1話
お久しぶりです
「ここは…」
気がつくと俺は白い部屋にいた。確か俺は…そうだ死んだんだった。別に殺されたとかじゃない。老衰だ。最後は孫にも看取って貰ったし結構充実した人生だったな……。で、ここどこ?天国ですか?
「いいえ、ここは私の中です」
うぉ!なんか急に頭の中で声が響いた!
「現在あなたは肉体を持たない魂のみの状態です。ですからそのように感じるのでしょう」
魂って…。というか俺の考えてること分かるの!?というか誰!?
「私はあなた方のいう神ですね。世界を創り、維持を行う創造主です。なんで分かるかというと魂というのは謂わば肉体というか鎧を着ていない状態なのです。ですからあなたの考えることは私には分かるのです」
はぁ〜。なんというか唐突過ぎて頭の処理が追いつきませんね。
「まぁそれはのちのち理解出来ればいいです。それより本題に入りましょう」
本題?
「はい、あなたにはあなたのいた異なる世界を救って貰います」
…………はい?
「その世界は現在私の管理から離れ、邪神によって維持されています」
ちょだちょっと待って!つまり俺は異世界で勇者をやれってこと!?
「違います。残念ですがあなたの言葉でいうチートを授けたらあなたの魂は消滅します。それにあなたは戦闘センスは皆無に等しいですし」
うん……分かってたよ。ちょっとだけ期待しただけだし
「とりあえずあなたには私の分身体なものを肉体として、異世界に転生してもらいます。」
おぉぉ!それは凄いな!というか神さまの分身体ならチートじゃないですか!
「いえ、そもそも異世界の魔物に勝つためには分身体の戦闘センスを高めるためにほかの部分を犠牲にしなければならないのである意味弱体化します。せいぜいあなたのいた世界の人間の平均よりは上程度です」
え?というかやっぱり魔物みたいなファンタジー要素満載な世界なんだ。しかも神様の分身体でも勝てないレベルって……
「邪神による影響で魔物が狂暴化したからです。あと私はあくまで創造主。戦いに関しては専門ではありません」
じゃあ俺は向こうに転生しても死んじゃうじゃん!
「そのためにあなたには私の能力の一端と少しだけの補助をします」
具体的には?
「簡単に言うと創造主としての力と1年間の間あなたのいる島に侵入不可能の結界を張るだけです。結界は邪神の管理している世界に無理矢理敷くので、これ以上は無理です」
なんか結構ハードだな。でも神の力か…。
「今更ながらこの転生は強制です。あなたに拒否権はありません」
まぁせっかくまた生き返らせてくれるんだから文句はないけどさ。
「ではあなたの転生する世界についてです」
ファンタジーな世界なんだろ?魔法が使えて、エルフやドワーフがいるんだろ?
「そうです。いやそうでした。ですがつい先ほど最後まで残った王国は魔物たちの襲撃によって滅亡しました」
は?
「ですからあなたは転生先の島で能力を活かして、元どおりの世界に戻してもらいたい」
……あのー神様?俺やっぱりやm
「では時間も有限ですので。それでは世界をよろしくお願いします」
おぉぉぉぉい!聞けぇぇぇ!
しかしその声?は神には届かず、俺の意識は暗闇へと落ちていった。
「んっ…あぁここが転生先の島か」
俺が意識を取り戻すとそこは森だった。
そして今目の前には何故か一冊の本がある。
「なになに?えーと『神のマニュアル』か。まんまだな」
とりあえず俺はその本を読み始めた。
そこには俺の与えられた能力についてと説明の補足だった。
能力について
簡単にいうと創造だ。体内にある神力を糧として何かを創造する能力というべきだろう。神力から魔力への変換効率は5倍である。
そして今回はその能力だが少し改変され、あなたの知識にあるステータス機能に似たものをつけさせてもらった。それがあれば何かと便利だろう。あと神力の消費は創造するものによって変わる。
神力について
神力は前述どおり魔力への変換効率は5倍である。ただしあなたは魔力は使えません。そして神力は魔力のように自動回復はしません。そもそも神力は魔力のように限界はなく、貯めようと思えばいくらでも貯められる一種のお金のようなものです。稼ぐ方法はいくつかあります。
1 あなたの勢力下の生命体、つまりあなたが生命体を創造した場合、毎日一定数の神力を受け取ることが出来ます。その量は個体の生命力、簡単にいうと強さによって変わります。
2 魔物を倒す。その量は個体の生命力によって変わる。
今後について
1年後結界が解かれると魔物による襲撃が始まるでしょう。それまでに対抗できる戦力を準備してください。最後に私は管理外の世界に転生させたりや結界を敷いたりしたので弱体化しています。ですからあなたを助けることが出来ません。神として情けないですがどうかこの世界をお願いします。
「とりあえず能力とかはともかく神様の助けが一切ないのか…。まぁでも弱体化するまでやってくれたんだ。神って傲慢かなと思ってだけど違うもんなんだな。まぁとりあえず期待に応えるためにも早速動き出さないと!それにまだ死にたくないし!」
俺は早速能力を使う。
最初の最重要課題は生命体だ。
家とかでもいいけど生命体がいないと稼ぐ方法がなくなるからな。
「んー生命体ね……。ん?というか別に人間じゃなくてもいいんだよな?ならやっぱり最初は質より量だから…」
そうと決まれば………………
そして俺の目の前に現れたのはスライムだった。
なんでかって?創造が簡単そうだから。ドラゴンなんて創造するのに神力をいったいどれだけするんだか。それに比べてスライムは少ない神力で創造出来るし、スライムは変形出来るから色々と便利だと思うんだよね。ちなみに創造した数は全部で1000体。多かったかも…。
「とっとりあえず!スライムたちはこの一帯を開拓してもらいます!木をバンバン切って……あっどうやって切らせればいいんだろ…」
ここにきて俺の考えなしが祟ってしまった。
しかし、スライムたちは悩む俺を隣に木の根元を溶かすことによってどんどん伐採していった。
「おぉ!想定外だったけどこれは凄いな!斧で切るより綺麗にできる!」
すると一体のスライムが近づいて来て、なにやら懸命に身体を動かしている。
「ん?なんだ?」
スライムは身体を矢印のように変形させ、切った木を指していた。
「ああ!そうか!切った木をどうするかってことか!んーお前らは木を運べるか?」
スライムは身体を横に振る。どうやら無理らしい。
「んーなら新しい生命体でもつくるか?んー木を運べるくらいの力持ちで、スライムみたいに神力の少ないものかー」
俺が出来るだけ低コストになるようにどう創ろうかと考えを巡らしていたその時だった。ある方向で森が終わり、崖となっていたのだ。
「おー随分と高い崖だなー。なんかこの崖前に見た採石場みたいな感じだし将来的に使えるかもしれんな………待てよ、石といえばゴーレムとかどうだ?」
決めたらあとは早かった。俺のイメージをそのまま具現化するように創造をして、見事に想像通りのゴーレムが出来た。
スライムたちも自分たちの知らないものに興味津々で俺の近くに集まって来ている。そしてゴーレムに張り付いて何かをしていた。
「おっおい間違っても溶かしたりはするなよ!?ゴーレムはお前らの仲間なんだからな!」
ブルブルブル
スライムも分かってはいるようでそんなことするわけないだろと言うように身体を震わせていた。
そしてそのスライムはゴーレムから離れ、今度は崖に張り付きだしたのだ。
「お前ら次は何してるんっうぉ!お前ら何で崖を溶かしてるんだ!?」
何故だかは知らないがスライムたちは崖に張り付き、石をどんどんと溶かしていったのだ。
まぁ採石場として使えるかなーと考えていた程度だから別にないと困るものでもないからとりあえずスライムたちに任せておいた。スライムたち俺の想像以上に頭良いしな。
すると崖に群がっていたスライムが一斉に離れ、彼らが何をしていたのかがわかった。それは
「なっなんでこんなところにゴーレムがいるんだ!?」
そう。先程一体しか創造していないゴーレムなのに、目の前にはもう一体いるのだ。
そしてスライムたちはドヤ顔。ただしスライムには顔はない。でも明らかにドヤ顔なのだ。
「まさかお前らがやったのか?崖の一部を溶かして?」
ブルブル
どうやら肯定の意味のようだ。
「これは…流石に動かないか」
スライムたちがつくったのはあくまでゴーレムの形をした石像。そこに知性はない。
「だけどそれを可能にするのが俺の能力だから…」
俺はゴーレムの知性を創造。まぁ簡単に言うと魂だ。
ゴゴゴ
「よし動いた!これならゴーレムを一から創造するより神力をだいぶ節約できるな!」
そのあとはスライムたちを半分に分けて片方を伐採に、もう一方をゴーレムづくりにあたらせた。俺は出来上がったゴーレムに次々と魂を与え続け、出来上がったゴーレムは木の運搬にあたらせた。
おかげで一日で見渡す限り平原になり、周囲の地形が分かりやすいものとなった。周囲にはゴーレムづくりを行う崖のある山と大きな川があった。
川を見つけれたのは幸運だと思う。俺だけなら別に創造を使えば問題ないが、他の人がいたらそれを準備するのは意外と面倒だしな。
「さて今日はもう遅いし寝るかな」
俺は森を切り拓いた時に出来た材木で即席の小屋をつくり、その中で異世界生活初の夜を迎えたのだった。