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小さな国のお姫様  作者: うるいあ


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5

「姫」


その言葉を無視する姫は、わざとらしく先程の従者と同じ格好、同じ表情だ。



………………苦虫を噛み潰したような顔を隠しもせずに、従者は言葉を訂正した。

「ルルイ姫」

「なんでしょうか、ヒロイ『殿』」

 小首をかしげた姫の姿は愛くるしい。重ねて目を淡く伏せるしぐさも、教えたとおりにこなしている。

そこに込められる嫌味が分かるだけに、従者はその間を思考に費やす。

打開策は見つからない。この『庶民』あがりの小娘には。


「どうかされまして?

…………時間はゆっくり流れているけれども、余分な時間などないんでしょ?

言いたい用件くらい、まとめてからしゃべったら?」

辛らつな言葉で。

棘を安易にさらけ出す。

その言葉は、この塔に来たころと比べて、明らかに洗練されていた。


これだから『庶民』は困るのだ。


「その口上が出来るのなら、そろそろ刺繍のひとつでも仕上げていただけませんか。

姫としての、御自覚を」

「姫ねえ……じゃあ私が自覚しなかったとして、姫以外になれるの?」

「……」

「この場所以外に住める所なんてないのに、どこにいけるっていうのかしら?

私が、何になれるっていうのかしら」

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