第三話 ー 金策
「ドンマイ。」
私はかつて何回この言葉を言っただろう。
「ドンマイ。」
彼も、何回この言葉を口にしただろう。
それ程、最後の”光”は見付からない。
「シン、ちょっといい?」
「ん? どうした?」
「私達、神殿のある方に行かない? もしかしたら神殿に”光”が籠っている気がするの。」
シンは多少驚いた様子で、
「はぁっ!? そりゃそうかもしれねーけど…。もう少しこの辺りで様子を見てからにしねぇか?」
「そうね…。」
私は口ごもる。
「ま、決めるのはリーダーのお前だからな! ついてくぜ。」
「わかったわ。」
私はシンの提案を受け入れ、もう少しこの辺を探ってみる事にした。
けど。
「ドンマイ。」
「ドンマイ。」
ーーあれから二十一個ものミッションに挑んだけど、”光”の手掛かりすら全く見当たらなかった。
私達は平原で大の字になっている。
「ファル、言っておいて難だが神殿の方辿って行こうぜ…。」
「そうね…。」
私達は疲労で倒れていた。
*
「って嘘!?」
私は周辺を見渡す。
近くには、ガーガーといびきをかいている男が一人。
「シン! シン起きて!」
「むにゃ…おにぎり美味い…。」
「そんな事言ってないで、早く起きて! 私達、ここでずっと寝ちゃってたみたいよ!」
するとシンはバッと起きて、
「マジか!? 無くなったものとかはあるか!?」
「…………………それが……。」
私は財布を逆さまにして振った。
本来落ちてくるはずのものが、落ちなかった。
「だーッ! 畜生! こんな時にスリに遭うなんて!」
「あんな所で堂々と寝てたからね。 殺されなくてよかったと思うべきかしら。 ああ、結構貯まってたのに! 自業自得だわ。」
私は頭を垂れる。
「どうするんだ?」
「決まってるじゃない、金策よ!」
結果、私達は暫くこの付近で金策をする事となった。
「君達、よく来るね。」
いつものギルドにお邪魔する。
「毎度すみません。」
「いや、こっちも儲かるからいいんだよ。お得意様だ。それで、今回は何のようだね。」
「とにかく仕事下さい。」
「と、とにかく?」
マスターがやや困惑している。
「ファル、率直過ぎじゃーー」
「この有様だから、仕方ないわよ。」
「…………はい。」
マスターから少し待っているように促され、待つ事やや五分。
「お待たせ。 そうだね、『子供の遊び相手』、『森の魔物退治』とかが丁度いいんざゃないかな。あとはーー」
マスターが私達二人を見つめる。
「君達も、リティさんのように『使ってほしい』と登録してみないかい?」
*
「魔物退治は私が行くから、子供の方お願いね。」
「え、やっぱ一人で行けんの!? というか俺が子供の方って!?」
「難易度は高くないから平気よ。」
私達は別行動をとりながら、『登録』して声が掛かるのを待つ事にした。
「じゃ、子供の方よろしく!」
私は早速魔物退治へと向かった。
「……ファルって、結構強引だよな。」
誰にでもなく呟いたその言葉は、風の中に消えていくのだった。
*
依頼は、ある山の方の魔物討伐だ。
難易度はそれ程でもなく、一人だけでも十分いける。
私は風属性魔法でどんどん回りの魔物を亡きものとする。
順調順調。 シンはどうしてるかな? とか考える余裕すらあった。
所が、
ビュウウウッ!
な、何今の強風!?
ゴオオオッ!
風が止むと、目の前には巨大なドラゴンが現れた。
「!?」
私はとっさに攻撃魔法を放ったけど、弱点属性がよくわからない。
私は何発か魔法を放ち、一番聞いた属性が、闇。
「属性は光ね!」
私は少しドラゴンから距離を取り、魔法を放つ。
「闇轟刀!」
ギガガガッ
効いている。平気だ。
思ったより難易度は高いが、こちらも死ぬ訳にはいかないのだ。
何よりも、ナリーの為に。
「ほ~らほら、おいでおいで~」
二歳の子供の面倒をみている俺。両親が共働きの為、大体こうして頼むらしい。保育園も行ってないとの事。
子供は元気だ。
何で俺が子守りなんて…というか、母性本能とかで、こういうのはファルの方が向いてるんじゃないか。
「はいはい~、いい子でちゅね~。」
はっきり言わなくても、自分でも気持ち悪い。
赤ちゃん言葉なんてもう知るか!
俺は段々自棄になってきた。
だが、赤ん坊は俺の事が気に入ったのか、かなりなついている。
俺はベビーシッターではない! ギルドに登録するんじゃなくて、本物のベビーシッターを頼めよ…。
だが、金策の一つだと割り切って。
時計を見た。
なついていた事、二時間半。
仕事終了まで、あと二時間半。
資金の為とはいえ、赤ん坊がトラウマになりそうだ…。
*
私はシンと待ち合わせの場所をうろうろする。
とはいっても、ギルドの前なのだけど。
「おかしいなあ」
時間には割と厳しいシンが、時間になってもなかなか現れないのだ。
「何か事件にでも巻き込まれたのかな。」
不謹慎な事を考えていると、
「悪い、ファル! 仕事が長引いた!」
シンは息切れしながら走ってきた。
膝を押さえる。
「あ、よかった! 心配したわよ。」
「ごめん、赤ん坊がなかなか離してくれな…、
回復!」
シンはいきなり回復魔法を唱えた。
「あ、気付いたの?」
「当たり前だろ、そんなに怪我してたら。俺だって困る。依頼キツかったのか? 珍しいな。」
「思ったより強かった。攻撃魔法を連発して隙を見ては、弱点属性魔法で攻撃。 ーー強くなってるって、奢ってた。」
私は近くのベンチに腰かけ、続ける。
「一人でも平気だなんて。 今まで平気だったから自信があったんだけど、今回の事でやっぱり自分の未熟さを思い知らされた。 私達は、『三人で一つ』なんだって。」
シンは黙って私の話を聞いていた。
「ようやくわかった。 私は、まだまだ未熟なひよっこ魔導士なんだと。」
私は俯く。
「…それ、一人の場合だろ?」
シンが口を開いた。
「自分で言ってんじゃん。『三人で』って。 でも、今は三人じゃない。「二人」だ。 だから一人になったら無茶すんな。 戦闘だったら俺を呼べ。」
「シン…。」
私は滴るものを拭いて、シンの顔を見る。
「そうね。ありがとう、シン。」
「バーカ。お前らしくないぞ?」
互いに笑いあった。
そうだ、リーダーは私だ。私が折れてはいけない。
「じゃあ、そろそろギルドへ入りましょう。
「あいよ!」
ギルドへ入ると、何と登録した私に指名が沢山入っていたとマスターが言う。
「すごっ、お前なんてコメントで登録したの?」
「え、えと、それが…」
「あっ、二人共丁度いい所に。」
「? マスター?」
「こんばんはー! ファルさんにシンさんですね? 指名させて頂いた者です!」
指名頂いた方か。
確かにタイミングはいい。
「えっと、『攻撃魔法なら私に勝てる人はいません。 高難易度のミッションも任せろ!』でしたよね? 早速なのですが、」
「そ、それはーー」
「? どうかされました?」
「…ファル…」
「攻撃魔法未熟って言ったばかりだろうがーーッ!」
「ご、ごめん、あの時はーー。」
次回、ファルの言い訳が冒頭にあります。




