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「ヒロイ」
呼び捨てられた名前に、家庭教師兼側近は、そ知らぬふりをして本を読んでいる。
「ヒロイヒロイヒロイヒロイ!」
呪文のように繰り返す。
名前を繰り返す事でさえ、この姫にかかっては遊戯へと変わってしまう。
溜息とともに、流れるような優雅な動作で、ヒロイは姫の方を向き、
姫はヒロイの目を見つめる。
「姫様」
「何?」
「『ヒロイ』ではなく、『ヒロイ殿』とお呼びください。
他の家臣や召使に笑われますよ」
ふん、と鼻を鳴らしたあと、姫はにやりと笑う。
「その呼び方では、どこの者だか分かったものではありませんわよ?
ヒロイ『殿』。
唯一無二の王様であるならともかく、この国に『姫』がいったい何人いらっしゃると思って?」
「……13人でございます。
『ルルイ』姫」
よろしい、と横柄な態度で、姫は椅子に座って頷いて見せた。




