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従者の苦しげな表情なんか知らないふりでそっちのけ。ぼんやりとした顔ではっきりと、お姫さまはお母さんの言葉を思い出していた。
『あんたは私の子どもじゃないの。私とあの人の子どもじゃないの。
あんたは私の妹が、王様と犯した禁忌によって生まれた子ども。
妹は死んだから。王様にこの事を言わないまま、死んでしまったから。
それでも王様のお言葉は、ちゃんと手紙に残っているわ。
王宮に行っておくれ。
お姫様になったら、あんただって幸せだろう?』
去年の秋、父が死んだ。
父が死んで、いよいよ生計を立てられなくなった。
母は泣きながら、いきなり事情を説明しだした。
売られた。
飾られた。
閉じ込められた。
いつもいつも、地面の上から見えた見上げていた王宮。
どうしてこの塔の高みから、小さくなった故郷を見下ろさなければいけないのか。
お姫様には未だに分かりません。
返して、帰してと叫ぼうと。
お姫様の『家族』は、もうどこか遠い町で暮らしています。
あの町で、『娘さん』が『お姫様』だった事は、物語としてひっきりなしに話されます。
どうしても、こうしても。
お姫様は、もうここにしかいられません。




