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昭和怪談その壱<前世>  作者: 仙堂ルリコ
1/8

訪問者

堀川厚志君が肺炎で学校を休んでいるのは兄から聞いて知っていた。


母も、もちろん知っていた。

だが、夜半に

厚志君のお爺さんが、県会議員で堀川一族と名乗る紳士と、

我が家に尋ねてくる理由は、見当もつかなかった。


「奥さん、勝也君のお母さん、家に、来て欲しいんです」


勝也とは私の兄だ。

兄と私が通っていた中学は四クラス、一学年130人程で、

兄は厚志君を知ってはいた。


でも、クラブも違い、共通点と言えば家が近い、という位だ。


特に親しい間柄では無かったはずだ。

厚志君の家は、元庄屋の豪邸で、うちは文化住宅。


父親の職業は市会議員と鉄工所の工員という差だった。

厚志君はお坊ちゃんというだけでなく、優秀で美形だった。


兄は、勉強はよく出来たが、地味で目立たないタイプだった。


母は驚きすぎて

「いや、何ですの?」

とか細い声で呟くのがやっとだった。


「とにかく来て下さい。来てくれたらわかります」

県会議員が頭を下げた。


村の公民館の前に貼ってあった選挙のポスターと同じ笑顔だ。


酔っ払った父が

「なんや、いったい?」

ろれつの回らぬ口で玄関に出て行った。

が、恰幅の良い、一目で裕福と分かる二人の男に

「ご主人、奥さんにちょっと助けてほしいんですわ」

と低姿勢で言われたものだから、

うろたえている母に

「早く用意せんかあ」

と怒ったように言った。


思いがけない村の権力者の訪問を悪い事だとは思わなかったのだろう。


母はその夜、戻らなかった。


翌日は日曜で学校は休み。

父も工場が休みで、は朝からぶつぶつ言ってテレビ相手に酒を飲んでいた。

私と兄も母が居ないので朝起こされることも無かった。

昼まで寝て、午後に父と三人でチキンラーメンを食べた。


母が帰ってきたのは夜だった。

大きな風呂敷包みを抱えていた。




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