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第三話 ー 金策


「ドンマイ。」


 私はかつて何回この言葉を言っただろう。


「ドンマイ。」


 彼も、何回この言葉を口にしただろう。



 それ程、最後の”ライト”は見付からない。


「シン、ちょっといい?」

「ん? どうした?」

「私達、()殿()のある方に行かない? もしかしたら神殿に”光”が籠っている気がするの。」


 シンは多少驚いた様子で、


「はぁっ!? そりゃそうかもしれねーけど…。もう少しこの辺りで様子を見てからにしねぇか?」

「そうね…。」


 私は口ごもる。


「ま、決めるのはリーダーのお前だからな! ついてくぜ。」

「わかったわ。」


 私はシンの提案を受け入れ、もう少しこの辺を探ってみる事にした。






けど。








「ドンマイ。」

「ドンマイ。」



ーーあれから二十一個ものミッションに挑んだけど、”光”の手掛かりすら全く見当たらなかった。

 私達は平原で大の字になっている。



「ファル、言っておいて難だが神殿の方辿って行こうぜ…。」

「そうね…。」


 私達は疲労で倒れていた。





「って嘘!?」


 私は周辺を見渡す。

 近くには、ガーガーといびきをかいている男が一人。


「シン! シン起きて!」

「むにゃ…おにぎり美味い…。」

「そんな事言ってないで、早く起きて! 私達、ここでずっと寝ちゃってたみたいよ!」


 するとシンはバッと起きて、


「マジか!? 無くなったものとかはあるか!?」

「…………………それが……。」


 私は財布を逆さまにして振った。


 本来落ちてくるはずのものが、落ちなかった。







「だーッ! 畜生! こんな時にスリに遭うなんて!」

「あんな所で堂々と寝てたからね。 殺されなくてよかったと思うべきかしら。 ああ、結構貯まってたのに! 自業自得だわ。」


 私は頭を垂れる。


「どうするんだ?」

「決まってるじゃない、金策よ!」



 結果、私達は暫くこの付近で金策をする事となった。






「君達、よく来るね。」


 いつものギルドにお邪魔する。


「毎度すみません。」

「いや、こっちも儲かるからいいんだよ。お得意様だ。それで、今回は何のようだね。」

「とにかく仕事下さい。」

「と、とにかく?」


 マスターがやや困惑している。


「ファル、率直過ぎじゃーー」

「この有様だから、仕方ないわよ。」

「…………はい。」


 マスターから少し待っているように促され、待つ事やや五分。


「お待たせ。 そうだね、『子供の遊び相手』、『森の魔物退治』とかが丁度いいんざゃないかな。あとはーー」


 マスターが私達二人を見つめる。


「君達も、リティさんのように『使ってほしい』と登録してみないかい?」






「魔物退治は私が行くから、子供の方お願いね。」

「え、やっぱ一人で行けんの!? というか俺が子供の方って!?」

「難易度は高くないから平気よ。」


 私達は別行動をとりながら、『登録』して声が掛かるのを待つ事にした。


「じゃ、子供の方よろしく!」


 私は早速魔物退治へと向かった。


「……ファルって、結構強引だよな。」


 誰にでもなく呟いたその言葉は、風の中に消えていくのだった。





 依頼は、ある山の方の魔物討伐だ。

 難易度はそれ程でもなく、一人だけでも十分いける。

 私は風属性魔法でどんどん回りの魔物を亡きものとする。

 順調順調。 シンはどうしてるかな? とか考える余裕すらあった。


 所が、


 ビュウウウッ!


 な、何今の強風!?


 ゴオオオッ!


 風が止むと、目の前には巨大なドラゴンが現れた。


「!?」


 私はとっさに攻撃魔法を放ったけど、弱点属性がよくわからない。

 私は何発か魔法を放ち、一番聞いた属性が、闇。


「属性は光ね!」


 私は少しドラゴンから距離を取り、魔法を放つ。


闇轟刀ブラックシェイド!」



 ギガガガッ



 効いている。平気だ。

 思ったより難易度は高いが、こちらも死ぬ訳にはいかないのだ。

 何よりも、ナリーの為に。







「ほ~らほら、おいでおいで~」


 二歳の子供の面倒をみている俺。両親が共働きの為、大体こうして頼むらしい。保育園も行ってないとの事。

子供は元気だ。


 何で俺が子守りなんて…というか、母性本能とかで、こういうのはファルの方が向いてるんじゃないか。


「はいはい~、いい子でちゅね~。」


 はっきり言わなくても、自分でも気持ち悪い。

 赤ちゃん言葉なんてもう知るか!

 俺は段々自棄ヤケになってきた。

 だが、赤ん坊は俺の事が気に入ったのか、かなりなついている。

 俺はベビーシッターではない! ギルドに登録するんじゃなくて、本物のベビーシッターを頼めよ…。

 だが、金策の一つだと割り切って。

 時計を見た。

 なついていた事、二時間半。

 仕事終了まで、あと二時間半。


 資金の為とはいえ、赤ん坊がトラウマになりそうだ…。





 私はシンと待ち合わせの場所をうろうろする。

 とはいっても、ギルドの前なのだけど。


「おかしいなあ」


 時間には割と厳しいシンが、時間になってもなかなか現れないのだ。


「何か事件にでも巻き込まれたのかな。」


 不謹慎な事を考えていると、


「悪い、ファル! 仕事が長引いた!」


 シンは息切れしながら走ってきた。

膝を押さえる。


「あ、よかった! 心配したわよ。」

「ごめん、赤ん坊がなかなか離してくれな…、

回復ヒール!」


 シンはいきなり回復魔法を唱えた。


「あ、気付いたの?」

「当たり前だろ、そんなに怪我してたら。俺だって困る。依頼キツかったのか? 珍しいな。」

「思ったより強かった。攻撃魔法を連発して隙を見ては、弱点属性魔法で攻撃。 ーー強くなってるって、奢ってた。」


 私は近くのベンチに腰かけ、続ける。


「一人でも平気だなんて。 今まで平気だったから自信があったんだけど、今回の事でやっぱり自分の未熟さを思い知らされた。 私達は、『三人で一つ』なんだって。」


 シンは黙って私の話を聞いていた。


「ようやくわかった。 私は、まだまだ未熟なひよっこ魔導士なんだと。」


 私は俯く。


「…それ、一人の場合だろ?」


 シンが口を開いた。


「自分で言ってんじゃん。『三人で』って。 でも、今は三人じゃない。「二人ペア」だ。 だから一人になったら無茶すんな。 戦闘だったら俺を呼べ。」

「シン…。」


 私は滴るものを拭いて、シンの顔を見る。


「そうね。ありがとう、シン。」

「バーカ。お前らしくないぞ?」


 互いに笑いあった。

 そうだ、リーダーは私だ。私が折れてはいけない。


「じゃあ、そろそろギルドへ入りましょう。

「あいよ!」



 ギルドへ入ると、何と登録した私に指名が沢山入っていたとマスターが言う。


「すごっ、お前なんてコメントで登録したの?」

「え、えと、それが…」


「あっ、二人共丁度いい所に。」

「? マスター?」

「こんばんはー! ファルさんにシンさんですね? 指名させて頂いた者です!」


 指名頂いた方か。

 確かにタイミングはいい。


「えっと、『攻撃魔法なら私に勝てる人はいません。 高難易度のミッションも任せろ!』でしたよね? 早速なのですが、」


「そ、それはーー」

「? どうかされました?」

「…ファル…」




「攻撃魔法未熟って言ったばかりだろうがーーッ!」


「ご、ごめん、あの時はーー。」





次回、ファルの言い訳が冒頭にあります。

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