第一話 ー 鍛練
新作です。
更新は一週~二週間位のゆっくりペースになると思います。
おそらくまた九話位で終わると思われます。
読んで頂けたら幸いです(礼)
「やめて…逃げて!」
少女はそう叫んだ。
「駄目! あなたを置いていくなんてできない!」
「コイツの言う通りだ! お前を犠牲にするなんできるかよ!」
別の少女や、仲間らしき少年は反論する。
少女は二人とも涙を流していた。
「いいの、私はこれで。…今まで、ありがとね。ーーさぁ、早く!」
「くっ…そ…。」
「逃げるしか、できないなんて…。」
「必ず…必ずあなたを助けに行くから!」
「「ナリー!」」
ーー私の名前はファル・ナミアス。
聖杖・「ハーナ」の「魔力を高めて」、私達の為に自ら封印される事を選んだ大事な友達を救うべく旅を続けている。
自分で言うのも難だけれど、実力も多少ある、魔導士だ。
…あの時だけは、何もできなかったけど。
先程「達」と述べたように、もちろん一人ではない。
同じく優れた魔導士である、シン・ラフィというややいい加減な男とペアを組んでいる。
犠牲になった友達の名前はナリー・アフェア。
はっきり言ってしまうと、私達三人は「幼馴染」なのだ。
以前は幼馴染パーティを組んでいたのだけれど、ナリーはある戦闘時、自ら封印される事を望んだ。
彼女は望んでいないが、必ず助けに行くと誓った私達。
聖杖は、私の家系に代々受け継がれてきたもので、とても強力なこの杖の力を高めればもしかしたらーーという、藁にもすがる思いで旅をしている。
ただし、力の高め方には幾つかのエネルギーを数回与える必要があり、私達はそのエネルギーの事を”光”と呼んでいるが、その最後の一つも、幾ら探しても見付からない。
でも、ナリーが封じられた時から、私達は一年間、猛烈に修行を積んだ。
ナリーの封印を解く為に、必死で魔力を高めた。
あの時から比べたら、一年間で数十倍も強くなった。
それに、ギルドにも積極的に通っていたので、お金にも困っていない。
長くなっちゃったけど、大体現状はこんな感じ。
ちなみにリーダーは私だ。
リーダーとしての責任もある。
「なあ、ファル。」
「何? シン。」
「俺達のどっちか、回復とか防御魔法強化しねえか?」
そうだ。
以前は回復役はナリーだった。
更に、あれから私達二人は攻撃魔法ばかりを強化し、別にできない訳ではないけど、共に補助は苦手なのだ。
「そうね、素質のある方にしよっか。」
「素質って、そんなんわかるのかよ。」
「試してみる?」
先程まで私達がいた場所は、町の繁華街。
移動してきた場所は、ギルドや武器屋が建ち並ぶ、まさしく冒険者の街と言う感じの場所だ。
そこで、事情を話し、ギルドのマスターにお願いしてジャッジを任せ、同じ魔法でどちらが防御に向いているのか試してみる事にしたのだ。
「いつでもいいわ。」
私は防御壁を展開する。
シンは構えた。
「行くぜ、”火炎球”!」
バキィッ!
「………お嬢さん、防御向いてないね。」
「……………………。」
私の防御壁は、初級魔法の火炎球ですら防ぐ事ができなかった。
「…シン、交代ね。」
「………。」
何だか不安そうなシン。私の火炎球が弾いたら、慣れない後衛行きだからだ。
改めて、次は私が打つ番。
「”火炎球”!」
カキィンッ!
シンの防御壁は、見事私の魔法を弾いた。
「決まりだね。 シン君、君の方が回復・防御に向いている。」
「え、防御はとにかく、何で回復まで?」
「防御が向いているという事は、支援、ようするに後衛の回復の素質が彼女よりもあるという事だよ。」
「マジっすか…。」
「マジっす。」
「あ! でも魔法の威力にも関係があるんじゃ!」
必死に言い返すシン。
しかし突き付けられるのは、
「シン君、君が後衛行きだよ。」
現実だった。
*
「防御魔法か…。 ま、慣れないけど、なんだかんだ言ってナリーの為だからな! それに言い出したのは俺だ! 嫌がっちまったの、猛反省しないとな。」
シンは自分で自分の頭を叩いたりして、すっかり気を取り直していた。
「私もサポートするわ。 後衛は向いてないけど、ナリーの為なら。」
今まで”攻撃は最大の防御”みたいな感じで来たから、回復・防御の訓練はおざなりになってしまっていた。
リーダーである私の判断ミスだ。
シンが言わなければ、このまま攻撃魔法一辺倒だったろう。
何故ここまで気が付かなかったのか。
「訓練って言われても、まずは何から始めりゃいいんだ?」
「そうね…まずは腕のいい聖職者を探す事ね。」
「探すったって、どうやって?」
「ギルドに行きましょう。 紹介してもらえるかもしれない。 それに、回復も出来たら、あなたはより凄い魔導士になれるかもよ?」
「そうだ、万能じゃん!」
「(……後衛不向きだから、万能って少しだけ羨ましい。)」
思う所はない訳じゃないけど、私も気を取り直してギルドに向かった。
「聖職者?」
私達は、先程のギルドマスターに声をかけた。
立て続けに申し訳ないが、事情を知っているマスターの方が話が早いと思ったからだ。
「そうだね…聖職者一人で旅をしている者は少ないからね…。ただ、自分を使ってほしいとギルドに登録している人は多いよ。」
「本当ですか!?」
シンが食いついた。
「どんな人をご希望かい?」
「優しくて、支援魔法を手取り足取りご丁寧に指導して下さるような女性がーー」
「強くてビシバシと支援魔法を教えて下さる鬼教官的な方を希望します。」
「ファルー!?」
シンが私の顔を見て絶叫した。
でもそんなの関係ない。
「鬼教官か…。そうだ、『支援魔法達者、あたしに任せなさい。』と登録している聖職者なら一人いるよ。」
「じゃあその方で!」
「ふ、ファル……。」
シンが何か言った気がしたが、私には聞こえなかった。
「よう! あたしがリティ・アンガー! 今回は選んでくれてありがとな!」
ーー翌日、私達は人気のない町外れで、聖職者であるリティさんと待ち合わせをしていた。
先に待っていたのはリティさんで、シンの寝坊で遅れてしまったお詫びをしようとしたら、
「いーのいーの! さ、修行始めるよー!」
思ったより、感じのいい人だった。
「あ、そうそう、無理矢理やるからよろしくね。」
は?
ズカッ
気が付いたら、シンの脇腹にリティさんの拳が刺さっていた。
「っぐ…うぐっ」
「駄目駄目! 敵の攻撃を察知したら反射的に防御壁を展開する! それからまた反射的に自分の魔力を外へ出して、回復魔法を発動させる!」
「ぐえっ…いきなり…む、無理っす…。」
「無理じゃない! やるの! もう一度いくよ!」
「ちょっ、待ってーー」
ズカッ
…本当に鬼教官だ。
これなら短期間で上達するに違いない。
だけどこれじゃあ私、サポートするどころではない。
頑張れシン。
所で、あの拳の威力。
リティさんは、本当に聖職者なのだろうか?
小さな疑問は残ってはいるけど、かくして、こんな荒修行が約一ヶ月半続いたのだった。




