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「なんですか、その花は」
朝ごはんまで、お姫さまはとっても気分がよかった。
あんなにいっぱいの花に囲まれた塔の中はお花畑のよう。
あんなにたくさんの種類の花に囲まれた塔の中は、野原のよう。
だのに、従者がそんなことを言ったから、お姫さまはとたんに不機嫌になる。
ぎっと従者をにらむと、従者はいつもとはちがって「うッ」と言った。
その顔がおびえているみたい。
「まほうつかいがいらしたんじゃありません?
そういえば昨日は綺麗な満月の晩でしたもの」
お姫さまはお姫さまらしく、うすい黄色の花びらをなでる。
そのなで方がやさしくて。
そっとそっとさわる、お姫様の顔がやさしくて。
だけれど従者の顔は変わらないで。
相変わらず顔をしかめてむっとする。
でもいつものその顔でさえも、可愛く思えてお姫様は笑う。
その花を、従者が取り上げてしまうまでは、だけれど。




