枢機卿と巫女姫
綾は豪奢な服を着た男に続き、薄暗い螺旋階段を上り、大きな広間に出た
そこには慈愛の笑みを浮かべた女神像が祀られていた。思わず見上げてしまうと、
それに気づいた先頭の男が足を止め
「これは我らの主神、フィークス神です。慈愛を司っておられるのです」
「優しそうなお顔ですね、確かに慈愛って感じがする」
「巫女姫様の顕現もフィークス様のご慈愛ゆえでございます」
そう言うと男は女神像に一礼し歩き始めた、綾もそれに習って一礼してから男の後を追った
そして綺麗に整えられた回廊を奥へと進むと、衛兵が入り口に立っている扉の前までやって来た。
男は衛兵に巫女姫をお連れしたと言うと、あっさり扉を開き、
男は部屋の中へと綾を伴い入っていた。通り過ぎる時ちらりと衛兵を見る
(礼服系の騎士服か…良い!中は鎖帷子よね…)
騎士好きの綾はちらっと見ただけで大体の事はわかった
…本当はじっくり見たかったが
案内役の男が部屋に入っていくのでついて行く。
そして、良く日の当たる窓辺に佇んでいた初老の男の前で頭を下げた。
「リーダス枢機卿、巫女姫様をお連れしました」
その言葉で初老の男は綾の方を向いた
整った顔立ち、グレーの髪を後ろに流し、穏やかな笑みを浮かべる男を
真正面から見てしまった綾は顔が緩まないように必死に努めた…
(うわっ!穏やか系な小父様っ)
リーダスは綾の好みドストライクだったのだ。
リーダスと呼ばれた男は穏やかな笑みをたたえ、綾の前に来ると膝をおった
「初めまして、巫女姫様…私はリーダスとと申します。枢機卿の位を賜っております」
(うわぁぁ!声もストライクっ!)
内心悶え、表面はちょっとおろおろした風を装う擬態スキルは
何時しか培ったスキルだった。
今では友達と呼べるのは類友ばかりなので偽ることは必要なくなっていたが、
それ以前は綾の趣味がばれると距離を置かれてしまった過去があり
表と裏を使い分けることが自然と出来るようになってしまっていた。
「巫女姫様、召喚でお疲れでしょうが…よろしければ貴女様のお名前を教えてくださいませんか?」
リーダスの声と、綾の両手に触れた手でトリップから戻ってきた
何時までも巫女姫じゃ不便だろうと名を告げようとした…その時
「えっと…レリア…レリア・ミルレスと言います」
とオンラインゲームでヒーラーをやっているキャラの名を告げた
(魔法系世界で本名は命を握られたも同然…危なかった!)
ゲーム脳大活躍である
そんなことを知らないリーダスは笑顔で
「レリア・ミルレス様…ですね。貴女に良く似合う名ですね」
そう言うと、手が少し熱く感じた…
(今の…何だったんだろう?)
疑問を感じた綾の両手から自分の手を離すと、立ち上がり近くのソファーを綾にすすめた
ソファーに腰掛けると、綾は気になっていたことをリーダスに聞いてみた
「えっと…私、元の世界に帰れるのでしょうか?」
リーダスも想定内の問だったのか、笑みを浮かべ綾の問いに答えた
「順を追ってお話いたしますと、この世界は魔力で成り立っております、ですが今は魔力が枯渇気味…枯れれは世界は終わります…そこで我々はフィークス神に祈り、救国の乙女たる巫女姫様をお招きした。」
「え、でも…私魔力なんてありません」
慌てて否定るする綾
「いえ、先ほどお手に触れた際に魔力を計らせていただきました、魔力はしっかりとレリア様の中にあります」
さっき熱く感じたのは魔力を計っていたからなのか…そう思うと納得できた
綾が納得したところでリーダスは更に話を進める。
「レリア様には世界に祈りを捧げ、魔力を世界に循環させて頂きたいのです。それがなれば我らが慈愛の女神フォークス様が、レリア様を元の世界へ帰してくださることでしょう」
そこまで言うとその場にいた全員が頭を下げた
「ちょっ!頭を上げてください!私…上手くできるかわかりませんが、頑張りますので!」
自分より年上の人々に頭を下げられたらやるしかないだろう!
半分罠にかかったような気分だが…引き受けたからにはやるしかない。
そう決意する綾だった。