第六話 ー 力(ちから)の与え方
物語も終盤です。
毎回の事だけど、私達は近くのギルドに立ち寄った。
「魔力の溜り場のような、高難易度の場所ってありますか?」
このような台詞もいったい何度発しただろう。
「魔力の溜り場ですか。 そう言うと、確かに高難易度の場所になりますね。 『雷山』はどうで」
「他の場所でお願いします。」
「そ、そうですか…。 では『嵐の巣窟』はどうですか?」
「ではそこでお願いします。」
「わかりました。 !?」
私はトラウマとなっていた言葉に向けて、心の準備をしていた。
だけど、それが鬼のような形相だったようで、マスターが何やら怯えている。
「すす、すみません、て、手数料だ、」
「ありがとうございます!」
例の言葉がなく、一瞬でにこやかな表情へと変わる私。
マスターは何だか恐る恐る会計していた。
「凄かったぜ、あの顔。」
「あれ、私の準備顔やっぱり怖かった?」
今回はシンもギルド内に入っていた為か、見えていたらしい。
「俺もトラウマになってるから少しビクビクしてたけど、向こうもいろんな意味で震えてたような。」
「確かに怯えてたわね。 トラウマ克服しないと。」
そんな話をしていると、
「そいや、『嵐の巣窟』って何か不思議な名前してんな。」
「風が強いのかしらね。 早速行ってみましょう。」
嵐の巣窟は、割と近い場所にあった。
「シン、風に気を付けて!」
「ファルもな!」
いざ!
びゅううううう!
「何これ!?」「何だ今の!?」
私とシンはほぼ同時に驚愕した。
なんという事か、風が強過ぎて中に入れない。
「そんな馬鹿な!」
シンが再度足を踏み入れようとするが、風によって押し戻されてしまう。
「どうすんだ、これ。 場所変えるか?」
「うーん、防御壁を張ればいけそうなんだけど…。」
シンは肩を回しつつ、
「行ってみっか?」
「そうね。ただ無理だと思ったらすぐ撤退ね!」
「うし、了解だ!」
シンの防御壁の中で、静かに進む私達。
相変わらずもの凄い風の音。
こんな所まで来るのは私達だけだろうか。
「やっぱ防御壁張ってても押されちまうな…。」
「魔物を見付けたら大変ね…。」
言いながら、私達は魔物を発見した。
思いもしない形で。
「!?」
その魔物は、風で吹き飛ばされてぐるぐると回りながら、今さっき私達が通った道へと吹き飛んでいった。
更に、私達はすっ飛んでくるゴブリンやオークやら骸骨等を大量に目撃しーー
終いには、おそらくこの洞窟のボスと思われる巨大な鳥ですら吹き飛んでいった。
「…戻りましょう。」
「だな。 本当に『嵐の巣窟』だったな。」
意見は一致し、私達は街まで一端戻る事にした
のだけど。
洞窟の外には、先程飛んでいった魔物が大勢うろうろしていた。
「!? 最初来た時こんな事なかったのに!」
「誰かが入ろうとすると反応するようになってんのかあの風は!?」
当然、ボスの鳥も羽ばたいていた。
「こんなのって…、いや、愚痴を言っている場合じゃないわね。 いくわよ!」
「よっしゃ! 腕がなるぜ!」
私はまずボスに軽くダメージを与えて怯ませてから、全体を狙う。
「炎纏剣! 鳥やアンデットには炎魔法が有効なはずよ!」
「同じく炎魔法! 火突風!」
ギギギィ!
ゴブリンやオーク、骸骨といった魔物等は片付けた。
次は、先程少しダメージを与えたボスを二人で集中攻撃する。
でも、あちこちバタバタと飛んでいるため、やや魔法が当たりづらい。
「俺が囮になる! 俺まで魔法当てるなよ!」
「わかった!」
私は魔物と対面しているシンに対し、シンが魔法でその鳥を引き付けると、素早く後ろに回る。
鳥は巨大な羽でシンの方へ風を浴びせ吹き飛ばそうとしていた。
防御壁を展開するシン。何とか凌いでいる。
できれば短期戦を望みたい。
「爆火!」
私はシンに当たらないように、慎重に強めな一転集中魔法を放った。
背後からの一撃に、鳥はそのまま散っていった。
パンッ
この音はハイタッチの音。ちなみにいつも片手だ。
「ようやく街へ戻れるわね。」
「だな。 さっさと”光”探しに戻ろうぜ。」
*
「そうだ、ファル。 提案なんだが…。」
「? 何?」
「ギルドって凄い洞窟とかの書物あるだろ? 聖杖や”光”の事、調べてみねぇ? 今まで入手した”光”も振り返ってみるといいんじゃないか?」
私ははっとした。
”光”探しに夢中で、調べるなんて考えてもいなかった。
「そんな手段もあったわね!」
私達は、早速ギルドに向かう事にした。
*
「そもそも、聖杖って何なんだ? お前の家に代々伝わってるってやつだっけ?」
ギルド内なので、シンが小声で話しかけてくると同時に、彼は資料のページをめくる。
「そうよ。 物凄い魔力を秘めているんですって。ーーナリーが封印されてから、助ける為にはこれしかないって決めてたの。」
「なるほどな。 一番最初の”光”ってどうしたんだ?」
……何だか先程から職務質問を受けているようだ。
するとシンが察したのか、
「悪いな、質問攻めしちまって。」
「あ、別にいいのよ。 最初の”光”は…まだ私が産まれていない時に溜まってたみたい。 次はーー っと…あった! 聖杖の情報!」
「! マジで!?」
私は隣に座っているシンが見やすいように記事を広げる。
『この世で最も魔力の高い聖なる杖。エネルギーを三つ与える事によって、より膨大な魔力を持つ事のできる、全世界最高の杖。』
「すげー、やっぱ強ぇじゃんこの杖!」
「全世界最高だったなんて、そこまでは知らなかったわ。」
次、お待ちかねの”光”の込め方はーー。
私とシンは、ごくりと唾を呑んだ。
『”力”は、』
「…………………………。」
「…………………………。」
記事は、そこで破れていた。
「~~~~~~~~~~ッ!」
「落ち着け! 俺も気持ちは一緒だ! だけど今はギルドの中だ! 大声出すな!」
必死に私の絶叫を阻止しようと私の口を塞ぐシン。
一回出よう、とシンは私を引っ張って走ってギルドを後にした。
「うぎゃあああああああ!」
私は叫んだ。
お腹の中から思い切り叫んだ。
シンも落胆していた。
「マジかよこんなの…。」
私は叫び過ぎ、息を切らしていた。
「何でよりによってそこだけー!」
ガックリと項垂れる私達。
ダメージ大。
悔し過ぎるけど、落ち込んでばかりじゃいられない。
「確率低いけど、同じような本探して調べるしかないわね…。」
「だよなー。 ああ悔しい…っ」
私達は、別のギルドの書物も探して見る事にした。
二つ目のギルドで、シンは二つ目の”光”はどうやったのかと聞いてきた。
「実は私も記憶に無いの。 産まれる前だったんだと思う。」
「そうかー、しゃーない、他のギルド回って行こうぜ。」
あれから沢山のギルドに立ち寄ったが、聖杖について似たような記述はあるものの、”光”について記してある本は全く無かった。
『力の与え方は』と記述のあった最初の書物がまだましだったとすら言える。
「もしかして…」
「ファル?」
「『魔力を高める』っていう事自体が間違っているのかもしれない。」
次回は護衛します。




