21.勢いは大事
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僕はキルシュバオム家の玄関に回り、外からレティシアたちのやり取りを観察することにした。
幸い、玄関の扉は開いたままになっていたので、僕は比較的近くでレティシアたちの会話を聞くことができた。
玄関には何人か侍女がいて、みんなリーヴェスに釘付けだった。
「この屋敷は聖気で満ちているな。お前の力は確かなようだ」
リーヴェスは屋敷の中を見回しながらレティシアに言った。
侍女たちはリーヴェスの目に少しでもよく映ろうと精一杯の笑顔を作っているのに、レティシアはいつも通りの締まりのない顔をしている。
「邪気を払って、お前の体は大丈夫だったのか?」
リーヴェスの態度からは親しみやすさのかけらも感じられないが、彼が真っ先に口にしたのはレティシアの体を気遣う言葉だった。
「何のこと?」
レティシアはきょとんとしている。どうやらカーティスからは何も聞かされていないらしい。
リーヴェスは特に詳しくは説明する気がないようで、
「お前はこれ以上、力を使わない方がいい。今後、お前の身に何が起こるか分からない」
とだけ言った。
「そうなのね、ご忠告ありがとう」
もっと驚いてもいいと思うのだが、レティシアはただ頷くだけだった。返事だけはいいが、レティシアがリーヴェスの忠告を聞く気があるのかは怪しい。
いやきっと、素直に返事しただけで、従う気はないのだろうな、と思った。僕にとってはその方がありがたいのだが。
「オルヒデー家にはこれ以上近付かないでくれ。特に前主、ウィラード・オルヒデーにはその力のことを悟られるな」
邪気を払ってもらったことに対する感謝の言葉は特になく、リーヴェスは迷惑そうに言った。
僕はリーヴェスの態度と言葉に、怒りが込み上げてきた。
「君の持ち主、評価できるのは見た目と剣の腕だけなんじゃないか? 性格は最悪だな」
グラディウスが褒めちぎるものだから、リーヴェスは欠点がないような完璧な人間なのだろうと勝手に思い込んでいた。確かに性格がいいとは一言も言ってはいなかったが、ここまで悪いとは想定外だ。
「リーヴェスにも事情があんだよ。表面だけで判断せずに、リーヴェスの考えを聞いてやってくれよ」
僕はすっかりグラディウスと仲良くなった気でいたが、こいつの持ち主はリーヴェスだったんだということに今さらながら気づく。リーヴェスがどんな奴であれ、きっとこいつは自分のご主人の肩を持つのだろう。
リーヴェスはレティシアの反応を待ちもせず、
「それだけ言いたかっただけだ」
と言うと、帰ろうとした。
その時、レティシアと目が合った。
何やってるんだ、リーヴェスをまだ帰らせるな、と僕は合図を送る。
レティシアは僕の合図をすぐ理解したようで、慌ててリーヴェスの腕をつかんだ。
「そんなこと言わないで。客間でゆっくり話でも」
レティシアはリーヴェスに有無を言わせず、彼の腕を強引に引っ張って客間に連れて行った。レティシアの勢いには、リーヴェスも逆らえなかったようだ。




