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私と彼との宇宙通信  作者: 桜花蓮華
突然現れた少年が私の頭から離れない
2/5

「ただいまっ!」

 私は息を切らせ、玄関を開ける。

「どうしたの明日菜大丈夫?」

 尋常じゃない様子にお母さんが血相を変えて飛んできた。

「う、うん。」

「遅かったじゃない。まさかっ!?」

 お母さんの顔色がみるみる青ざめる。

「そんなんじゃないよ。大丈夫」

 私は気丈にそう振舞った。心配性なお母さんにこれ以上心配かけられないもん。

「お姉ちゃん? まさか男ができたんじゃ?」

 お母さんの後ろから明日香あすかがにゅっと顔を出す。

「ちっ、違うわよ。麻実達とお茶してたの。ちょっと話に夢中になっちゃってね。ダッシュで帰ってきただけ」

「そう。よかった」

 明日香はクククと笑う。

「お姉ちゃんは宇宙の王に選ばれた大事な人間なんだから。男なんかつくっちゃダメよ」

 そして部屋へと戻って行った。

「明日香ってばどうしてああなっちゃったのかしら?」

 お母さんはため息混じりに言う。

「しょうがないよ。中学二年生になるとあぁなっちゃう病気があるらしいし。何だっけチュウニビョウ?」

 発症したのは半年前だからチュウイチビョウか? 

「チュウニビョウねぇ。一回お医者様に見てもらったほうがいいのかしら」

 お母さんはそう呟きながら深くため息をつく。

「大丈夫、そのうち直るよ。たぶん。じゃ、着替えてくるね」

 私はそう言って自室へ向かった。



「俺と付き合ってくれ」

 夕食とお風呂をすませ、自室のベッドでごろごろとしていると、さっきの場面が蘇った。何度か言われたことのある台詞。なのに。

「何で顔が赤くなるの~!?」

 今までこんな風になった事なんてなかったのに、なんで? ぜんぜんタイプじゃないイケメンに言われたのに!

「もううううっ! なんなのよおぉ」

 夕日に照らされた少年の横顔が離れない。いやに白い肌。黒い髪に映える白い肌。すらっとした長身の彼。顔もカッコよかった。ただそれだけなのに。

「そ、そうか。あれだ。つり橋効果だ!」

 あの時おじさんに襲われそうになって恐怖で鼓動が早くなっていた。そのドキドキを恋と勘違いしてしまたんだ。

「そうだよね~。私があんなイケメンなんかに恋するわけないもんね~」

 タコ型とグレイ型のぬいぐるみをぎゅっと抱き寄せる。

「そろそろ新しいの作ろうかなぁ。お前達ももっと仲間が欲しいよね。どんなのがいいかな」

 私は頭の中で次の仲間の形を考えはじめた。


「俺と付き合ってくれ」


「ってなんであんたがでてくるのよおおおっ!」

 私は思わず叫んだ。

「お姉ちゃんどうしたの? 王と交信してるの?」

 明日香が勝手にドアを開け、顔をのぞかせる。

「わわっ、ノックぐらいしなさいっていつも言ってるじゃない!」

「したわよ」

「そ、それで何の用?」

「お姉ちゃんうるさい。宿題がはかどらないわ」

「ごめん」

「そうだ。王によろしくね」

「だから王って誰よ」

 明日香は人の話を聞きもせず、ドアを閉める。


「宇宙の王に選ばれたねぇ……」

 グレイに助けられた話を最近信じはじめた明日香。それから私を宇宙の王に選ばれた人間と思ってる。思ってるのか設定なのか。そもそも王が何処から出てきたのか。私はただ宇宙人と仲良くなりたいだけなんだけどなぁ。

「まあいいや。もう寝よ。なんか疲れた」

 いつもより少し早いけどもう寝よう。いろんな事がありすぎて疲れたし。起きてても変な事考えちゃうだけだし。

 私は明日の支度を済ませると電気を消し、ベッドへともぐりこんだ。



――数日後。



「おはよう。突然だが今日は転入生を紹介する」

「転入生?」

「こんな時期に?」

 先生の言葉に教室がざわめきだす。確かにこんな時期に転入だなんてなんか怪しい。

「静かに。おい、入ってきなさい」

 教室が静かになる。すると、ドアがゆっくり開き、一人の少年が入ってきた。あれ? この人!?

古田ふるためいと言います。よろしくお願いします」

 白い肌の彼。この前のあの少年だ!

「古田は海外に住んでいたんだが親の仕事の都合で引っ越してきたんだ。みんな仲良くしてやってくれ」

「言葉は大丈夫ですが、こちらの習慣などにはまだ自信がないので色々教えてください」

 古田君は深々と頭を下げた。


「ねぇねぇ。超イケメンじゃん!」

「しかも帰国子女でしょ。彼女いるのかな?」

「いないでしょ。海外の遠距離なんて無理だもん」

 周りの女子達がはしゃぎはじめる。やっぱイケメンだよな。うん。


「さて、古田の席だが――おい? どうした?」

 すると突然、古田君がつかつかと歩きはじめる。嫌な予感がする! 私は身を小さくして教科書を立ててその影に隠れる。

「やぁ。また会ったね」

 彼は私の教科書を奪うとそう言った。やっぱり見つかったか。

「なんだ? 寺谷と知り合いか?」

「ちっ、違います! いや、知らないような知ってるようなその……」

 私思わず立ち上がる。一度会ったから知らないわけじゃないけど別にそういうわけじゃ。

「そうかそうか。じゃあ古田は寺谷の隣な」

 なにこの漫画みたいな展先生、なにがそうかそうかなんですか。もう何も言えず私は席に座った。


「寺谷明日菜っていうんだ。いい名前だね」

 彼は私の隣に座ると突然そう言った。

「は、はぁ」

「俺と付き合ってくれる?」

「助けてくれた事は感謝してます。でも付き合うとかは……」

「そんな。それじゃ困るよ」

 なんなんだこいつは。何が困るだ。困ってるのはこっちだ。話にならない。こういう人とはかかわらない方がいい。とりあえず無視しよう。


 古田君は休み時間など私に接触しようとしてきたが女の子達に囲まれてしまいどうやら逃げられないようだった。私にしちゃ願ったり叶ったりだ。とりあえず数日、無視すれば諦めるだろう。

 それにしても何で私なんかにしつこく付きまとうのだろうか?

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