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24.別れ

 グラディウスを見ると、少しずつ消え始めていた。どうやらレティシアの浄化が上手くいき、この時代のグラディウスが目覚めたようだ。


 今までありがとう? さよなら? 僕ももうじき後を追うから待っててくれ?


 グラディウスとは話し足りない感じがするのに、いざ別れの時となると、グラディウスにかける言葉が分からなかった。


「いよいよ別れの時か」


 背後から、カーティスの声がした。


「なんだ、来てくれたのか」

とグラディウスが答える。


 永遠の別れが近づいているのに、グラディウスの声は恋愛話をしている時の調子と変わらない、いつも通りのものだった。


 カーティスはゆっくり歩いてきて僕の隣で立ち止まると、少しずつ体が透明になっていくグラディウスを静かに見つめた。


「ユベール、平和のために魔物を倒したいっていうお前の熱い想いを聞いていると、初代オルヒデー家の主を思い出して懐かしかったぜ」


 グラディウスはいきなり、最後の別れのような言葉を僕に言い始めた。


「僕について来てくれたがために、こんなに早く消えることになってしまって、なんだか申し訳ない……」


 グラディウスにかける言葉を悩んだ末、結局僕の口から出てきたのは謝罪の言葉だった。それは、魔物が退治できるのであれば多少の犠牲は仕方ないと考えていた僕にとって、自分でも意外な言葉だった。グラディウスがついて来てくれると言った時には、抱きもしなかった感情だ。


 グラディウスは僕の申し訳ない気持ちを吹き飛ばすかのように、勢いよく笑い始めた。


「何言ってるんだよ、急にどうしちまった。オレはユベールと出会ったおかげで久しぶりに他人と話すことができて楽しかったぞ。こんなに笑ったのは久しぶりだ。――あと、リーヴェスも助かったしな」


 僕の手に剣を握っている感触がなくなったかと思うと、聖剣は大きな龍の姿に変わった。今では、グラディウスの姿は目を凝らして何とか見える程度だった。


「ユベール、考えすぎるなよ! 目を背けさえしなければ、何とかなるさ。じゃあな!」


 グラディウスは明るい声で言うと、完全に消えてなくなってしまった。


 僕は今さらながら、自分という存在が消えてなくなってしまうことを思うと恐くなった。いっそのこと、いつ消えるのかはっきりした日にちが分かれば心の準備ができるのだろうが、不確かだからこそ恐い。

 今までは、死ぬことよりも自分の思いを遂げられないことの方が恐かったのに――。あまりにも弱くなってしまっている自分自身に、僕は戸惑った。


 グラディウスは明るく振る舞っていたが、本当は僕たちに弱みを見せられなかっただけだったんじゃないか――と考えていたところ、僕の考えていることを見透かすかのようにカーティスが言った。


「未来から来たあいつは、見たままの単純バカだ。消えてしまったが、楽しかったのは本当だろう」


 「未来から来たあいつは」という言葉が気になったが、僕を気遣うような言葉をカーティスから聞けるとは驚きだった。

 カーティスは睨むように僕を見る。


「お前は、決してレティシアの目の前では消えるなよ」

「……元からそのつもりだ」


 僕は小さな声で言った。

 自分が消えることをレティシアに言うつもりはないし、グラディウスが消えたことだって隠し通すつもりだ。

 レティシアの素直で単純なところには時々腹が立つが、彼女の曇りのない笑顔を奪うようなことはしたくなかった。


「レティシアの前では、随分性格が違うんだな。レティシアには関わるなと昨日言ってきたばかりなのに、力になってくれるのか」


 僕は皮肉を込めて言った。昨日のように言い合いになるかと思ったが、カーティスは不機嫌な顔をしただけで、僕の挑発には乗ってこなかった。


「可愛いレティシアのお願いを断れるわけがないだろう。だから、お前から手を引け。レティシアを危険なことに巻き込みたくない気持ちは今も変わらない」

「レティシアの前では何でも力になるふりをしながら、影で手を回すのか」

「そうさ。悪いか? レティシアには嫌われたくないが、彼女を危険な目に合わせる気はない」


 カーティスが直接的に邪魔してこないのはひとまず安心だが、カーティスに関わるのは面倒くさそうだ。


「悪いが、僕は自分から手を引く気はない。レティシアを巻き込みたくないなら、自分で彼女を説得するんだな」


 僕は自分の言いたいことだけ言うと、客間を目指して走った。

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