エピローグ
魔王を殺し、このダガーの役目は終わった。
でも、力は失われなかった。
だからと言って、そこらに置けば上手いこと使えた奴がショック死する。
ダガーを使えるのは蓄積がゼロの状態から使っていた勇者もとい偽勇者だけだ。
魔王討伐後、ダガーによる被害者は一人だけ存在していた。
それは勇者パーティーの一人だった。
魔王討伐後に魔王に刺さっていたダガ―でどこからか紛れ込んだ蟻を突いたところショック死をしてしまったという。
勇者の抜けた勇者パーティーによる考察によると、ダガーには魔王が殺された際に呪いがかかってしまっていて、朽ちることのない魔王の死体に突き刺しておくことで呪いを封じているという事らしい。
いつかアホな理由で抜くやつも出てくるかもしれないが、魔王の恐怖を知っている今の人間にそれをする奴はほとんどいない。
それが起きるとしてもそれは勇者が死んだ後の事。
もう勇者たちには知ったこっちゃない。
○ ○ ○
「ママ、旅に出た二人の勇者はどうなったの? まだ旅をしてたりするのかなぁ?」
「それは……フフッ、また今度のお話でね。ママはパパがちょっと心配だから見てくるわ」
「え~もっと話聞かせてよ~」
「今日のところはここまでで満足して頂戴」
「しょうがないなぁ。大人なあたしはここで満足してあげる」
「ありがとう」
「あ、パパ来た! どう? 上手くぬってくれた?」
「あなた大丈夫だった?」
「ほら、上手く縫えたぞ」
「ほんとだ! ありがとうパパ」
「どういたしまして。でも……」
「もしかしてあなた、自分を縫った、とか……」
「あ、いやそうじゃないんだけど、ほら」
「あ、パパがウニみたいな手になってる」
「自分の手を針刺しにしてたみたいんだよ。集中しすぎてたみたいだ」
「やっぱり、そうなると思っていたわ。あなたはマネしないわよね」
「するわけないじゃん。パパのそう言うのは大体痛いから」
「それならよかったわ。あなたも気をつけなさい。……ほんとにどうしてかしらね」
「何が?」
「あの時にあなたにキスしたの失敗だったと思っただけよ」
「そんな笑顔で言われても、こっちとしては全く信用ならないな」
「うっさいわよ。…………バ~カ」




