久しぶり 3
午後12時30分、なんとか約束の時間には間に合った。
待ち合わせの約束をしていた場所は和風料理がメインの飲食店で、何度か真理と来たこともある店だ。
店に入るとにぎやかな客と奥の方に高橋明、竹本義乃が座っており、高橋がこっちに手をふっていが真理はまだ来ていないようだった。
「マーボー!こっちだー!」
高橋が俺のことを大声で呼ぶので、速足で2人が座る席へ向かった。
「よう、久しぶり~!」
そう返事をしてからイスに座った。
「久しぶり!時間ギリギリだったな~、また寝坊か?」
笑いながら竹本が聞いてきた。
「悪い悪い、本屋寄ってたら遅くなった、ところで真理はまだ来てないのか?」
少し息を切らしながらの返事になってしまった。
「俺達の所には何の連絡も来てないぞ?」
竹本はそう言ってテーブルに置いてある水を口にした。
「そうか...」
少し不安ではあるがすぐ来るだろうと思い、俺も水を口にして2人の昔の事を少し思い出した。
この二人と会ったのは高校2年の時の修学旅行の時同じ班になった時だ。
高橋明はかなりのお調子ものだったが、地理に詳しく様々な娯楽に長けており、
おっちょこちょいなところもあったのであだ名は「オッチョ」だった。
竹本義乃は常に笑顔の絶えない、面白い奴であり嘘をよくつく奴だった。
だが竹本のつく嘘は真実に近い嘘でたまに本当なのでは疑うことすらあった。
初めに名前を見た時は女子かと思い期待したが、実物は男子だった。
あだ名は名前に「よし」があるから「ヨッシー」だった。
そしてその修学旅行のメンバーの中にはあの「守山 匠」もいた。
守山匠は身体能力が高く、ムードメーカーであり、あまり感情を表情に出さない奴ではあったが気がかなり短く、
竹本が少し煽っただけで怒ったことがあったがあるのを今でもよく覚えている。
あだ名は無かったが口癖は「ま~いいでっしょう」や「アホくさ...」だった。
俺のあだ名を付けたのも守山だった。
修学旅行中に寄った中華料理店で俺が麻婆豆腐を食い続けていることに守山だけ気づき
「マーボー」というあだ名が付けられてしまった。
大学卒業後3人は警察官になり、数年後あの事件が起きてしまった。
昔の事を思い返しているうちに2人は仕事の愚痴をこぼし始めていた。
飲んでいた水が無くなったのか竹本が店員を呼んで水をコップに注いでもらっているときに
俺は気づいた。周りには店員以外誰もいないのだ。
店に入った時にいたはずの客が全員消えている、明らかにおかしな光景だ。
この疑問を問わずにはいられなかった。
「なぁどうして周りには誰もいないんだ?さっきまでいたはずの客は何処に行ったんだ?」
その瞬間竹本と高橋はまるで俺がこのことに気づくのを待っていたかのような顔をしていた。
「流石だな...相変わらずというか、慣れていたせいか...」
竹本がそう呟いた。
「おい、どういうことなんだ?」
そう言った瞬間俺の言葉は高橋に遮られた。
「本題に移ろうか、お前守山が失踪したあの3年前の事件は覚えてるな?」
無理やり話題を変えようとする。
「こっちの質問には答えようともせずに質問をするか...」
昔からこういう奴だったと再度確認させられ、溜息をついた。
恐らく今から始まるであろう話はこの状況は繋がるのだろう。
「分かった、一端この状況は忘れてることにしてやる。その変わり後でちゃんと説明しろよ?」
少し苛立ちの籠った声になってしまったが仕方がない。
今は高橋の話を聞いた方が良さそうだ。
「まぁそう怒るな、望みどうり後でこの状況の説明はしてやる」
竹本は少し笑いながらそう言ったが、その言葉の後には顔から笑顔が完全に消えていた。
「話の続きを聞く気にはなってくれたようだな、ならもう一度聞く。
3年前の事件は覚えているな?」
高橋は同じ質問をしてきた。再確認も兼ねて俺の顔色を伺っている用にも見える。
「ああ、勿論覚えてる。テレビや新聞でも取り上げられていたし、何よりあの事件には
守山...あいつも関わってたからな。お前達から聞いたときは驚いたよ...
まさかあの守山が失踪するなんて思わなかったからな...。」
思った事を正直に言ったつもりだったが2人の反応は少しおかしかった。
まるで俺の答えに納得のいっていないかのような表情を浮かべている。
「...そうだな」
竹本は浮かない顔をして反応をした。
そして言葉を続けた。