイオスは1人ため息を吐き、天井を見上げ
「フィークスとゼノラータ…戦争になったらこの国は終わるな」
仮にフィークスと戦争になった場合、横合いからゼノラータに攻められれば
シェルナの勝率は0となる。国民の為にそんな事にならないようにするのが王の務めだ
その為の結界…魔力最高位の白銀位をもって生まれてきた自分の使命
王はため息を一つ吐くと、結界の間へと向かうのであった。
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