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53.人生通して

 何度も何度も立ち向かって、それでも越えられない壁がある。それは人との間のものだったり、スランプっていうような、次の段までなかなかに遠い、切り立った崖みたいに高い段の階段みたいなものだったりする。

 けれど、あきらめ悪さが功をなして、最後にはかならず越えられる。これはそういうものなんだと、いつも自分に言い聞かせてる。


 だって、誰でも最初はうまく行かなかったはずだから。

 同い年の女の子にピアノがプロ級の子が居たけれど、初めはあまり弾けなかったらしい。

 それでもやめないで弾き続けて、小学校の合奏でする伴奏のオーディションで、先生が歓声をあげるほどになっていた。


 僕はもともと、文章を書くことは苦手だったし、大っきらいだった。自分の意見を書くことが特に苦手で、ジャンルが何かなんて関係ないくらい、作品なんて作れたもんじゃなかった。

 才能なんてからっきし、作文で放課後居残るし、先生にも呆れられるし、学年みんなの笑い者だったよ。

 それでも、いつかぜったい見返してやろうって、それまでだったら考えられないくらいに練習した。そのおかげで、まだまだ道半ばだけれども、こうして書けるようになったんだ。


 僕は今、自分の小説に自分で絵をつけて、印税をガッポリ貰おうと、カタツムリよりもスローペースなマイペースでだけれど頑張ってる。

 たとえ夢が叶わなくたって、どこかで使えるスキルが身につくはずだから、今は突き進もうと思ってる。


 ずっとやっていきたい。そう思えるものと出会えたら、スキルアップに必要な情報を探して、往生際なんてものは忘れて、壁に体当りしちゃっても、あきらめないでやり続ける。そういうのって、とても大切なことだと思う。

 最終的に、ダメならダメで仕方ないさ。追い続けてたものをあきらめたって、死にゃあしないから別にいいんだ。そこまでがんばってきて積み上げたものは、とても貴重なものだから。


「人生通してやっていきたいと思えることは、上達したいと思うかぎり、あきらめないで続けることが、やっぱり大切なことなんだ。仮にあきらめちゃったとしても、その経験はぜったいにムダなものじゃないからね」


 もちろん、いじめっ子に立ち向かえとか、死にたい思いで息の吸えない空間に行けなんてことは言わない。

 居ても苦しいだけのところに身を置くことをあきらめないよりも、そこから脱出する方法を探すことのが何万倍も価値のあることだから。


 自分にとって必要で、もっともっと極めたいような、人生を懸けてもいいかなって思えることだけでいい。

 それだけをあきらめないでいてほしい。


 そのためには、死ぬワケにはいかないよね。だって生きてないと、あきらめないでやってみることどころか、挑戦することさえできないんだからさ。

 人間、命あるかぎり、どんなことだってできるんだ。苦手を克服することも、夢を叶えることも、他人を見返してやることだってね。

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