17.嘘と建前だらけ
人が話してるのを聞いて、それが心からのものだと思ったことは、あまりない。
ううん、昔は、みんな本当のことを言ってるんだと思ってた。僕がそうだから、っていう理由だけでね。
でも、テレビのニュースを見てたら、周りの人たちを観察してたら、さ。
人っていうのは、その場かぎりの嘘をついて、自分の生き易いようにして、ただヘラヘラしてるだけの生き物なんだ。
そんなことがわかってきた。
みんな、本心なんて口にしない。
みんな言うんだ、そんなことをする奴のほうが馬鹿なんだって。
建前を重ねて着飾って、嘘を並べて媚びへつらって……。
自分が有利になるように事を運ぶことしか、考えてなんかない。
世の中なんざ、嘘と建前でできている。
そんなものがまかり通って、自分のことをさらけ出そうとするほうが、本心から物事をする奴のほうが馬鹿だって言われる。
嘘を言うほうが、口先だけの建前を並べる方が、正しい生き方なんだって。
親も、先生も、他の大人も、僕らにそう教えてくる。
みんなはそれに順応するのに、僕にだけそれができないのがもどかしい。
どうやっても、自分の意見は捨てられない。
だから、余計に嫌になる。
「嘘嘘嘘嘘! 建前建前建前建前! 世の中、嘘と建前だらけじゃないか! こんな、自分の思うこともまともにできないような世の中、生きてていったい、何が楽しいのさ!!」
聞くのも、並べるのも、はっきり言って、疲れる。
やっぱり、僕には、合わない世界だ。
嘘も建前も、並べたくも、聞きたくもない。
けれど、なければ生きてなんて、いけない。
あーあ、イヤだなぁ。
そう思う、今日この頃。