第八話 ー 対面
「話って、何だ改まって?」
「”聖杖”が反応したの。」
「! 護衛中にか!?」
「うん。 私、少しぼーっとしてたでしょ。その時、聖杖が少し点滅してたの。」
「ああ、あの時か! おかしいと思ったんだよな、お前に限って。」
私は自分の推測を述べる。
「やっぱり、神殿の方角に”光”があるんじゃないかって思う。」
「そうだな…怪しいな。 まずはもう一度平原まで行ってみるか?」
「おかしいなあ…この辺りだったと思うんだけど。」
平原で”光”の確認をする。
「反応なしかー、いや、でも”光”には一歩近付いたな!」
「ね。 そうとしたら、早速神殿の方角へ行きましょう!」
「にしてもファル、すげーな! お前が言った通り神殿の方に集まってんじゃね? 張り切って行こうぜ!」
「の・前に」
「ん?」
「考えたんだけど、私達、もっと修行して魔力高めない?」
*
私達二人は、ギルドの紹介で指南してくれる魔導士の方と聖職職の方を平原で待っていた。
ちなみに聖職者はリティさんではない。
少しして、二人の人間が走って来る。
「お待たせしました。 私が姉の魔導士、スラン・ヴィティーです。」
「妹の聖職者のティス・ヴィティーです!」
スランさんとティスさんは、聞いた通り姉妹である。
「ファルさんが魔導士ですよね?」
「はい。」
「するとシンさんが聖職者ですね!」
「あ、いえ、俺はーー」
事情を話し、納得する二人。
「じゃ、半分半分にしよっか!」
姉のスランさんは落ち着いた雰囲気だったけど、妹のティスさんはテンションが高い。
「半分半分って?」
「両立するの!」
「うし。頑張らなくちゃな!」
シンの特訓は既に始まっていた。
「ではファルさん、私達も始めましょうか。」
「はい!」
そこに魔物が一匹。
「炎纏剣!」
私は得意な魔法を放つ。
「駄目です。」
「え」
きょとんとする私。
「反射的に魔法を唱える所はいいのだけど、ほんの一瞬でもいい。相手の”ほんの僅かな”隙を見て。」
私は驚いた。
自分は隙だらけだと思って魔法を放ったけど、更に”僅かな”隙があるなんて。
「それから、もう一つ。」
スランさんは続ける。
「これは後にシンさんにも伝えるつもりですが、相手の『ほんの僅かな”殺意”』も、見逃さないで。」
ーー私達は二ヶ月半こういった修行をしたのだった。
*
「うん、魔導士として文句なし!」
「そうですね。 十分過ぎる位です。」
「お二方、ありがとうございます!」
スランさんにもお世話になったシンは、深々と礼をする。
「お世話になりました、ありがとうございます。」
私も一礼する。
「では私達はこの辺で失礼致します。 資金もありがとうございます。 行きますよ、ティス。」
「はーい、んじゃね二人ともー! 何かあったらまた呼んでー!」
「結構キツかったなー、でもこれでまた強くなれた気がするぜ!」
「私もよ。 きっと封印を解ける。」
「うっし! んじゃ。」
「ええ。神殿に向かいましょう。」
とは言っても、神殿への道のりは長い。
魔物に襲われたり、洞窟をくぐったり。
でも以前行った場所だ。必ず到達できる。
ただ、気になる事もある。
先程から聖杖が全く反応しないのだ。
「何だろう?」
「神殿近いのに不思議だな。まさか偽物じゃ…いえ何でもありません。」
シンの言う通り、本当にこの杖は偽物じゃなかろうか?
そもそも、封印を解く為に選んだのだけど、本当にこれであっているのか?
いろいろな憶測が飛び交う。
でも、ここまで来てしまったらもう後には退けない。
ーー祈ろう。 賭けに近いのだけど。
途中、私達は幾度か街に寄った。
当然神殿へは一日では辿り着けないし、休憩や食事等を挟みながら、少しずつ向かって行く。
食料等も買い込み、確実にその距離を縮める。
「もう一頑張りだな。くーっ、このラーメン美味ぇ!」
私はアイスを食べながら、考え事をしていた。
ーー本当にナリーを助けられるか。
いや、助けるんだ。
だからナリー。
もう少し、待っていて。
…この時、聖杖”ハーナ”が少しだけ点滅していたのを、誰も気付きはしなかった。
街を後にし、次は足場の狭い崖を渡って行く。
慎重に、慎重に。
崖を渡った後は、森が待っている。
「氷槍!」
神殿に近付くにつれて、魔物の数も多くなってきた。
しかし私達はそんなものをもろともしない。
私達は森を駆け抜け、平原へと辿り着いた。
すると私は『隙』を感知した。
「炎壁!」
一掃。 自分でも驚いた。
こんなに力が付いていたなんて。
「回復!」
シンが唱えた。
「そろそろ疲れてきたろ?」
「流石ね、シン。」
食事をして緊張感をほぐしたり、休憩を挟んで。
神殿まで、もうすぐだ。
そんな時だった。
『グググル…。』
巨大なオークが目の前に現れた。
「爆火!」
先手必勝、私は一転集中の強力な魔法を放った。
シンの追撃もある。
だけどーー
その魔物は、頑丈にできていた。
「これならどう? 神聖槍!」
前方に、一直先に光線を放つ。
「俺も攻撃できんだ! 水槍!」
槍系の魔法は、一直先に敵を貫く。
オークは、ようやく息絶えた。
「神殿もう見えてる! あと一歩だ!」
「そうねっ!」
そして、ようやく辿り着いた神殿の前にはーー。
ーーその姿は以前と変わらない。
ふわふわと尖った翼で浮かんでいる、一人の少年。
「やっほ! やっぱりまた来てくれたんだね!
さっきのオーク、待ちくたびれちゃったから作ってみたんだけど、気に入らなかった? でも来てくれて嬉しいよ!」
「またお前かよ…。 お前の為に来たんじゃねえよ。」
シンの口調は落ち着いていたが、深い苛立ちに満ちていた。
そこには神殿と合体した水晶があり、中にはーー
眠っている、ナリーの姿があった。
「以前は厄介な事をしてくれたわね、悪魔。」
「あれ、邪魔したっけ? それに僕は確かに悪魔だけど、フォーンっていう名前があるんだよ?」
「そんな事どうでもいい。 俺達はナリーを助けに来ただけだ。」
「そう。その過程にあなたが居ただけ。 正直、あなたには興味ないの。」
私達はフォーンを睨み付ける。
「怖い怖い。 でも、また今日楽しませてくれるんでしょ?」
彼はクスクスと笑う。
「さあ、始めようか。 僕の待っていた、楽しい楽しい『戦闘』という名の饗宴を。」
次回、フォーンの勘違いが続きます。
そして次が最終話になります。




