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漂流日記

作者: タロ

 日記を書いた。

 もしかしたら遺書なのかもしれない。

 嫌な事がいっぱいの毎日を綴ったこれは、読む人が読めば、遺書になるかもしれない。

 だけど、僕は、これを日記だと言いたい。

 何故なら、僕は死なないからだ。

 死ぬのは、怖い。

 死にたいとは思うけど、死ねない。

 この世との別れなら日記にも書いた。でも、いざ「さよなら」しようとすると、怖くてできなくなる。

 僕は、生きている。

 生きなきゃならない。

 だけど、日記にお別れを書いてしまった。

 だから、僕はお別れをしよう。

 この日記と。



 家から少し離れた河川敷に来た。

 ここからなら、海もそう遠くない。

 たくさんのキャンディーが入っていたビンに、日記の本を丸めて入れた。

 これからの旅路で濡れてしまわないように、しっかりとコルクの栓をする。

「さよなら」

 僕は、日記に別れを告げた。

 そして、日記の入ったビンを、川に流した。



 初めて日記と「さよなら」してから、何年か経った。

 あれから僕は、死にたくなるような事があると、日記に愚痴として書いた。そして、僕の想いを載せた日記に「さよなら」と別れを告げて、川へ流す。

 そうすることで少しだけ気持ちが楽になるから。



 川で「さよなら」した日記は、海へと流れる。

 そして、広い海を漂流する。

 波に揺られているうちに、辛い気持ちが洗い流されるといいな。

 そう思っていた。

 僕の知らないところで、僕を癒してくれ。

 そう思っていた。

 だけど、どうやらそうはならなかったらしい。



 それを知ったのは、ケータイでニュースやコラムを読んでいた時だ。

『漂流日記』

 そのタイトルを目にした時、僕は、まさか、と思った。

 まさか、僕の日記じゃないよな。

 そんなはずはない、ありえない、そう思いながら、その記事を読んだ。

 でも、そんなはずがあったらしい。

『漂流する日記が、全国各地で目撃されている。それは、キャンディーなどが入れられていたようなビンに入った日記帳で、最初の数ページに辛い気持ちが綴られていて、あとは「さよなら」とこの世への別れが書かれている』

 冒頭の部分を読んだ時、僕は恥ずかしさに襲われた。

 あれを誰かに読まれたかと思うと、恥ずかしくて死にそうになる。

 だけど、死ななかった。

 だから、もしかしたら最後まで読めば死ぬかもしれないと自棄になりながら、怖いもの見たさでページをスクロールした。

『その日記は、本来ならば海を漂流し、そのまま誰にも見付かることはなかっただろう。しかし、それは見付かった。見付けたのは、入水自殺しようとしていた人だ。その人は、川に入ろうとした時に流れてきたビンを見付けたそうだ。そして、そのビンに入っていた日記を読み、自殺することをやめた。「この世には、自分と同じように苦しんでいる人がいる。自分だけが死に逃げるのは、やめよう。その代わり、自分の想いもこれに載せて、どこかへ流してしまおう」そうすることで自らの気持ちを救った。これと同様のケースが、全国各地で起きている』

 本当に?

 全国各地で僕の恥ずかしい日記が見られている?

 あんなことしなければよかった、と強い後悔が湧いてきた。

 だけど、その後悔を上回る気持ちもあった。

 僕の日記が、誰かが自殺するのを止めた?

 それが、なんだか むず痒かったが、嬉しかった。

 ほんの少しだけ誇らしかった。



 ある日、僕は日記を流そうと河川敷に来た。

 そこで、あるものを拾った。

 ビンだ。

 日記帳が入ったビンだ。

 まさかとは思ったが、そのまさかだった。

 それは、僕が流したビンだった。

 でも、拾ったビンのコルク栓を抜き、本を取り出した時、それは僕が流した時のままではなかったことを知る。

 あの時よりも、使い古されている形跡がある。

 まさか、これが『誰かの想いも載せた日記帳』か?

 日記帳を開いた時、そのまさかが事実だと、僕は知る。

 一ページ目は、僕の汚い字で書かれた愚痴だった。

 そして、その次からは、誰かの知らない字が、その人の辛い気持ちを語っていた。

 その次も。

 またその次も。

 ページをめくっていると、僕は涙が零れてきた。

 最初の僕が書いたページの最後には、「さよなら」と書かれている。

 だけど、その次からは最後を「がんばれ」という言葉で締めくくっていた。

「がんばれ」

「がんばれ」

 自分も苦しい。

 耐えられない気持ちを、ここに書く。

 そして、その想いに「さよなら」と別れを告げる。

 だけど、もしもどこかで、自分のように逃げ出したい想いを抱え、偶然にもこれを拾った人がいるなら、伝えたい。

「がんばれ」



 僕は、泣いた。

 涙が次から次へと溢れてきた。

 僕が誰かを救ったと思っていたけど、それは勘違いだった。

 僕が、この日記に救われた。

 僕は、拾った日記帳に現在抱えている辛い想いを綴った。

 そして、最後に「がんばれ」と書いて、川に流した。

「さよなら。がんばれ。大丈夫、がんばれ」


辛い時は「つらい」と言った方がいい、ほんとに。

「がんばれ」という言葉も、たまには悪くない。


なんとなく書きたいことはあって、それがうまく表現できなくて、こんな形になってしまった。みたいな作品なのではないかなと思います。

うまく表現できなくてすみません。

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