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第五話 ー リーダーの繊細さ


氷槍アイスランス!」

土刀ドリル!」


 魔物を片付けながら、私達は勢いよく空洞を駆け抜ける。


「どいたどいたッ!」


 二人で攻撃魔法を連発し、あっという間に出口へ。




「よし、突破だ!」


 見えてきたのはーー



 まず、噴水。

 街の中央にあり、綺麗な水を魅せてくれる。

 小さいが、賑やかな街。

 ギルドもちらほらと見受けられる。


「依頼で来る事あったけど、やっぱすげぇなーあの噴水! 感動するぜ!」

「綺麗ね。 眺めていたい所だけど、まずはギルドに行きましょう。」

「近くで見てこ…あ、了解ッス。」






「”ライト”、ですか?」

「はい。 魔力の溜り場があれば是非紹介して頂きたいのですが。」


 私は例によって、女性のマスターに切り出した。


「そうですね、聞いた事も無いのでわからないのですが、『雷山かみなりざん』はどうです? かなり難易度が高いので、実はまだどなたにも紹介した事がないのですが。」

「そこでお願いします。」

「わかりました。 ()()ではないので、手数料だけお願い致します。」


 ピク、と私の眉が動く。

 あれ以降、私とシンは”依頼”という言葉がトラウマになりつつある。


「どうかしましたか?」

「いえ。 ありがとうございました。」



ガラガラ…



「聞こえてたぜ、ファル。 『雷山』なんて、ふざけた名前しやがんなー。」

「難し過ぎる位だって。 気を引き締めましょう。」


 雷山はここから随分と遠い。

 辿り着くのすら厳しい。


 一時間程経っただろうか。


「ここね。」

「みたいだな。 回復ヒール!」


 登り始める寸前、シンが回復魔法を放つ。


「疲れてるだろ?」

「わかってるわね。」


 そうして、私達は雷山を登り始めた。

 これから受ける事になる雷山からの洗礼等、知るよしもなく。





「うおあー!?」


 シンは絶叫した。


「ぎゃあああ!」


 私は悲鳴を上げた。


 何故なら



 この山は





 常に






 雷がどこかで落ちている




 山だったからだ。




「雷山という名前に恥じぬ山、確かに高難易度ー!」

「お、落ち着け俺! いや違う、一端落ち着こうぜ俺た おうわー!」


 わかっている。

 ここはシンの防御壁バリアが崩れたら


 終わりだ。




「シン、防御壁に集中して! こればかりは防御に徹して!」

「わ、わかってる!」


 実際、シンの防御壁にも雷が次々と落ちてきている。

 見た所まだ魔物は現れないけど、この状態での戦闘は正直厳し過ぎる。


ゴロゴロゴロ…ドカン!


ドカン!


ドカン!


 轟音で、互いの声すらよく聞こえなくなってくる。


「でもっ…これだけの高難度っ…”光”があるに違いない!」


私が宣言した瞬間、


『グル…』


「! シン、すぐ前に魔物!」

「え、何っ…」


 ドカン!


「……………。」


ーー目の前の魔物が、落雷によって死んだ。


 これが、現実だーー。



「平気か! 何があった!?」


 シンの言葉に、私は何も返せなかった。

 その内、魔物が大量に押し寄せてくる。


 私は無言のままーー


「……死堕花デス・ダリア。」

「待て! お前、その魔法はーー」



ーー辺りが、花を描くように爆発した。


 爆音と共に、次々に魔物が花の真ん中に吸い込まれていく。

 二人は巻き込まれそうになったが、シンが咄嗟に無言を貫くファルを抱えてそのまま下に転げ落ちる。



 山は、落雷すら落ちてこず、焼け野原となった。

 二人はギリギリ島の陸地にとどまる。


「ファル! どうしてあんな恐ろしく危険な魔法を!? 一体何があったんだよ!? オイ!」


 シンの問いかけに、ようやくファルが口を開いた。


「…目の前で、魔物が落雷で死んだの。 私、怖かった。 自分も同じ目に遭うのかもしれないって。 ……ナリーの為にも頑張らないといけないのに、死ぬんじゃないかって思っちゃって。 シンの防御壁を信頼してない訳じゃない。 でも、」


 ふ、とシンにもたれかかるようにしたファルは、シンの胸の中で、


「……怖かった。 怖かったよぉ……。」


 ひっく、ひっくと涙きじゃくっていた。

 シンは、そんなファルの頭に無言で手をやり、彼女を優しく抱き止めるのだった。






 翌日。

 転移装置ワープポイントも反応しなくなり、シンはファルが泣き疲れて眠ってしまってから、彼女をおんぶする形で街に戻って来ていた。

 今日はシンの計らいで、気分転換にとこの街を観光する事になったのだ。

 そっとしておくべきか迷ったシンだが、引き込もっているよりいいかなと思い、観光を提案したのである。


「やっぱ綺麗で見応えあるよな、この噴水!」


 ファルはベンチで黙ったまま座っている。


「ファルー、たこ焼き食うかー?」

「……いらない。」

「アイスは?」

「…食べる。」

「うっしゃ! 買ってくるから噴水の近くのベンチで一緒に食べようぜ!」





「くーっ、夏じゃないけど、アイスはいつも美味しいよなー!」

「…………美味しい。」

「よかった!」


 暫くして、私の方から話を切り出す。


「……シン。」

「ん?」


 シンは目線を私に戻す。


「…この間はごめんなさい。 取り乱して。」

「ん、気にすんな! というか、謝られるような事してねーぞ?」


 沈黙、数十秒。


「ま、いいんじゃねぇの?」


 今度は、彼から話を切り出された。


「怖くたってさ。 目の前で落雷に魔物が撃たれたんだ。誰もが怖いと思うぜ? 俺なんか失神しまうかもよ?」

「………シン。」

「泣きたい時は泣いていいんじゃね? 同じように、怖い時は素直に『怖い』でいいと俺は思う。 そうしていつか怖くなくなってきたら、敵や魔物とかに、どーんと胸張りゃいい。 …いや、雷だったから、話違うか……いや、何というか…。」


 シンの言葉に、私はくすりと笑った。


「シン、励まそうとしてくれているのね。」

「あ、その(……笑った)。」


 私は席を立つ。


「けど私、リーダー失格ね。今でもこうやって面倒かけて。偉そうにしてる割に、足引っ張ってばかりで。…リーダーの私が、折れちゃいけないのに。」


 するとシンも立ちがり、私の方を向く。


「いいんだよ。リーダーなんて重荷抱えてたら、いつか潰れる事があっても不思議じゃない。それにリーダーである前に仲間だし、何より大事な友達だ。 辛かったらいつでも頼れ。 その一見強気に見えて実際は繊細なのも、少し強引な所も、昔からよく知ってる。 でも、お前はお前だ。 リーダーって事ばかりに捕らわれなくたっていいと俺は思うぜ。 それに言ったろ? 今は『二人ペア』だって。…何だかんだ言って、俺も少し頼り過ぎちまったかな。」

「そんな事全然ない。ありがとう、シン。でも、」

「ん?」

「今、少し強引って言ったわよね。」

「え」


 私は問い詰める。


「どういう事よ。」

「いや、別に、そんなつもりじゃ…」



「…ふふ。」

「ははっ」


 私達は、互いに笑った。


「よし、気を取り直して、”光”探しに戻りましょう!」

「おう! 聖杖ハーナ、次こそは反応してくれよ!」




 シンーー



 いつも、ありがとね。


次回は別のミッションに挑みます。

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