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私と彼との宇宙通信  作者: 桜花蓮華
突然現れた少年が私の頭から離れない
3/5

「ねぇ」

「それじゃあ。さようなら」

 放課後になり、声をかけてきた古田君を無視して私は一目散に部活へ向かう。なんだかつけられている気配がするのでわざとあっちこっちと大回りをした。そしてやっと着いた部室へ入る。

「失礼しま――ちょ、ちょっとなんで!?」

 私は驚いた。

「あ、明日菜ちゃんやっほー」

「やぁ」

「なっ、何であんたがここにいるのよ!?」

 古田くんが帯広おびひろ先輩と一緒にお菓子をつまんでいた。

「俺、宇宙通信部に入ったんだよ」

「いつの間に……」

「昼休みにさ」

「明日菜ちゃん、もう転入生と仲良しなの?」

「ち、ちがいま――」

「えぇ。俺達付き合うんです」

 私の言葉を古田君が遮る。

「えええっ!? ゲテモノ好きの明日菜ちゃんが? このイケメンと?」

 驚く帯広先輩。

「付き合いません!」

 私はそう叫ぶと頭を抱えた。こいつは本当になんてやつなんだ。


「どうしたんですか?」

「にぎやかっすね」

 気が付くとぞろぞろと、部員が集まってきている。それと同時に奥から部長が現れた。今日は頭にミニチュアスカイツリーを乗せている。どうやらすこぶる機嫌がいいみたいだ。

「全員そろったな! とりあえず座りたまえ!」

 その言葉にみんなは大きな丸テーブルを囲むように座りはじめた、仕方なく私は古田君から一番遠い場所に座る。

「なんと我が部に新入部員がやってきた! 古田君だ! それじゃあ自己紹介をしよう! 私が部長の大熊おおくま太郎たろうだ!」

「副部長の海花かいばな陽子ようこです。部長は何もしないから困ったことがあったら私に言って」

 海花先輩は大熊部長をにらみ付けながらそう言った。実際、海花先輩が色々やってくれてるおかげで廃部寸前の宇宙通信部はなんとか活動している。そのせいか部長は副部長に頭が上がらないみたいだ。

「私ぃ。帯広佳代(かよ)。陽子のマブダチ。よろしくぅ」

「マブダチじゃないから」

「ああん。陽子冷たい~」

 自他共に認める鬼ギャルの帯広先輩と真面目で優等生の海花先輩。海花先輩はそう言うけど仲いいんだよね。この二人のやり取りを見てなんとなく昨日の真珠とさつきを思いだした。

「俺! 小俣おまた元気げんき! 名前の通り元気だけがとりえなんだ!」

「だから自分でそう言うんじゃないっていってるでしょ。あ、私はこし今日子きょうこ。よろしくね」

尾崎おざきれんです。同じ一年生なんで仲良くしような」

本郷ほんごう恵美めぐみ……」

「え? 本郷さんそれだけ?」

「はい」

 帯広先輩に言われても動じない恵美ちゃん。別の意味で尊敬しちゃうな。

 おっと、次は自分か。私は立ち上がる。

「寺谷明日菜です。よろしく」

 適当にそう言うと私は座った。続いて古田君が立つ。

「今日転入してきました。古田冥です。よろしくおねがいします」

 彼は深々と頭を下げた。

「先ほども説明したが、我々は宇宙人、地球外生命体とコミュニケーションをとる事を目的にしている」

「とは言ってるけど、基本的にお菓子食べながらだべってるだけだけどね」

「それは帯広君だけだろう! 我々はさまざまな研究をだな!」


「あ~あ。またはじまった」

 蓮君は呆れながら言う。

「なぁ今日子、ノート写させてよ」

「嫌よ!」

「え、あの」

 みんながそれぞれの事をし始め戸惑う古田君。

「あ~。いいのよいつものことだから。じゃあ大熊君の話の続きをするわね。宇宙人とコミュニケーションをとるために、大熊君は人工衛星を飛ばそうとしているの」

 海花先輩はそう言った。

「じ、人工衛星!?」

 古田君は初めて話を聞いた私達と同じリアクションをとる。

「彼曰く、これが宇宙人と交信する可能性が一番高い方法らしいわ。あれがその人工衛星なんだけど……」

 部室の隅にあるガラクタを海花先輩は指差す。

「ちょっと近くで見てもいいですか?」

「えぇ」

 古田君は興味深そうに人工衛星に近づき、まじまじと見つめる。

「この人工衛星が飛ばない限り、私たちはする事がないのよ」

「なるほど。しかし――これはなかなか――」

 人工衛星を見つめながら古田君は感心しきりだった。私はそんな様子を横目にぬいぐるみを作る道具を鞄から取り出した。


 ――と、そんなこんなしていると下校の時間になった。

「じゃ、お疲れっした~!」

「元気! 廊下は走らない!」

「あ、バイトに遅刻しちゃう!」

 さっきまで言い争っていた帯広先輩はそういうとさっさと帰っていく。

「ねぇ、一緒に――」

「ではさようならっ!」

 声をかけてきた古田君を無視して私は急いで学校を後にした。



 ――翌朝。



 学校へ向かう道。リコーダーを吹き鳴らしながら歩く人、くるくる回りながら歩く人、勝手に人相占いをして怒られている人、などなど。いつもと何も変わらない登校風景だ。

「明日菜っ!」

 後ろから声をかけられて思わず振り返る……しまった!

「おはよっ!」

 声をかけてきたのは古田君だった。真っ黒い日傘をさしながら満面の笑みを浮かべていた。

「おはようございます。それじゃ」

 私はとりあえず返事をすると一目散へ学校へと向かう。そして教室に入って気が付く。遅かれ早かれ彼が隣に座る事に……。



「明日菜っ! 一緒に理科室行こうぜ!」

「いやです!」


「ねぇ! 学食行く?」

「私お弁当あるから大丈夫です」


「明日菜何処行くの?」

「…………」



 なんで何日も無視してるのに古田君はめげないの……?

 私が何処にいても何処からともなく現れる。そんな様子を見ているクラスのみんなにも茶化されるし。こうなったら何が何でも逃げ切ってやるんだから!

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